6.断熱材の選択
●断熱材の現状  断熱材を選ぶのに、これまでは施工の難易度と精度、性能と価格のバランスを考 慮すれば良かった。しかし、これからは人体と地球環境に負荷が少ないことを考慮 に入れなければならない。人体と地球環境に負荷が少ないことは建築だけではなく、 衣食住全体で急がれている問題であるが、建築や住宅の領域ではまだまだ試行錯誤 であって実績が少ない。断熱材も他の建材と同様に、価格、生産量など問題に突き 当たっている。
[1]現状の断熱材の問題点  1.グラスウールは本当にダメか?  現状ではグラスウールの使用が多く、寒冷地ほどグラスウールの使用率が増すな ど地域差があるが、60から80%をしめる。しかし、この十数年はフランチャイ ズの波に乗ってプラスチック系の押出法ポリスチレフォーム、硬質ウレタンフォー ムなどがのびている。  寒冷で、断熱材の経験が長く使用量の多い北欧や北米では、断熱材のほとんどが グラスウールとロックウールの鉱物繊維断熱材であり、プラスチック系の断熱材は 標準ではない。エコロジー、バウビオロギーの先進地ドイツやスイスであっても、 主流はまだまだグラスウールであり、それに次ぐものが石油製品の発泡系断熱材で ある。自然系の断熱材の生産や流通はこれからである。
 断熱材といえば、これまでグラスウールの歴史が長いが、壁体内の結露や黴、グ ラスウールの垂れ下がりなどの悪いイメージがもたれている。実際、グラスウール の50mmの断熱施工を見れば、誰もが不完全さを感ずる。この点を、後発の有利 性を最大限に活用し、水中にグラスウールを沈めたり、黴で黒くなった壁体内結露 の写真や土台周りの木部が腐っている写真を見せるなどの攻撃をし、押出法ポリス チレンフォームや硬質ウレタンフォームなどののメーカーが市場をのばしてきた。  しかし、新在来工法などの、高性能グラスウール使用の高断熱・高気密工法が定 着することで、安くて施工しやすく、高性能なグラスウール断熱の信頼度があがっ てきている。また、ガラス繊維が引き起こす健康問題に関しても、危険度は毎日飲 むコーヒー一杯分程度と言われ、’97年にEC欧州委員会の危険物諮問委員会(I SPRA)は市販のグラスウールを発ガン性物質から除外している。
 2.石油系断熱材の問題点  現状の断熱材の選択として、コスト、性能に重点をおけば高性能ラスウールが選 択される。簡便さ気安さを考えれば、グラスウールの2.5倍から3倍のコストア ップになっても、石油製品のプラスチック断熱材を選択することになる。しかし、 プラスチック系断熱材は、樹脂、発泡剤(フロン、代替フロン)、硬化剤、難燃剤 などが、地球の温暖化、再利用・リサイクル、廃棄時処理などの環境への負荷の大 きさや、環境ホルモン・化学物質過敏症の問題と火災や廃棄処分の燃焼時による人 体へ負荷の大きさを考えなければならない。
 他に白蟻による食害が問題になっている。フロンはオゾン層を薄くし、南極では オゾンホールをつくり、生物が未体験の遺伝子破壊などの危険な紫外線Bをあびて いる。代替フロンはオゾン層には影響が少ないが地球の温暖化は二酸化炭素の数千 倍、それ以上ある。
 そうしたプラスチック系断熱材中でも高発砲ポリエチレンは、特定フロンが使用 されていなく、燃えた時の有害性も低いとされ、他の石油系の発泡断熱材の中では 比較的健康と環境には負荷が少ない方である。他にビーズ法ポリスチレンフォーム も発泡形成に特定フロンや代替フロンを使用していないのと、30%ほどのリサイ クルがあることから比較的健康と環境には負荷が少ない方であろう。
 3.次世代基準をどう考えるか   省エネルギー、二酸化炭素削減のための高断熱・高気密を考えると、今回の次世 代基準の断熱の性能は順当と思われる。しかし、Ł地区以南の気密の隙間相当面積 の5平方cm/平方mは性能が低く思われ、風圧の影響を考えて2平方cm/平方 m以上の性能は欲しい。日射遮蔽はŁ、Ľ地区以南ではすこぶる弱い。高断熱・高 気密化すればするほど夏期の日射遮蔽による省エネルギーが必要である。日射 遮蔽は室内側での処理では効果が少なく、庇だけではなく、外付けブラインドなど の確実な日射遮蔽部品が必需品である。
