「外断熱」が危ない!
(野辺公一さんによる書評)


    断熱工法の新しい段階を示唆
野辺 公一さん
人の本は紹介しずらい。
一読を薦めたいが、買え、読め、と臆面もなく言うのも恥ずかしい(と言いながらもう言っているが)。
偶然、この本が欲しいという知人と三省堂某支店に出掛けた。エクスナレッジのこのシリーズ、他の本は平積みになっているのに西方本だけがない。爆発的に売れ切れてしまっているのか?
そこで、気付いた。あぁ、『「いい家」が欲しい。』は三省堂で出しているんだ。
そうやって書架を眺めると、バーンと一番目立つ場所に松井本とそのビデオが大きな面積を占めていた。
西方本は、帯に〔『「いい家」が欲しい。』で本当に「いい家」が建つのか!?〕とある。帯にこんなことが書いてあるのだから、三省堂としても取り扱いに困っているのかな、などと穿ってしまった。

れはともかく、西方は、我慢強く松井本の底の浅い断熱工法議論に付き合って、一つ一つ訂正と提起を、彼の好きな高木仁三郎風に「市民の科学」という視点から、根拠のない議論を腑分けし、断熱住宅が本当に求めていることは何か、ということを丁寧に解説している。
私などが、たまに住まい手相手に住宅の話をしても、質問として必ず「外断熱のメリットは?」などと聞いてくる時代なのだから、この本の出現は遅かったぐらいだ。
これからは、その手の質問に対しては「西方本を読んで下さい」で済むことになる。

熱性能が求めているのは工法ではなく、結果としての住まい心地なのだから、手法はコスト、プラン、敷地条件によって柔軟に対応するのが望ましいのは当然で、この断熱工法以外は全て×、などということはあり得ないというのは当然だろう。
松井修三の「いい家が欲しい」ホームページの談話室を閲覧すると、なんとも神がかり的な断熱議論が繰り返されている。
なぜ、これほどマニアックになれるのか不思議だが、今やそこが顧客獲得上の生命線ということになれば、熱くなればなるほど、ついてくる客もいるのだろう。

は、もともと断定的正義の味方というのを怪しむタイプの人間だから、西方には松井本の反対側から正義の味方面はして欲しくないな、と思いながら読んだが、それは杞憂というものであった。
正面から堂々と断熱工法を新しい段階へと辿り着かせるべく、その論述がなされていて、単なる批判本などとは思わないでいただきたい。
しかし、正義の味方風を装うことも一つの商売の姿勢としては大切で、それができないから、私も西方も・・・・。

もあれ、西方の結論は明快であり、内外断熱議論のインチキと不毛を語り、本質的に住宅にそして社会に必要とされる家づくりの仕組みの一つとして断熱工法を位置づけ、どのような方法があるのか、といったことをとても明快に語っている。
単なる、内外断熱議論を脱して、俯瞰的に高断熱・高気密住宅の未来像を提起できたのは西方の実践に裏付けされている。
私も、新たに蒙を啓かしてもらった。

かし、と私は思う。西方の行っている建築的営為は、たかだか断熱工法啓蒙者という役割で済むものではない。
彼は、日本でも希有に属する、地域生産ネットワークを組み上げ、設計者、工務店、地場部品メーカーというトライアングルの中で、家づくりを支えつづけており、むしろ、その部分の実践的な住宅論こそが私には待ち望まれる。
多くの住まい手に対しても、地域の工務店に対しても、多様な家づくりの方法を啓蒙する上で、極めて示唆に富むと確信しているのだが、どうだろうか。


SAREX NEWS.web 住環境価値向上事業協同組合通信(VOL.43/January/2003)より

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