4.付加断熱

4-1.[外張り+充填]付加断熱
€.付加断熱の考え方とその実力
・付加断熱とは何か
付加断熱工法は寒冷地の更なる良好な温熱環境と省エネルギーを求める一部で行われていた。付加断熱工法は105mmの柱間に高性能断熱材を充填し、その外側に更に高性能断熱材を外張り付加する。それが、一般的に普及してきたのは、次世代型省エネルギー基準の北海道などの地域Ąの充填断熱工法の、「外壁の中間階床の横架材部分」の熱橋の断熱補強のための断熱材の付加である。理論的には横架材部分だけの付加ですむが、実際は住宅金融公庫の共通仕様書の参考図にあるように、充填断熱面の外側全面に外張り断熱を付加するのが一般的である。

高断熱・高気密工法が登場してから、理論と実践の積み重ねの25年ほど過ぎたなかで、数多くの断熱工法が登場と幾つかの論争がおこり、社会現象の荒波を何度か乗り越えている。現在は外張り工法の声が大きいが、これからは温暖地でも、EU並みの二酸化炭素削減対応の次世代基準の次ぎの更に厳しい基準、環境や人への低負荷素材断熱材の必要性などにより、断熱工法の新たな段階に入る。外張り断熱工法のみがベストだと単純に言いきれない状況である。外張りは現状の厚さ以上にすることは難しいが、充填断熱は外張りが付加され断熱材をより厚くすることが簡単にできる。

充填断熱は構造材の木材部分の熱橋による熱損失があるが、外壁全体にしめる割り合いは、在来工法で柱や間柱で約17%、枠組壁工法では約23%ある。付加断熱することによって熱橋の問題は解消される。密度36kのボード状グラスウール厚さ50mmを付加すると、その分の熱性能と約17%の熱橋が解決されるので、2倍弱の性能があがる。
100mm断熱の室内壁の表面温度は室温より約1.0℃低いが、50mmの付加断熱の表面温度は約0.5℃しか低くならず、体感温熱環境が良好である。

付加断熱のコストアップは付加する部分がコストアップになる。密度36kのボード状グラスウール厚さ50mmを使用すると、材工で外壁部分は約1,350円/m2のコストアップ、40坪前後の住宅で40万円のコストアップになる。充填部分も含めると約110万円程度になる。これは発泡プララスチック系外張り(外壁厚さ50mm・屋根100mm)とおおよそ同程度のコストである。同程度のコストで付加部分が増した性能が手に入る。
密度36kのボード状グラスウールは普及率が低いことから高めだが、高性能グラスウール16kを付加部分に使用すると15万円/40坪ほどコストダウンできる。


 .付加断熱の納まりと設計・施工のポイント
付加断熱は、「充填+外張」りが一般的だが、他に室内側に付加する「充填+内張り」、外部側と室内側の両方に付加した「外張り+充填+内張り」の3タイプがある。次世代省エネ基準の地域Ąでは、充填断熱で壁厚を増やすとか、「外壁の中間階床の横架材部分」の熱橋の断熱補強のためそこだけ付加することは現状的に不経済なことから、付加断熱が有利である。
北欧やスイスなどの環境問題に敏感な国々では、外壁でグラスウール厚さ240mm相当ほどの熱性能が推奨されている。戸建てやテラスハウス(西洋長屋)は、外断熱のみ、充填断熱のみだけでは熱性能が足りなく、外+充填、室内側+充填、室内側+充填+外などの付加断熱が実践されている。低層(3、4階)集合住宅は木構造の付加断熱や、木断熱・構造パネル(サッシ・内装下地・外装含む)が多い。中層集合住宅(新築)は、構造はPC架構で断熱パネル(サッシ・内装下地・外装下地含む)がカーテンウォールとして設置されるのが多く見られる。
フィンランド内付加断熱

