3.温熱環境の断熱材の選択のポイント

3-1.「表示・評価制度」と「建材」の関連
概要 
a.熱環境の表示・評価制度
「温熱環境に関すること」の性能表示は、住宅の断熱化などによる省エネルギーの程度の評価である。表示方法は等級(4、3、2、1)で表示する。
評価方法は以下のイ〜ハのの3つの基準により評価する。
イ.断熱構造とする部分の基準
ロ.躯体の断熱性の基準
ハ.開口部の断熱性の基準
「温熱環境に関すること」の評価方法には、計算による方法と断熱材の種類や納まりなどの仕様による方法がある。
手っ取り早い方法は断熱材の種類や納まりなどの仕様による方法であり、各部位の各種断熱材の厚さや、開口部の性能の一覧表から使用建材を選択する。しかしこの場合、独自の工夫された工法に融通性がないのと、屋根断熱の外張断熱工法及び充填断熱工法では、断熱材の厚さ寸法と支持部材や垂木の断面寸法とのミスマッチが不合理である。この問題を解決するには、断熱材と共に開口部や換気などを総合的に把握した、バランス良い熱損失係数や年間暖冷房負荷計算を個別にする。型式認定を受けるのも手である。
各地域の熱損失係数は以下の基準値である。
  l 地域・・・1.6W/m2h℃
  ll 地域・・・1.9W/m2h℃
 lll 地域・・・2.4W/m2h℃
  lV 地域・・・2.7W/m2h℃
  V 地域・・・3.7W/m2h℃

b.等級の選択
各等級の水準は以下の項目を目安にする。
 等級4・・・次世代省エネルギー基準程度
 等級3・・・新省エネルギー基準程度
 等級2・・・旧省エネルギー基準程度
 等級1・・・等級2に満たないもの

高断熱・高気密住宅が普及している寒冷地の現状は、次世代省エネルギー基準に準じた程度であろう。もちろん、まだまだ意識の低い住み手と造り手は新省エネルギー基準程度に甘んじている。新省エネルギー基準程度では、結露防止、暖かく温度差が少ない温熱環境までは至らないので次世代省エネルギー基準程度まではもっていきたい。
次世代省エネルギー基準程度は何も寒冷地ばかりでなく、他の地域でも必要である。今後は、省エネや良好な温熱環境ばかりでなく、二酸化炭素削減などの環境問題の解決が望まれているからだ。その先にドイツ圏や北欧などのはさらに厳しい基準が待っている。等級3以下は現状の住宅の性能の同様もしくは以下であり、性能表示・評価の対象を考えるには、等級4の次世代省エネルギー基準程度でなければ意味合いがもてない。

イ.断熱構造とする部分の基準
建材の選択と関連がうすいので省略する。

ロ.躯体の断熱性の基準
 ロ-1.断熱材の種類・厚さの基準との選択のポイント 
断熱材は開口部材と違って選択の幅が広く選択しにくい。開口部材は性能と価格で選択できるが、断熱材は同じ性能であっても30以上の種類、厚さ、数多い部位別の工法の組み合わせ、エコロジー度合い、価格など複雑にからみあっている。これらの科学的根拠の他に、マスメディア利用やフランチャイズの発泡系外断熱工法のイメージづくりのうまさが、選択時に大きな影響をもたらしている。

・地域区分と等級の選択 
前述したような理由から、ここでは、等級4(次世代省エネルギー基準程度)に絞って述べる。地域区分はĄ地域からŠ地域まである。大まかにいうと、Ą地域は北海道。˘地域は北東北3県。Ł地域は南東北3県と栃木県・新潟県・長野。Ś地域は宮崎県・鹿児島。Š地域は沖縄県。その他がŚ地域であり、日本のおおよそを占めている。北は富山県・群馬県、南は熊本県・大分県と寒暖の差が大きく一つの地域とは考えにくいが、期間暖冷房負荷からはほぼ同一地域である。