 断熱材では次世代基準は従来のĄ、˘地区にとってはそれほど驚く仕様ではない のだが、従来のĽ地区以南が断熱材のCクラス(熱伝導率0.04〜0.035W /m・K、高性能グラスウールなど)で屋根が185ミリ、壁が90とは大きな変 化である。壁の中や天井に目一杯断熱材を充填するのは50ミリ断熱材をすかすか にいれることと意味合いがことなる。壁の100ミリ充填は結露対策を考えなけ ればならない。断熱欠損、防湿、透湿、気密を総合的に考えなければ、内部結露が おこる。結露した壁 の中では木材が腐朽し建築の寿命を著しく損ない、カビやダニの発生は人の健康を 損なう。

 [2]現状の断熱材の種類とその評価  1.繊維系(鉱物製品)  1-1 グラスウール  原料:けい砂、石灰石、苦灰石、長石、ソーダ灰、  形状:マット、ボード、 バラ綿  ガラス原料を溶かして繊維状にしたものを接着剤(熱効果性樹脂)を吹き付け 加熱成形する。  日本ではグラスウールの使用割合が大きい。北海道住宅新聞が調査した数値で は、高断熱・高気密住宅の歴史が長い北海道の断熱材は、グラスウールが8割以 上使用されている。日本全体の住宅用断熱材の割合の数値はでていないが、産業 用全般としてのおおよそ6割をしめる。住宅の使用率の数値は北海道ほどではな いだろうが、もっと大きいだろう。  グラスウールの使用割合が大きいのは日本ばかりでなく、寒冷な北欧、北米、 ドイツなども無機質繊維系断熱材のしめる割合が日本より大きい。グラスウール の生産量は、米国の150万トン、欧州の100万トン、日本の25万トン、全 体で300万トンになっている。日本では北欧、北米、ドイツなどの国に較べて、 発砲プラスチックの押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム類の使 用率が大きくイレギュラーである。断熱材の基本が無機質繊維系断熱材となって いるのは、安い、施工しやすい、原料の確保が容易で生産量が大きいなどがあげ られる。施工にあたっては、透湿性があるため防湿層が必要である。高断熱・高 気密・全室暖房・計画換気の仕様にそった施工ならば結露、ずれ下がり、劣化な ど何のトラブルはない。厚さ50mmのグラスウールの袋入りの断熱材を雑に壁 の中に押し込んで入れれば良かった時代のグラスウールは、当初密度が8kg/ 立方mと今から思うと「わた飴」のような嘘みたいなグラスウールであった。も ちろん防湿層、気密層、空気層などはなかった時代の話である。まもなく、密度 が10kg/立方mのがでたが、こうした時期のグラスウールに結露、ずれ下が り、劣化などが起きていた。その後の二十数年前のオイルショック時期に、省エ ネルギーがはかられ、高断熱のみの考え方の欠陥から結露やナミダダケなどによ り住宅の腐朽が問題になった。その反省から、気密の考え方が加えられ、断熱層 の他に防湿層、気密層、空気層が設けられ、高断熱・高気密・全室暖房・計画換 気の基本が確立した。グラスウールの密度も、16K、繊維が細くなった16K の高性能型、24Kの高性能型と性能と品質の向上がみられてきた。
 断熱性能は、高断熱の標準仕様としての高性能グラスウール16Kでは熱伝導 率が0.038W/m・k(住宅金融公庫資料)で、透湿係数が高いので防湿層 が必要である。価格は100ミリ厚で約700円/平米前後と硬質ウレタンフォ ームの約2.5分の1であり安い。一次製造エネルギーは1立方メートル当たり 100〜700KW・Hと大きい。石油製品のポリウレタンやポリスチレンの断 熱材よりは低く自然素材の炭化発泡コルクや亜麻繊維の断熱材よりは高い。回収 された空ビンのガラスや生産工場内の廃棄ガラス繊維のリサイクルが行われてい る。   ドイツのエコテスト社出版の「エコロジーハウス」の厳しい「エコテスト」 では、グラスウールは石油製品のポリウレタンやポリスチレンの断熱材と共に「 低推奨品」「非推奨品」とにあげられている。評価が分かれているのは、発ガン 性評価の項目で基準以下のグラスウールが「低推奨品」、基準以上が「非推奨品」 となっている。発ガン性評価の項目で基準以下のグラスウールは、繊維が人体内 で溶解されやすくなっているなどの工夫がなされているのだろう。施工時には簡 便な防塵対策か防塵マスクが必要。ドイツの環境都市フライブルクでの98年の エコメッセには、数々の自然素材の断熱材にまじって、1社のグラスウールが展 示されていた。