フィンランド外付加断熱

内断熱や外断熱の概念では捕えられない。外断熱は階段室などの防火上の区画のコンクリート壁に見られる程度である。既存の石造・煉瓦造・RC造の断熱改修は外断熱となっている。「室内側+充填」は、防湿シートを充填断熱と同じ場所に施工するので、室内側付加部分が電気の配線スペースにとなる、防湿シートを破損することが少ないが長所である。夏型結露の恐れも少なくなる。欠点は内部スペースが狭くなることだ。

・付加断熱に使える断熱材の組合せと性能・コスト比較
付加部分の断熱材の種類の選択は、結露しない方向にもっていくのに、充填部分の断熱材との透湿抵抗に注意しなければならない。室内側から外部の通気層に向って透湿抵抗が相対的により低い素材を使用していく。充填部分は施工のしやすさからマット状のグラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材が多い。マット状繊維系断熱材は透湿抵抗が低いため、一般的に防湿層に透湿抵抗が高いポリエチレンシートなどの防湿シートが使用されている。通気層に向ってポリスチレンシートより透湿抵抗が低い断熱材なら良い。付加部分はポリスチレホームやウレタンホームでも良いが、コスト的なことから、グラスウールやロックウールの高密度なボード状の断熱材が多く使用される。
付加断熱は断熱材が厚く熱損失が少ないのが長所であるが、ポリスチレンホーム・ウレタンホーム・ウレタン吹き付けは、コストが150万円から200万円/40坪と高く、現状では現実的でない。

・付加断熱に適した外装材
付加断熱工法の外装材は、柱面との間に軟質な断熱材があり、垂れ下がりなどならないように十分な支持力を確保されなければならない。そんなことから、外装材の重量は軽ければ軽い程付加断熱に適している。軽量な防火サイディング・鋼板・木板などが適し、重いモルタル・タイルなどは適さない。

・付加断熱の外壁部の納まりと設計のポイント
外壁部の納まりは、付加断熱材部分の支持材の熱橋をいかに少なく、しかも外装材と通気層胴縁の十分な支持力を保持できることが必要だ。ある程度の強度がある発泡プラスチック系断熱材は、厚さが50mm程度の付加では通気層の胴縁で押さえることができる。確実な支持力を得ること、支持力が劣化しないため、外張り工法と同様に適切な留め付けビスを選択しなければならない。
繊維系のグラスウールやロックウールなどの高密度なボード状の断熱材は、通気層の胴縁で押さえるほどの強度はなく、ジオス工法などの熱橋部分が極めて少ない専用の支持金具が用意されている。役ものを使用しない場合は柱・間柱と通気層の胴縁と直行方向に、付加部分に胴縁を設置する。直行方向にするのは熱橋部分を重ねない工夫である。

・付加断熱の開口部の納まりと設計のポイント
開口部の位置は、付加断熱部分(額縁)に取り付くタイプと、充填部分(軸組)に取り付くタイプがある。雨仕舞が優先されると外側の付加断熱部分に取り付き、熱橋を優先すると充填部分に取り付く。風雨が強い日本では漏水の危険をさけるため、付加断熱部分に取り付くのが多い。寒冷な北欧では、熱橋を優先すると充填部分に取り付く。
付加断熱部分に取り付くタイプは、断熱材が付加された厚さ分のスペーサーが必要で、そこに開口部が取り付く。

・自然系断熱材を使った付加断熱の提案
断熱材を選ぶのに、これまでは施工の難易度と精度、性能と価格のバランスを考慮すれば良かった。しかし、これからは人体と地球環境に負荷が少ないことを考慮に入れなければならない。人体と地球環境に負荷が少ないことは建築だけではなく、衣食住全体で急がれている問題であるが、建築や住宅の領域ではまだまだ試行錯誤であって実績がまだまだ少ない。負荷が少ない自然系断熱材も他の建材と同様に、価格、生産量など問題に突き当たっているが、普及は今後の課題である。
自然系断熱材には、軽量木質軟質繊維板、コルク、羊毛、亜麻、大麻繊維、ココヤシなどがあるが、一部の自然系断熱材を除いて次世代省エネルギー基準では、外壁の厚さ100mmの熱性能では物足りないので、付加断熱が提案できる。