・断熱材の性能は厚さ
同一の断熱材の性能は厚さで決まる。断熱材の厚さの早見表では、Ł・Ľ・Śの3地域は同一である。等級4は北関東以北では驚くことではないが、南関東以西では断熱材の厚さに驚くだろう。外張断熱工法の屋根叉は天井は、硬質ウレタンホームや押出法ポリスチレンフォーム3種などの断熱材区分Eであっても115mmと厚く、工法的なメリットが出ず不利である。
しかし前述したように、断熱材と共に開口部や換気などを総合的に把握した、バランス良い熱損失係数や年間暖冷房負荷計算を個別にすると、厚さが50mmで済む。当然ながら、フランチャイズなどは型式認定を受け、経済的断熱材の厚さや工法をとっている。ところが実際は、夏期の日射の輻射熱や冬期の室内微気流発生などから早見表程度の厚さは欲しい。
早見表は物足らなく計算は面倒くさいと思われる方は、各断熱材のメーカー表示の実際の熱伝導率、各部位の「必要な抵抗値」、「熱抵抗の値を得るための断熱材の厚さ」の表をもちいると、早見表よりは精度が良く実体の性能にそう。

・各種断熱材と工法 
断熱材を選ぶのに、これまでは施工の難易度と精度、性能と価格のバランスを考慮すれば良かった。しかし、これからは人体と地球環境に負荷が少ないことを考慮に入れなければならない。人体と地球環境に負荷が少ないことは建築だけではなく、衣食住全体で急がれている問題であるが、建築や住宅の領域ではまだまだ試行錯誤であって実績が少ない。断熱材も他の建材と同様に、価格、生産量など問題に突き当たっている。

  a.現状の断熱材
現状ではグラスウールの使用率が圧倒的に多く、60から80%をしめるが、この十数年はフランチャイズの波に乗って石油からつくられるプラスチック系の押出法ポリスチレフォームや硬質ウレタンフォームの使用がのびてきている。プラスチック系断熱材がのびてきたの は、宣伝力があること、見てくれが良いこと、カタログ性能数値が良いこと、後発でグラスウールのイメージを悪く言えることがあげられる。
寒冷で、断熱材の経験が長く使用量の多い北欧や北米では、断熱材のほとんどがグラスウールとロックウールの鉱物繊維断熱材であり、プラスチック系の断熱材はイレギュラーである。エコロジー、バウビオロギーの先進地ドイツでも主流はまだまだグラスウールであり、それに次ぐものが石油製品の発泡系断熱材である。自然系の断熱材の生産や流通はまだまだ少なく、これからである。
これからは、生産エネルギー、フロン使用、廃棄時処理などの環境への負荷の大きさや、環境ホルモン・化学物質過敏症の問題や火災や廃棄処分の燃焼時による人体へ負荷の大きさから、価格が比較的高い押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォームなどの石油製品の断熱材は自然素材断熱材に置き換わっていくであろう。
  
  b.普及し始めた自然系断熱材 (人体と環境に低負荷)
一般的な建築材料は「地球環境や人体に負荷がある化学物質の建築材料」と「地球環境や人体に負荷が少ない建築材料」とに分けられる。断熱材に関しても、施工の難易度と精度、性能と価格ばかりでなく、生産エネルギー、消費量と生産量のバランス、物流の生産国からの遠近、リサイクル、燃焼、廃棄、発ガン性、住まい手の体質などのエコロジー、バウビオロギーの問題や価格などの総合的な判断が必要である。それぞれの住まい手が体質や予算を考え、化学物質過敏症・環境ホルモンやアレルギー、性能、価格など、どこに標準を定めるかが大切である。今までは断熱材を選ぶのに、グラスウールとポリウレタンやポリスチレンではどちらが良いかなどと話題になっていたが、最近はこれらに加え、地球環境や人体に負荷が少ない羊毛、炭化発泡コルクなどの数種類の自然系断熱材の登場から、より複雑になってきた。
化学物質過敏症・環境ホルモンやアレルギーに対応する、地球環境や人体に負荷が少ない断熱材として、国内で出回り始めた炭化発泡コルク、木材のセルロース繊維、羊毛や、これから輸入される亜麻や大麻などの草茎のセルロース繊維などの自然系断熱材がある。しかし、輸入に頼らざる得なく、価格はグラスウールの約5〜10倍と高いことが普及の障害になっている。最近では、比較的近場のオーストラリアから輸入されるポリエステルが入ったリサイクル羊毛は、高性能16kグラスウールの価格の約2倍で、ウレタンホームより安価に使用できるのは心強い。石油系ではあるが、焼却廃棄してもダイオキシンなどの有毒ガスがでない、ペットボトルのリサイクルのポリエステルの断熱材も心強い。高性能16kグラスウールの価格の約1.5倍で、ウレタンホームの約半分の価格である。