 ◎ヒトの発ガン例は皆無です。      硝子繊維協会のホームページより  国際ガン研究機関(IARC)の評価でも安全性が認められています。 通常の取り扱い作業では、ガンをはじめとする呼吸器系の疾病を起こす危険性は まったくありません。また、通常の呼吸では、体内の防御・免疫機能の働きによ って、発ガン等の健康への影響にも心配はありません。おそらくそのうわさは、 1987年に国際ガン研究機関(IARC)がグラスウールを含む人造鉱物繊維を“ヒ トに対して発ガン性のある可能性のある物質”としてグループ<2B>に分類した ことからだろうと推測されます。しかし、この分類は実際にはありえないほどの 大量の繊維を動物の肺や体内に直接注入するという実験方法によって導かれたも ので、その後に行われた数多くの調査・研究において、人に対する発がん性を示 す可能性が認められないことから、2001年10月にIARCはグラスウールを含む 人造鉱物繊維の発ガン性リスクを再評価し、グループ<3>に改正しました。 グループ<3>とは、 「ヒト発がん性に分類し得ない物質」という評価で、ウレ タンやスチレン等より上のランクで、ナイロンやお茶等と同レベルの高い安全性 が証明されました。これは、事実上グラスウールの国際的な安全宣言と言えます。  硝子繊維協会では、これまでも会員各社の計22事業所及びその従業員を対象に 職場環境調査、或いは数回にわたる「保存胸部X線直接撮影フィルム」の読影調 査等を実施してきました。 その結果、昭和30年代初頭に我が国で本格的に硝子 繊維製品の製造が開始されて以降、30有余年にわたり製造・加工作業に従事し てきたこうした従業員に硝子繊維が原因となる発ガンその他の病症は確認されま せんでした。最も新しい「胸部X線直接撮影フィルム調査」は、平成11年に計18 名の産業医により14社22工場の3834名を対象に実施されましたが、その結果石 綿暴露に極めて特異的な胸膜病変である胸膜肥厚班(プラーク)の所見者はゼロ という結果も出ています。
・危険なアスベストとはどこがちがうか、繊維の構造や発ガン性リスクが違います。   天然の結晶性鉱物繊維であるアスベストは1ミクロン以下の極めて細い繊維の 束で、壊れると細く長い繊維に裂けてしまいます。WHO(世界保健機関)の定 義によると、肺の内部に吸入される繊維のサイズは直径が3ミクロン以下のため、 容易に肺胞にまで到達してしまいます。またアスベストは、体内の免疫機能に対 する耐性が強く、排出されずに多年にわたり体内に滞留し、さまざまな病気を引 き起こす原因となります。IARC(国際ガン研究機関)は、アスベストを発ガン 性物質として最もリスクの高いグループ<1> (ヒトに対して発ガン性のある物 質)に分類し、ニコチン・タール等と同レベルの評価をしています。  一方グラスウール繊維の直径は4〜8ミクロンもあり、肺に入り込みにくく、 肺に吸入されても体液に溶けて短期間で排出されます。IARC(国際ガン研究機関) の分類でもグループ<3>(ヒト発がん性に分類し得ない物質)と評価されてお り、グラスウールの高い安全性が認められています。
・施工後、繊維の飛散もほとんどなく安心です。  一度施工されたグラスウールからの繊維の飛散はほとんどないので、実際に施 工された住居やビルの環境測定でも、その濃度(空気1cm3当たりの浮遊繊維の 数)は戸外と同レベルの極めて少ない数値でした。グラスウール断熱材は壁体内 に施工されるので、室内側の空気を汚染することもありません。
・チクチクは一時的なもの。皮膚に炎症等は起こしません。  チクチクするのは、直径4〜8ミクロンの繊維が皮膚にくっついて表面に物理的 な刺激をあたえ、一過性のかゆみを感じさせるから。ウールのズボンやセーターが 素肌に触れるとチクチクするのと同じ現象ですね。不快な刺激を避けるためには、 加工や施工作業の時皮膚をガードする手袋や長袖の着衣、保護メガネや帽子などを 使用することをおすすめします。
・吸ったとしても肺に入り込みにくく、万一 肺に入っても体液に溶けて排出されます。  WHO(世界保健機関)の定義によると、肺の内部に吸収される繊維のサイズは、 直径が3ミクロン以下、長さが9ミクロン以下のものです。私たちの目には非常に 小さく見えるグラスウールの粉じんですが、その直径は4〜8ミクロンと太く、ま た空気中に浮遊する繊維の長さは10ミクロン以上と、とても大きいものです。し たがってほとんどの粉じんはすぐに落下し、空気中に長くとどまっていられませ ん。また吸入されても鼻や気管支でほとんど除去されます。ですから、グラスウ ールの粉じんが体内に吸入される確率は一般的に心配されているほど高くはあり ません。しかし、グラスウールも一般の粉じんと同じ異物なので、吸入しないに こしたことはありません。特に換気の悪い空間での作業や、動力で切断加工を行 う場合には、局所排気装置を取り付けるか、防塵マスク等の保護具を着用してく ださい。
