1.バーク(秋田杉樹皮繊維断熱材
  スギ樹皮混入軽量木質軟質繊維断熱材
1-1. どんな材料か(エピソード)

 人体や環境に負荷が少ない低価格な自然系断熱材が望まれているが、輸入されたものが殆どであり価格がまだまだ高く普及が極めて少ない。エコロジー・バウビオロギー建築の普及が進んでいるドイツやスイスでは、軽量軟質木質繊維、亜麻繊維、大麻繊維などの各種の自然系断熱材を見ることができる。
これらの断熱材の輸入は容積がかさばりコンテナ運賃代の比率が高い。現地で1コンテナが40万円、運賃が40万円、関税・在庫・流通を通ると現地価格の3倍から5倍に膨らむ。容積当たりの価格が低い物は輸入すると運賃負けしてしまう。他の輸入建材は安いが、断熱材に限っては逆である。

 高断熱・高気密の住宅では約50m3/戸の自然系繊維断熱材を使用するので普及すると膨大な量になる。国民の約3割りの人がなんらかのアレルギーなことから、自然系繊維断熱材の普及が進み、新築住宅の3割がを使用するとなると、膨大な量になる。生産時、環境に負荷が少ない畑作の亜麻繊維、大麻繊維などで、この量を満足するには、北海道の全面積の3割ほどの耕作地が必要になる。これは現実的ではない。羊毛なども牧草地を確保するのに森林破壊・環境破壊になる。
これらに対し、軽量木質軟質繊維断熱材は端材、古材、廃材、製材や集成材に適さないパルプ材などを多く使用することが有利になってくる。森林資源は長期的展望にたつと循環資源である。

 国内生産ができればと考え、’98年に能代市内の秋田県立大学附属木材高度加工研究所に、軽量木質軟質繊維断熱材の製造が可能かどうか、可能であれば何処が生産できるのかを相談した。研究所では秋田杉の繊維を堅く固める樹皮ボードの開発中であり、断熱材にするには、堅く固める技術の逆の如何に比重を少なくするかの技術開発であるという。生産は能代のハードボード工場ができるのではということで、試作を頼んでみた。’00に秋田県中小企業団体中央会の中小企業調査開発支援事業の補助金を得、軽量木質軟質繊維断熱材とそれらを使用した断熱・気密パネルシステムの開発にかかった。

€原材料
-a 材種
能代にあるハードボード工場なので周辺製材工場の端材、建築廃材、輸入パルプ材などであり、材種は杉、シベリア材、北米材、北欧材と様々である。これらの繊維に、周辺の製材工場で廃棄処理に困っている秋田杉樹皮が混入されている。
-b 材質
繊維が長い木材が適している。

 製法
-a 全体のプロセス
-b 各工程のポイント
-c その他(接着材の種類、安全性など)

¡形状・見た目
-a 形状・モジュール
大判を切断するので形状は融通性があるが、建築材として、3尺モジュールかmモジュールである。厚さは25mmが基本で、コーンスターチ(澱粉糊)で張り合わせるので、50mm、75mm、100mmが標準になる。
-b 色
木繊維のみのは薄茶色、杉樹皮混入が50%程度のものは茶色である。
-c におい 無臭である。

¤性能はどのくらいか
-a 熱性能
熱伝導率が0.040w/(m・k)で、グラスウール16kと高性能グラスウール16kの中間の断熱性能をもっている。比重が160でグラスウールの約10倍の重量のことから、熱容量が約2000ジュール/(kgーK)で断熱性だけではなく蓄熱層の役割も同時に果す。熱容量が大きいことは熱伝導時間が長く、温度振幅が抑制され、室温の安定をもたらす。
-b 吸放湿性
吸放湿性に富み、保湿性は30kg/m3と高く、内部結露や構造木材の乾燥に有利である。
-c その他
吸音でけでなく、重い分遮音効果がある。