・性能とコストのバランスによる選択
性能は前述したように、等級4の次世代省エネルギー基準程度とする。代表的断熱材の筆者判断のおよそのコストを以下にあげる。
 高性能グラスウール16k厚さ100mm    ・・・ 約630円/m2 (基準)
 セルロースファイバー天井吹き込み厚さ(200mm)
      厚さ100mmの材のみに試算   ・・・約1,000円/m2 (1.6倍)
 リサイクルポリエステル厚さ100mm    ・・・約1,080円/m2 (1.7倍)
 リサイクル羊毛厚さ100mm        ・・・約1,300円/m2 (2.0倍)
 押出法ポリスチレンフォーム3種厚さ50mm・・・約1,300円/m2 (2.0倍)
 硬質ウレタンホームフォーム  厚さ50mm・・・約1.900円/m2 (3.0倍)
 フェノールフォーム 厚さ35mm     ・・・約1.900円/m2 (3.0倍)
 木質繊維(国産)厚さ100mm      ・・・約2,700円/m2 (4.3倍)
 木質繊維(輸入)厚さ100mm       ・・・約3.000円/m2 (4.8倍)
 炭化発泡コルク厚さ100mm        ・・・約13,000円/m2 (20倍)

よく、外断熱が良いのか内断熱が良いのか聞かれる。著者は現状では性能(熱損失係数)が同じであれば、どちらでも良いと考え、後はコストとエコロジーの問題である。次世代省エネルギー基準の次ぎの基準は、北欧、ドイツ、スイス並みの基準になるだろうから、外断熱や内断熱というより両方を含む付加断熱工法である。
上記の価格から判断すると、安さと基本から選択すると高性能グラスウール16kの充填工法。40坪前後の住宅の断熱材の価格は約30万円。価格は2〜3倍高いが、ジャーナリズム受け・一般受けの良さから選択すると、押出法ポリスチレンフォーム3種や硬質ウレタンホームフォームの外張工法が一般的である。1件分の住宅の断熱材の価格は約60から80万円。石油系外張工法のなかで、環境に比較的負荷が少なく燃焼時に有毒ガス発生がすくない建材は、ビーズ法ポリスチレンフォームと最近市場に出ているフェノールフォームである。手軽なエコロジー断熱材を選択すると、リサイクル羊毛・セルロースファイバー天井吹き込み、リサイクルポリエステルの充填工法。リサイクル羊毛の1件分の住宅の断熱材の価格は約60万円。リサイクルポリエステルの1件分の住宅の断熱材の価格は約51万円。
現状では硬質ウレタンホームフォームの1.4倍するが、基本的なエコロジー断熱材の木質繊維(国産)も使用したいところだ。
次世代省エネルギー基準の次ぎに望まれる高性能(これが、等級5になるのか?)が、大幅なコストアップせずに対応できるのは、高性能グラスウール16k・24kの付加断熱工法になる。
                                  
 ロ-2.断熱材の施工の基準
€躯体の断熱性能の確保 
建材の選択と関連がうすいので省略する。

 躯体の断熱性能及び耐久性能を損なうおそれのある結露の防止
関連がある「a.」の防湿気密層は「ロ-3.気密層の施工の基準」で説明する。他の項目は建材の選択と関連がうすいので省略する。