 IARCってなに? 世界で1番権威ある、物質の発がん性評価機関。 WHO(世界保健機構)内の組織で、International  Agency for Research  on Cancer(国際がん研究機関)のこと。
 IARCはどんな評価をするの? 次の5つのグループ分けによりそれぞれの物質リスクを評価している。
 ・グループ1 (Carcinogenic to humans. ヒト発がん性)   アスベスト、たばこ、アルコール飲料、カドミュームなど87品種
 ・グループ2A(Probably carcinogenic to humans. たぶんヒト発がん   性がある)   ホルムアルデヒド、紫外線、ディーゼル排気ガスなど63品種
 ・グループ2B(Possibly carcinogenic to humans. ヒト発がん性の可   能性がある)   コーヒー、ピクルス、ウレタン、スチレン、ガソリンなど235品種
 ・グループ3 (Unclassifiable as to carcinogenicity to humans.   ヒト発がん性に分類し得ない)   グラスウール、ガラス長繊維(glass filaments)、ロックウール、ナイロン6、   ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタンフォーム、茶など483品種
 ・グループ4 (Probably not carcinogenic to humans. たぶんヒト発   がん性がない)   カプロラクタム1品種のみ
 ○グラスウールとシックハウスって関係あるの?                     硝子繊維協会のホームページより  グラスウールとシックハウスの関係は、ホルムアルデヒドあり、これについ ては、微妙な問題なので、筆者が説明するより、硝子繊維協会のホームページ の資料から引用し、説明してもらう。
「グラスウールを使った場合ホルムアルデヒドの影響はありますか? グラスウールには、ガラス繊維同志の接着剤(バインダー)として少量の熱硬 化性樹脂(フェノール系樹脂)が使用されています。その樹脂原料の中にホル ムアルデヒドが使用されていますが、理論上は、原料の化学反応によりこれら 全て重合体に取り込まれますので、ホルムアルデヒド単体として発生する事は ありません。実際の化学反応の工程において、若干のホルムアルデヒドの残存 も予想されますが、極微量であるため吸光光度法で分析しても、測定限界値以 下のため検出されませんでした。 実際に住宅を建て、屋内空気質を測定したところホルムアルデヒドは検出され ませんでした。 実際に化学薬品を極力使用しない他の建材と共に、グラスウールを断熱材とし て使用した住宅を建て、屋内空気質を測定したところホルムアルデヒドは検出 されませんでした。実験の方法は以下の条件で行いました。下記仕様の(a) 1階及び2階の天井懐部、(b)2階間仕切壁の内部、(c)小屋裏、の各空気中 のホルムアルデヒド濃度を測定した結果、0.01ppmまで測定可能な検知管でも ホルムアルデヒドは検出されませんでした」。

1-2 ロックウール  原料:玄武岩または鉄鋼スラグ、  形状:フェルト状、マット状、ボード状、 粒状・バラ綿  軽く、断熱性、防火・耐火性、吸音性、耐久性がある。けい酸分と酸化カルシ ウム分を主成分とした鉱物を溶かし、繊維状、綿状にしたものである。繊維は、 熱硬化性のバインダーによって調整され、一定の密度、厚さになってボード状、 フェルト状に形成される。日本でのシェアは少ないが、北欧ではRC造や基礎の 地中部分の外断熱にも使用され、木造建築でもグラスウールと同じくらいである。  断熱性能は、熱伝導率が0.039W/m・k(住宅金融公庫資料)で、高性能 グラスウール16Kとほぼ同等である。透湿係数が高いため、防湿層が必要である 。価格は100ミリ厚で約700円/平米前後と100ミリの高性能グラスウール 16Kと同じ価格帯になっている。健康や環境への負荷の点はグラスウールと同様 である。


 2.発泡系  2-1 発泡プラスチック系断熱材(石油製品)