¦コストはどのくらいか
50mm厚で約1,200円/m2、100mm厚で約2,400円である。
«ホルムアルデヒド対策
接着剤を使用せずに、過熱加圧して25mm厚のボードをつくり、厚さが50mm、100mmであればコーンスターチ(澱粉糊)で張り合わせるので、ホルムアルデヒドは使用されていないく、E0グレードに適合する。
杉樹皮はホルムアルデヒドの吸着量が多く、その後の再放出量が少なく、樹皮に固定される。アンモニアガスやメルカプタンなどのような悪臭ガスも吸着する。他の材料と比べると、乾燥重量あたりの杉樹皮のホルムアルデヒドの吸着性能は、黒炭の5.88倍、活性炭の1.95倍と吸着性能が優れている。乾燥重量あたりのホルムアルデヒドの48時間後の吸着量は1.986mg/l/g,吸着した後の24時間後の再放出量が0.139mg/l/gである。

­シロアリ対策
杉樹皮は木部に比べてシロアリや不朽菌の影響を受けにくい。

®施工方法と施工性
軽量木質軟質繊維断熱材は板状であり、現場施工で間柱間に切り揃える充填断熱工法には施工手間がかかり不利に考えられる。良さを引き出すには、外張断熱工法、充填パネル工法、充填パネル+付加断熱工法である。


1-2.どう使えばいいか(断熱計画)
€全体の断熱計画の考え方 コスト性などを念頭において
-a どの程度の性能を目指すか
関東以西では外張断熱工法、次世代基準では˘地域以西では充填パネル工法、Ą地域は充填パネル+付加断熱工法が適している。また、暖かさ・涼しさ・省エネルギーとコストバランスを考えると、Ł地域以西では、従来の一般型省エネルギーと次世代基準の中間の壁・屋根が厚さ100mmのパネル工法が適している。

-b ボードと吹き込みをどう使い分けるか
屋根断熱工法で小屋裏空間を室内として利用するのはパネル工法だが、水平な天井である場合は桁上断熱工法のセルロースファイバー吹き込み工法が全体的にはコストダウンがはかれる。セルロースファイバーを厚めに300mm吹き込み断熱性能をここで稼ぐのも得策である。吹き込みに適した粒状の軽量木質軟質繊維断熱材を現在開発中である。

-c 付加断熱をするのか否か
ヨーロッパ並みの二酸化炭素放出削減レベル(日本では次世代基準の次の基準か)を望むのであれば、˘地域以西でも充填パネル+付加断熱工法である。

-d 防湿層は外せるか否か
軽量木質軟質繊維断熱材を含めた自然系断熱材は北欧、ドイツ、スイスなどでは防湿層が無く使用されているが、日本の実際の高断熱・高気密住宅に省略され、結露な無いことが実証されている例をまだ知らない。室蘭工業大学鎌田研究室の実験では、軽量木質軟質繊維断熱材と同様なセルロースファイバーは防湿層が無くても結露していない。秋田県立大学附属木材高度加工研究所の実験でもスギ軽量木繊維断熱材は防湿層が無くても内部・表面結露がしていない結果がでている。しかし、防湿層は無くても気密層は必要である。

 部位別の考え方
-a 基礎(床)
基礎は施工の簡易性・気密性能・蓄熱性能に優れた基礎断熱を採用する。その場合の断熱材は最近一般製品化されてきた、ノンフロン、燃焼時に有毒ガス無発生のフェノールフォームが適している。床断熱の場合は軽量木質軟質繊維断熱材がパネル化された方が施工が簡易である。
-b 壁
関東以西では外張断熱工法、次世代基準では˘地域以西では充填パネル工法、Ą地域は充填パネル+付加断熱工法が適している。
-c 天井
次世代基準の屋根断熱工法では地域˘以西では厚さが150mmから200mmになりコストがかさむが、吹き込み桁上断熱工法でコストダウンをはかる。