 ロ-3.気密層の施工の基準 
等級4では地域にかかわらず気密住宅とする。気密住宅とは床面積1m2当たりの隙間相当面積が5.0cm2以下の住宅をいう。
Ą・˘地域は隙間相当面積が2.0cm2/m2、Ł・Ľ・Ś・Š地域は隙間相当面積が5.0cm2/m2である。しかし実生活では、隙間相当面積が5.0cm2/m2では、風圧による換気量の変化が大きく、冬期は冷たい隙間風により室内温熱環境が著しく悪化するので、Ł地域やĽ地域の関東や北陸では隙間相当面積が2.0cm2/m2以下が望ましい。

€気密の基準
隙間相当面積が2.0cm2/m以下とする場合の気密材料
(ここでは隙間相当面積が5.0cm2/m2以下であっても、隙間相当面積が2.0cm2/m以下とする場合の気密材料とする。)
1.厚さ0.2mm以上の住宅用プラスチック系防湿フィルム
  (JISA6930-1997に定めるものをいう。)
2.合板叉はこれと同等以上の防湿性及び気密性を有するもの。
3.コンクリート部材。

 連続した気密層の確保
建材の選択と関連がうすいので省略する。
¡気密材の施工上の配慮事項
建材の選択と関連がうすいので省略する。

ハ.開口部の断熱性能の基準
開口部材は性能と価格が比例し、断熱材に較べ明確に選択しやすい。
住宅で熱が逃げるのは、床、壁、天井、窓から逃げる熱と、換気や隙間から逃げる熱とに大別され、窓のガラス面と窓の隙間から逃げる熱は高性能な高気密・高断熱の住宅では全体の1/3もある。窓の気密が悪いと、室内の暖かい空気が外に逃げ、冷たい外気が入り込んでしまうので、足元が寒くなり上下の温度差も大きくなってしまう。また窓が曇り、不快を感じることにもなりかねない。従来の工法では断熱材が薄く隙間だらけなので、壁、天井、床や隙間から逃げる熱の方が多く、窓から逃げる熱の割合は相対的に少なくなってはいるが、住宅の性能が上がれば上がるほど、窓の性能がより大切になってくる。
開口部の役割には、採光、眺望、開放感、換気、通風、日射熱の取り入れ、内と外の遮断(熱・音・空気等)、出入口などが挙げられる。これらのなかで、性能表示制度の温熱環境に関係するのは、以下にあげる。
€断熱性能
   開口部の断熱性能を高め、暖冷房の効率っを高めるために、建具やガラスの仕様
   を定めている。
 日射遮蔽
   夏期の日射を遮蔽するように、開口部の方位により庇やカーテン等を設ける基準
   を定めている。
¡気密性能
   隙間風による熱の移動を抑えるため、開口部の気密性能の基準を定めている。

ハ-1.開口部の断熱性能の基準と選択のポイント
・断熱性能の地域区分と等級の選択 
断熱材と同じ理由から、等級4(次世代省エネルギー基準程度)に絞って述べる。開口部の断熱性能基準の等級4では、Ą・˘地域、Ł地域、Ľ・Ś地域、Š地域の4つの地域に別れている。
€Ą・˘地域
  この地域の現状の高断熱・高気密住宅は一般的に、低放射複層ガラスや三層複層ガ
  ラス、一重の樹脂サッシや木製サッシが使用されているので問題はない。これから
  は、さらにもう1ランク上の性能の、ガス入り低放射複層ガラスを使用したい。
 Ł地域
  この地域の現状の高断熱・高気密住宅は一般的に、複層ガラスや低放射複層ガラス、
  一重の樹脂サッシ、一重の[樹脂+アルミ]の複合材料製サッシ、一重のアルミ熱
  遮断サッシが使用されているので問題はない。しかし、実際の生活上、複層ガラス
  だけでは、和室の障子やカーテンがある部分ではガラスの表面温度が下がり結露す
  るので低放射複層ガラス以上の性能が欲しい。さらに、この地域では日射遮蔽を考
  え、日射熱をカットする低放射複層ガラスを使用したい。
¡Ľ・Ś地域
  東海以西の地域では複層ガラスに馴染みが少ないだろうが、冷房負荷を考えた場合
  はやはり必要である。さらに、複層ガラスに日射遮蔽を考え、日射熱をカットする
  低放射複層ガラスを使用したい。
¤Š地域
  従前の一重の建具、単板ガラスで良い。