 2-1-1 ポリスチレンフォーム(ビーズ法ポリスチレンフォーム)  原料:ポリスチレン樹脂、  発泡剤(ブタン、ペンタン)、 形状:ボード状  ポリスチレン樹脂を発泡剤や難燃剤を添加しビーズ状にしたものを、蒸気を使用 して発泡形成する。細かい独立気泡から構成されている。軽くて、耐水性があり、 緩衝性が高い断熱材である。建築に用いられるものは難燃剤を添加し、自己消化性 を持たせたものである。自己消化性とは、火元があれば燃え続けるが、火元が取り 除かれれば、それ自体で燃え続けるということがない性質のことである。商品とし ては、北海道で少量ながら使用されている、YBボードなどがある。  断熱性能は、熱伝導率が0.043〜0.034W/m・k(住宅金融公庫資料) で、押出発泡ポリスチレンのB類1種から2種とほぼ同等である。透湿係数が低い。 健康と環境に対しての問題点は、石油化学製品であり、発泡剤、難燃剤、樹脂モノ マー(モノマースチロール)の放散が問題になる。また火災や廃棄時にはスチロー ルガスが放出される。

 2-1-2 押出発泡ポリスチレン(押出法ポリスチレンフォーム)  原料:ポリスチレン樹脂、難燃剤。発泡剤(炭化水素またはフルオロカーボン)、  形状:ボード状硬質で、耐圧力があり、吸水・吸湿性、熱伝道性が小さい。ポリ スチレン樹脂と難燃材、発泡剤を混ぜ、発泡させながら押し出して成形して製品に する。独立した微細な気泡から構成される。ボード状の断熱材は、外貼り工法に良 く使用される。  高断熱として使用されるB類3種の断熱性能は公庫の資料で熱伝導率が0.02 8W/m・kと断熱性能が高く、透湿係数は低い。価格は50ミリ厚で約1,43 0円/平米前後と100ミリの高性能グラスウール16Kの約2倍である。基礎外 断熱に使用される場合は白蟻の被害があり、対策が必要である。  健康と環境に対しての問題点は、石油化学製品であり、発泡剤、難燃剤、樹脂モ ノマー(モノマースチロール)の放散が問題になる。火災や廃棄時にはスチロール ガスが放出され、環境や人体に負荷をかける。またリサイクルが困難である。発泡 剤がフロンなので、オゾン層が薄くなったり破壊され環境に負荷がかかる。近年、 オゾン破壊を考慮して特定フロンをしていないが、代わりの代替フロンは、地球の 温暖化では二酸化炭素の数千倍もの作用があるので環境への負荷は大きい。また一 次製造エネルギーは1立方メートル当たり400〜800KW・Hと大きい。
 2-1-3 硬質ウレタンフォーム  原料:ポリイソシアネート、ポリオール、発泡材(フルオロカーボン)、 形状 :ボード、現場発泡  ポリイソシアネートとポリオールを主原料に発泡剤、難燃剤、触媒などを加え反 応させ、ポリウレタン樹脂を生成し、それに 発泡剤を加えウレタンフォームをつ くる。ボード状のものと現場発泡のものがある。ボード状の断熱材は、外貼り工法 に良く使用される。  発泡材はフロンであり、オゾン層を薄くさせたり破壊し環境や人体に負荷が非常 に大きい。これまでオゾン層に守られていたのが、薄くなったり破壊されだオゾン 層から、生物が未経験の紫外線Bが地上に到達する。増大し始めた紫外線Bは遺伝 子を破壊し、皮膚ガンや白内障、免疫低下を引き起こす。また、農作物収穫低下や、 海ではプランクトンの減少を引き起こす。そうなると食物連鎖で魚が減少する。国 連や日本の環境庁によれば、オゾン層の濃度が1%減少すれば紫外線Bが2%と増 加し、遺伝子は3から6%損傷をうける。  断熱性能は、公庫の資料で熱伝導率が0.023〜0.025W/m・kと断熱 性能が高く、透湿係数が低い。価格は50ミリ厚で約1,820円/平米前後と1 00ミリの高性能グラスウール16Kの約2.6倍である。基礎外断熱に使用され る場合は白蟻の被害を受けやすく対策が必要である。難燃剤が含まれているので、 小さな火などでは着火しないが燃える性質がある。火気には十分注意し、溶接を付 近では行わない。事故が間々ある。  健康と環境に対しての問題点は、石油化学製品であり、発泡剤、難燃剤、樹脂モ ノマー(イソシアネート)の放散が問題になる。また、イソシアネートは強い毒性 があり、ポリウレタン樹脂の製造時や施工時にポリイソシアネートの蒸気などが発 生する。イソシアネートは燃焼すると青酸ガスが発生し、ウレタンフォーム自身も 燃えた場合、青酸ガスやリン酸化合物の有毒ガスを発生するので、火災や廃棄時は 環境や人体に負荷をかける。リサイクルが困難である。一次製造エネルギーは1立 方メートル当たり約900〜1400KW・Hと大きい。
 2-1-4 高発泡ポリエチレン  原料:ポリエチレン、発泡剤(アゾジカルボンタミド、揮発性発泡剤など)、形 状:ボード状  ポリエチレン樹脂に発泡剤を用い発泡させた断熱材で、特定フロンは使用されて いない。独立した非常に細かい気泡をもつ断熱材である。他の石油系の板状断熱材 よりは柔軟性に富み、根太、壁、柱、間柱の間に充填しやすい。透湿性は低いので 防湿層は必要ないが、気密層は必要であろう。商品名では、テレビの宣伝に登場す る「サニーライト」が良く知られている。一般用との他に、長尺折版屋根下地や配 管に使用されている。  断熱性能は、公庫の資料で熱伝導率が0.038〜0.042W/m・kと断熱 性能が高く、透湿係数が低い。価格は50ミリ厚で約1,720円/平米前後と1 00ミリの高性能グラスウール16Kの約2.5倍であり、ウレタンボードより若 干安い。  ポリエチレン自体には、発がん性の疑いがあるので、製造時の危険はあるが、断 熱材に成形された場合は、他のプラスチックより環境にやさしく、燃えた時の有害 性も低いとされている。石油系の発泡断熱材の中では、比較的健康と環境には負荷 が少ない方である。一次製造エネルギーは大きい。
 2-1-5 フェノールフォーム   原料:フェノール樹脂、発泡剤、硬化剤、 形状:ボード、金属板や石膏ボード などの複合パネル  フェノール樹脂を原料とし発泡剤と硬化剤などを加え、発泡、硬化させた板状な どの断熱材。独立した微細な気泡で構成されているため、長期安定した断熱性があ る。特に防火性に優れ、炎をあてても炭化するだけで煙や有毒ガスの発生がほとん どなく、不燃、準不燃材料の認定を得ている。主にRC造や鉄骨造の防火・耐火性 が要求される所に使用されたり、、住宅用の外壁の金属サイディングとの複合板に 使用されているが、住宅の断熱材として単独にはほとんど使用されていない。  断熱性能は、公庫の資料で熱伝導率が0.030〜0.036W/m・kと断熱 性能が高く、透湿係数が低い。価格は50ミリ厚で約6,000円/平米前後と1 00ミリの高性能グラスウール16Kの約8.5倍である。  フェノールは、皮膚に対する接触毒性があったり、蒸気吸入によって、中枢神経 症状(頭痛、めまい、嘔吐、耳鳴り、不眠)の慢性中毒になったり、咳、痰などの 上部気道刺激に関する症状をおこしたりする。アルデヒド類と結ばれてフェノール 樹脂になるが、ホルムアルデヒドと結ばれることが多く、ホルムアルデヒドが揮発 してくることがある。製造の過程では、製造者への健康負荷や、環境負荷がかかる。 施工時の切断加工時にはフォームの粉がでるため、襟首や袖口から粉が浸入しない ような服装をし、保護眼鏡及び防塵マスクをする必要がある。燃えにくく、発煙量 が少なく、燃焼時のガスの有毒性も低いので、燃焼時、廃棄時の環境負荷は低い断 熱材である。

 2-2 発泡無機質系断熱材  2-2-1 発泡ガラス  原料:ガラス(ケイ酸塩)、炭素、 形状:ボード  ガラスを炭素で発泡させたものである。かつては日本でも生産されていたが、現在 は輸入品のみである。燃えない、耐水性、耐薬品性、白蟻などの耐食害性があるので、 地下室の外断熱や基礎の外断熱に適している。また燃焼生成ガスの毒性は極めて少な い。  断熱性能は、熱伝導率が0.04〜0.06W/m・k、透湿係数は低い。価格は 100ミリ厚で約22,000円/平米前後と硬質ウレタンフォームの12倍、高性 能グラスウール16Kの約31倍であり高い。また一次製造エネルギーは1立方メー トル当たり約300〜1,000KW・Hと大きい。  健康や環境への負荷の点からみると、あまり問題はない。加工時に発泡されたガラ スの粒から、硫化水素ガスが発生するが、多くなく、また、切断する時にでる塵埃に は問題ない。原料はガラスなので、廃棄時はリサイクルできる。
 2-2-2 発泡炭化カルシウム断熱材  原料:炭酸カルシウム主原料、 形状:ボード  炭酸カルシウムを発泡させたものである。.完全独立気泡である。  燃えない、水に強い、薬品に強い、害虫に強い、腐らない、加工し易いなどの良い 点がある。また燃焼生成ガスの毒性は極めて少ない。吸水や吸湿はないので、どの構 造にも施工ができる。たとえば、土と直接、接する地下室の外断熱や基礎の断熱に適 している。  断熱性能は、熱伝導率が0.037W/m・kで、高性能グラスウール16Kとほ ぼ同等である。透湿係数は低い。価格は100ミリ厚で約11,000/平米前後と 硬質ウレタンフォームの6倍になり高い。健康や環境への負荷の点からみると、あま り問題はない。


今後の断熱材(自然系断熱材)