・開口部全体の断熱性能
窓からの熱損失はガラス自体からの熱伝導、対流及び放射、ガラスのスペーサーの熱伝導、枠からの熱伝導、可動部分からの漏気、また窓との周囲の取り合い部分の漏気と熱伝導による。

・建具の断熱性能
建具の見付面積は窓の全体面積の10〜15%を占め、性能に重要な役割を果たし、熱損失が少ないもの、見付面積が少ないものが望まれる。ガラス面積が大きく望まれるパッシブ効果や熱伝導を少なくするには外付けサッシが良い。
枠の材質には、アルミ(熱伝導率175kcal/ʄh℃)、プラスチック(0.18)、木(0.11〜0.15)などがある。アルミは熱損失が大きい上に結露もするので寒冷地には適していない。プラスチックは熱を伝えにくいが、窓が大きくなると枠のなかにスチールバーの補強材が入り、そこで結露することがあり。このことから、北欧でも見られるように、寒冷地では木製の使用頻度がプラスチックよりも上位を占めている。
最近では、外側がアルミで室内側がプラスチックのサッシ(一重の[樹脂+アルミ]の複合材料製サッシ)や、外側と内側とを断熱材で冷たさが伝わってくるのを遮断している寒冷地仕様(一重のアルミ熱遮断サッシ)が多用されている。Ł地域以西であれば十分にいける。また外部にアルミやプラスチックのカバーをつけた木製サッシは、住まい手の気質や気候に合わせ、塗装などのメンテナンスにコストがかかる木の弱点をカバーしながら特性をうまく生かすようになった。