[1]負荷が少ない今後の断熱材  1.性能   住宅の温熱環境・断熱に関する性能は、環境に負荷をかけないのため省エネルギー、 二酸化炭素削減などますます求められる。断熱性能がたかい高断熱・高気密住宅は関 東以南では夏におバーヒートし暑く冷房にせざるえなく、省エネルギーにはならない と良く耳にするが、誤解されたり基本を忘れた高断熱・高気密住宅である。暑くなる のは日射を無警戒に室内に入れたり、通風・換気などの排熱を考慮しないからである。  夏の涼しさは日本の従来からの伝統、冬の暖かさは北国の新しい科学技術の蓄積の 高断熱・高気密の考え方のこの両者が融合され、省エネでエコロジーな住宅となる。 夏の涼しさを保つための伝統技術の日射遮蔽の土庇、長い庇、簾などが、現代の技術 の外付け遮光ブラインドや遮光ガラスに応用され、基礎外断熱では地面の冷地熱が利 用できる。高断熱・高気密住宅の夏の涼しさはすでに実践されている。  住宅の温熱環境・断熱に関する性能の重要な部分をしめる断熱材の性能としては、 断熱性の熱抵抗値(熱伝導率)、透湿抵抗値、熱容量(蓄熱量)、ヒート・リレーな どがあげられる。現状ではこの中で、断熱材の性能として熱抵抗値(熱伝導率)と結 露関係の透湿抵抗値が重要視されているが、次世代基準の登場により、断熱性の熱伝 導率の優れてものの使用、さらなる厚さの確保による熱抵抗値の向上が求められてい る。 しかし、断熱性能だけが注目されると、石油製品のEタイプの硬質ウレタンフォーム や押出法ポリスチレンフォーム3種が俄然有利になってしまうが、環境や人体に及ぼ す負荷をも考え合わせなければならない。
 2.健康、環境負荷   20年近く前に公衆衛生学な黴やダニによる喘息やアトピーがショッキングに報道 され、一挙に住宅からカーペットがなくなり床が木質フロアーになった。それ以来の 衝撃度で、環境臨床医学な、新建材からでてくるホルムアルデヒドなどの極微量の化 学物質に「ひと」が過度に異常に反応し、頭痛やめまいや微熱などをともなった慢性 疲労症候群がおこり健康を害している。化学物質の量が多くなるとアレルギー、それ より多くなると中毒になる。  今までの空気汚染の基準は中毒に対応したものだから、極微量な過敏症には全く当 てはまらない。過敏症の症状で身近なのは、新築時に窓を開けて換気していないと、 目がチカチカすることだ。さらに過敏な人は刺激痛がともない涙が止まらない。もっ と過敏な人は室内には居られない。今まではこの現象は新築時に当たり前に起こり、 刺激がなくなるまでの時間が解消してくれるものだとされていた。化学物質が考慮さ れていなかった新築時の内覧会では、3割ほどの人が何らかの反応を示し、2割程の 人は強く反応し、1割弱の人は刺激痛を感じいたたまれなかった。  この数年は化学物質過敏症ばかりでなく、97年の秋に「奪われし未来」が発売さ れてから、合成化学物質は環境ホルモンとして生物のホルモン機能を撹乱し、オスの メス化や人間の精子が半減している生命の衰退の危険性などの新たな問題が生じてき ている。環境ホルモンと住宅についての研究は化学過敏症に較べて少なく、資料も少 ない。私たちは居住空間の内外で微量な合成化学物質の環境ホルモンに身近に常時被 爆している。  一般的な建築材料は「地球環境や人体に負荷がある化学物質の建築材料」と「地球 環境や人体に負荷が少ない建築材料」とに分けられる。断熱材に関しても、施工の難 易度と精度、性能と価格ばかりでなく、生産エネルギー、消費量と生産量のバランス、 物流の生産国からの遠近、リサイクル、燃焼、廃棄、発ガン性、住まい手の体質など のエコロジー、バウビオロギーの問題や価格などの総合的な判断が必要である。それ ぞれの住まい手が体質や予算を考え、化学物質過敏症・環境ホルモンやアレルギー、 性能、価格など、どこに標準を定めるかが大切である。今までは断熱材を選ぶのに、 グラスウールとポリウレタンやポリスチレンではどちらが良いかなどと話題になって いたが、最近はこれらに加え、地球環境や人体に負荷が少ない炭化発泡コルクなどの 数種類の自然系断熱材の登場から、より複雑になってきた。  これからは、生産エネルギー、フロン使用、廃棄時処理などの環境への負荷の大き さや、環境ホルモン・化学物質過敏症の問題や火災や廃棄処分の燃焼時による人体へ 負荷の大きさから、価格が比較的高い押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフ ォームなどの石油製品の断熱材は順次、自然素材断熱材に置き換わっていくであろう。