・ガラスの断熱性能
イ. 熱損失とその対策
ガラスには一重、二重、ペアガラス(複層)、トリプルガラス(三層複層)、LOW-Eペアガラス(低放射複層ガラス)、不活性ガス(アルゴンガス)混入、真空ガラスなどの種類がある。グラスウール100mmの断熱材の外壁の熱損失の比率を1にすると、単パンガラスでは20倍、ペアガラスでは10倍、トリプルガラスでは6倍となっている。
・a 空気層の厚み
薄くては効果が小さく、垂直の空気層では30mm前後で最も断熱力が高くなり、それ以上厚くしても中空層内の対流伝熱により性能の向上ははない。日本で多層ガラスの標準的な空気層の厚さは6mmと12mmであるが、断熱性能が良い12mmを使用する。
・b 多層化ガラス
ガラスを多層にし、適当な空気層を確保することで、、窓から逃げる熱は減少し、室内側のガラス面温度を高く保つことができる。窓面の結露や冷気流を抑えることができる。寒冷地なら、室内の湿度が高くなったり、障子やカーテンなどを締めたりするとペアガラスでは結露がでてしまう。3重ガラスやLOW-Eペアガラスならガラスの表面温度が4度ほど上がり結露の恐れは極めて少なくなる。3重ガラス以上になると、ガラスはもちろんのことガラス枠部分も見込みが大きくなり重量が増し、ヒンジなどの金具に負担がかかる。
多層ガラスが多く使用されている北欧の木製窓は、毎日大きく何度も開け閉てする考え方ではなく、換気時や掃除時のみに開く考え方なので、金具に負担は少ない。冬期以外の季節に窓の開け閉てが少ない北海道では多層ガラスで良いだろうが、東北以西では春・夏・秋の開け閉ての回数が多く、使い勝手も悪く向かない。関東以西では冬期も含んでオールシーズンに開け閉てが多いことから、性能をあげるには軽量なLOW-Eペアガラスなどを使用したほうが良い。
・c 金属コーテングガラス(低輻射ガラス、低放射ガラス、LOW-Eガラス)
窓から逃げる熱の半分近くが輻射による。室内の壁から出ている輻射熱は、赤外線の形でガラス面に吸収され、その大半が外に放出されてしまう。LOW-Eペアガラスは、コーテング面を室内側に施工すると、日射や光を比較的良く透過するが、この輻射熱の大部分を反射し室内に閉じこめる。太陽熱を採り入れ、暖房熱を逃さない。室外側に施工すると、日射で室内側からガラスが熱せられても室内への熱の輻射が少なく、日射熱の室内への浸入を抑えることができる。また紫外線も80%以上カットする。各ガラスメーカーから様々な商品名がでているが、普及率は北海道以外では、まだまだ低くこれからであり、北東北でも熱心な工務店が標準にしている程度である。
熱貫流率のK値が1.5のLOW-Eガラスは、室温が20度、室内湿度が50%の時はマイナス32度まで結露することはない。熱放射を押さえ熱損失を少なくするため、ガラスに金属をコーティングしているもの、フィルムを貼ったりしているものなどがある。2重ガラスや3重ガラスの1枚をLOW-Eガラスにすると、それぞ3層ガラス、4層ガラスの断熱効果が得られる。2重ガラスの空気層の中間にフィルムを貼ったものは4層ガラスの断熱効果が得られる。
・d 不活性ガスの混入(アルゴンガスなど)
断熱性能を上げる一つに、空気の代わりに特殊なガスを封入することで、6フッ化イオウやアルゴンガスなどが使用される。空気より熱伝導率が小さいガスを封入することで、ペアガラスの熱貫流率を小さくする。最近の輸入木製サッシでは、アルゴンやクリプトンなどの空気よりも重い不活性ガスに置き換えられるようになってきた。重いガスによってそうないの対流妨げられ、窓の熱感流率を小さくしている。価格が高価なためアルゴンガスが一般的であるが、普及はこれからだ。。一般的に普及されているのは、デンマーク製の木製天窓のベルックスルーフウインドウである。空気層が18mmの室内側に金属コーテングされたアルゴンガス入りLOW-Eペアガラスである。気候条件が厳しい屋根に取り付く天窓であるがアルゴンガスになったら結露のクレームがほとんど無くなった。
・e 真空ガラス
日本板ガラスから最近真空ガラスが販売された。2枚のガラスの間に100万分の1気圧の真空が閉じこめられている。断熱性能、遮音性能、防露性能が優れている。3mmガラス3mmガラス+0.2mmの真空層+3mmガラスの6.2mmの薄さが何よりも良い。また日本板ガラスでは「スペーシア」を入れた断熱アルミサッシ「シャトルエース」を販売した。障子の厚さが約半分、重量も低減、見つけ寸法も小さくできている。
・f スペーサーの改良
スペーサーがガラス面に接触する断熱ガラスの端部では、相当量の熱が逃げる。その部分だけが結露していることが間々見受けられる。従来スペーサーはアルミニウム製がほとんどだが、最近、旭ガラスが北海道を初めとして商品名「デューカット」のブチル系のスペーサーが使用されてきた。輸入ものでは断熱スペーサーのプラスチック製、シリコン製、グラスファイバー製などが使用されている。

 ハ-2.開口部の日射遮蔽の基準と選択のポイント
・日射遮蔽の地域区分と等級の選択 
地域は、Ą・˘地域、Ł地域、Ľ・Ś地域、Š地域の4地域に別れている。なお、Ľ、Ś地域において、Ł地域の建具とガラスの組合せを使用する場合、Ł地域の開口部の日射遮蔽の基準を適用できる。
日射遮蔽の基準は等級3と4にはあるが、等級2にはない。前述の理由から等級4を選択する。

・日射遮蔽の基準
夏期の日射熱が建物内部へ侵入し、室温の上昇や冷房負荷増大原因とならないよう、開口部に日射遮蔽の措置を行う。
€各地共通の基準(等級3・4共通)
a.「付属部材」の基準
「付属部材」とは、レースカーテン等、内付けブラインド等、紙障子、外付けブラインド等の4種類をいい、この順番に日射遮蔽の効果が高くなる。
外付けブラインド等は窓の外側に設置され、スラット等の可変により日射調整機能を有するブラインド。叉はこれと同等以上の遮蔽性を有するオーニング若しくはサンシェード等をいう。
b.「庇、軒等」の基準
東南から南を経て南西の方位に設置され、かつ外壁からの出寸法(Z)がその下端から窓下端までの高さ寸法(Y1+Y2)の0.3倍以上のものを有効とする。

 各地域の開口部の日射遮蔽の基準(等級4)
表■の方位に応じて、いずれかの日射遮蔽の対策を行う。日射遮蔽の対策は、建具の仕様、ガラスの日射侵入率、付属部材叉は庇、軒等の組合せとなっている。

・日射遮蔽性能と選択
LOW-Eペアガラスには日射の負担を軽くするタイプと、断熱・防露タイプの使い分けが必要である。高性能な高断熱・高気密住宅は地域˘の寒冷地であっても、日射が多い太平洋側の八戸や盛岡では冬期に日射熱でオーバーヒートしてしまう。
冬期以外にはもちろん日射遮蔽は必要であるが、冬期でも日射が多いŁ地域以西は、オーバーヒートしないように蓄熱が考えられているなどされていない住宅は、南面の窓のガラスは日射熱をカットするLOW-Eガラスが好ましい。室内に入る太陽光の50%以上をカット(日射侵入率39.8%)するので、夏場も非常に有効であり、庇やシャッターなどで遮蔽しない場合は、温暖地にもこれから普及が望まれる。断熱・保温性能は室内側にコーテングされたものと同じく、通常のペアガラスより高い。
性能表示制度ではĽ・Ś地域、Š地域でも日射侵入率43%以下の遮熱複層ガラスであれば、等級4であっても、建具の仕様が問われなく、付属部材も不要である。しかし、実際の生活では遮熱複層ガラスであっても、外付けブラインド等が欲しい。次世代の次ぎの基準である。
Ą地域の極めて寒冷な北海道と日射の少ない日本海地域では、少しばかりの日射利用と断熱・保温が優先するLOW-Eガラスが好ましい。日射熱取得か遮蔽かの関連である。
性能表示制度では方位を真北±30°とそれ以外に分けて基準が示されている。庇などで遮蔽しにくい太陽高度の低い東西の窓ガラスは日射熱をカットするLOW-Eガラスが好ましい。南面は庇の長さや太陽高度などの関連でその住宅ごとの条件から考えよう。遮蔽ができない南面の窓のガラスは日射熱をカットするLOW-Eガラスが好ましい。

ハ-3.開口部の気密性能の基準と選択のポイント
・気密性能の地域区分と等級の選択 
前述の理由から等級4を選択する。Ą・˘地域は、開口部にJISA4706に定める気密性等級がA-4以上のサッシを用い、開口部の気密性を高める。Ł・Ľ・Ś・Š地域は、開口部にJISA4706に定める気密性等級がA-3以上のサッシを用い、開口部の気密性を高める。断熱サッシはほとんどが気密性等級がA-4以上であり問題はなく、Ł・Ľ・Ś・Š地域でも使用したほうが良い。。
 
・気密性能
住宅の性能が高いと窓の性能がどうしても見劣りする。住宅の気密テストで、50パスカルの圧力をかけると、引違サッシのめしあわせのパッキン部分や、開き窓でもパッキンの角の部分の精度が悪ければ勢い良く隙間風が飛び込んでくる。そこで窓の気密性能をいかに上げるかが課題になってくる。
窓の気密性は開閉方式と施工精度によって決まる。はめ殺し窓は性能が良いが、家中に使用することはできない。換気や通風、人の出入りを考えると開き窓が必要になってくる。開き窓は、気密パッキン材と引き寄せ金具の使用によって気密を高くすることが可能である。もっと気密をたかめるために開き戸とはめ殺し窓がセットになった窓が多用されている。一般に使われているアルミはもちろん、プラスチックの引き違い窓は気密が落ちるので、選択には注意がいる。ただし開き戸の生活に馴染めない人も多く、高性能な片引き窓も要求されいる。木製サッシには、ドイツの金具を使った性能の高い、吊り片引きの窓もある。これならかなり大きなテラス戸がつくれ、開放感にあふれた空間となる。他に防犯を考えながら通風や換気のできる多機能なドレーキップ窓などもあり、さまざまなメーカーから慎重に選びたいものだ。
日本のJISでは窓の内外に10パスカルの圧力をかけた時の通気量を(窓面積1平方mに対する1時間当たりの通気量立法m)A-1からA-4の4つの等級に分けて気密性を表してる。最も高いクラスの気密性A-4等級で2.0立法m/平方m以下になっている。この数値では満足できなく、北欧クラスの久保木工の木製サッシは0.05立法m/平方mの高い気密を持っている。北欧の基準と比べるとJISの最も高い等級でも気密が低く押さえられ、省エネルギーや都市での防音を考えた場合、北欧並の気密にしたいものだ。

ハ.の開口部の性能とコストのバランスによる選択
開口部は流通によって著しく価格差があり、単純には述べることはできないが、単板アルミサッシを元にした、おおまかな比較されたコストを述べる。2重アルミサッシは単板アルミサッシの約2倍、一重のアルミ熱遮断サッシは2重アルミサッシの約2倍弱、樹脂サッシは2重アルミサッシの約2倍、木製サッシは樹脂サッシの約2倍の価格帯である。これにLOW-Eペアガラス・遮熱LOW-Eペアガラスなどを使用すると、それぞれやく2から3割高くなる。しかし、これ以上に断熱アルミサッシや樹脂サッシが普及されていない温暖地ではかなり高い。

断熱サッシというとアルミの2重サッシや、外側がアルミ室内側がプラスチックサッシの2重サッシ以上があげられるが、結露しやすいことから、断熱材で熱橋を遮断した断熱・防露型アルミサッシ(一重のアルミ熱遮断サッシ)以上で、ガラスは遮熱LOW-Eペアガラスを、温暖なĽ・Ś・Š地域でも使用した方が良い。コストもプラスチックサッシより安くなっている。一重のアルミ熱遮断サッシは熱橋を遮断しているが、Ą・˘地域の北海道や北東北ではアルミ部分に結露の恐れがある。
Ą・˘地域では、窓枠はプラスチックサッシか北欧やドイツ型の木製サッシで、ガラスはĄ地域でガス入りLOW-Eペアガラス、˘地域の北東北ではLOW-Eペアガラス、˘地域の大平洋側では遮熱LOW-Eペアガラスの仕様が現在時点の標準となって欲しい。

住宅一件分のサッシをすべて引違にした場合は、すべてを片開きなど気密の高いサッシにした場合より、隙間相当面積が0.5cm2/m2ほど悪くなり、Ł地域以北ではきついが、Ľ南東北以南ではそんなに負担にならないのではなかろうか。それでも、北東北にいる私は、全部は引違は使用しないが、居間のテラス戸や個室の窓に引違を使用する頻度が多くなっている。冬場以外に大きく開けられるのは魅力であるし、大開口部ながら網戸が簡単で良い。以前は2間以上の開口部はヘーベシーベ木製サッシでないと性能的に怖くてできなかったが、最近では気密の悪さは暖房形式など他で補って、プラスチックサッシの2間の大きな引違テラス戸を平気で使用するようになった。LOW-Eペアガラスの役割は大きい。気密に関してはほとんどの断熱サッシがA-4以上であり、選択に問題はない。

40坪前後の住宅の外部の複層ガラス断熱サッシは、一重のアルミ熱遮断サッシから樹脂サッシ程度でおおよそ80万円から100万円であり、複層ガラスを遮熱LOW-Eペアガラスにグレードアップすると、12万円から15万円程度のコストアップになる。