 3.自然系断熱材の価格とアレルギー、化学物質過敏症の度合い  日本での何らかのアレルギーの人は35%(1992年厚生省「日常生活とアレル ギー様症状に関する報告」)いる。喘息やアトピーなどの人は10%程度、化学物質 過敏症の人は10%(北里大学石川哲教授)程度いるであろう。そうしたことから、 少なくても10%程度の人は、人体に負荷が少ない自然系断熱材などが必要であろう。  しかし、自然系断熱材は高断熱・高気密住宅ではコスト的に材料費のみで8万円弱 /坪のアップすることを覚悟しなければならない。内装材は直接的に室内にホルムア ルデヒドや揮発性有機化合物をだし室内汚染することから人体に負荷が少ない建築材 料の使用が必要だが、断熱材は壁体内に密閉され室内汚染が少ないことから、体質的 に問題がなく8万円弱/坪のコストアップに疑問をもつ人たちは現状の断熱材を十分 注意を払いながら使用することが必要である。  40坪ほどの高断熱・高気密の家(熱損失係数1.5以下)の断熱材の使用量は、 グラスウール(密度16kg細繊維)でおおよそ50立方m、金額で35万円(7, 000円/立方m)、ウレタンフォームでおおよそ25立方m、金額で100万円( 40,000円/立方m)もの大きな量を使用する。グラスウール(密度16kg細 繊維)の場合は壁が100mm、屋根が200mm、床が200mmとし、硬質ウレ タンフォームの場合は壁が50mm、屋根が100mm、床が100mmと計算した。  製造の一次エネルギー使用量については、おおよそ25立方mのポリウレタンやポ リスチレンを生産するのに一次資源の石油消費は1700リットルほど必要になる。 自然素材やリサイクル製品を使えば、一次資源の石油消費は170リットルで同じ効 果のある断熱材を入れられ、環境への負荷が10分に1に削減できる。  しかし、炭化発泡コルク、亜麻や大麻などの草茎セルロース繊維の自然系断熱材は、 断熱性能がグラスウール(密度16kg細繊維よりは若干弱く、密度16kg)と同 程度なので、厚さも使用量もほぼ同じだが、価格は10倍ほどの350万円になる。 断熱材の材料費だけで9万円弱/坪になり、グラスウールに較べて8万円弱/坪のコ ストアップになる。  生産現地ではそれほど高い材料ではないだろうが、炭化発泡コルクやフラックスハ ウス(亜麻繊維)などの断熱材はポルトガルやドイツから空気を運ぶようなものだか ら、運賃や利益や税関など含んだ物流コストに食われてしまう。これは住宅建築のコ ストに決定的に響いてくる。高断熱・高気密・全室暖房・計画換気住宅で普通の在来 工法の5万円/坪アップになり、内装材、外装材、断熱材に人体に負荷が少ない建材 を使用すると、20万円/坪から25万円/坪ほどのアップになる。こうした高価な 健康住宅に住める人はどれほどいようか。  住宅産業領域の努力によるコストダウンといっても限界があるだろう。日本では住 宅を、個人資本としかみれなく、個人で処理されるものと考えられている。しかし、 この様に良質な住宅を考えた場合、個人の経済力を超えている。個人の経済力以内で 住宅生産を考えている限り、いつまでも安かろう悪かろうの住宅である。国や社会全 体が、住宅と健康と、健康住宅のコストと生産を考えた場合は、住宅を社会資本とし て長期に考えなければならない。  スエーデンでの住宅価格はほぼ日本と同様に高いが、住宅の寿命が長いことから5 0年等の支払い年月が長く月々の支払いが少なく負担が軽いこと、ローン支払い中の 税金の控除が大きく(殆どが共働きであるが、夫婦の一人分の収入ほどの税金が控除 される。)、それを支払いに当てられることから、総合的に住宅取得の負担が少ない。 50年の長期支払いとなると一代ではできないが、支払いを引き継ぐ人が子供でなく ても良く、また未定でも良い。  これは、この住宅を次に中古として取得した人が、支払いを引き継ぐことによる。 こうしたことができるのは、日本人が車を休日に丹念に磨き上げ、中古として下取り のさい高く売れる以上に、塗装などまめに塗ったりのメンテナンスがすこぶる良好で ある。  さらに、緑豊かな庭をもった住宅は、財産として不動産評価額が下がらないからで ある。住宅の耐用年数が50年以上と考えられている。一つ一つの材料や部材が良質 で丈夫に考えられ、日本の新建材のように新築時に最高に綺麗で、10年もすると下 地が現れてくるような考え方はない。 基本的に標準化された計画的生産企画型の良 質な建て売り住宅であり、上下水はもちろんのこと景観や環境共生などが考慮された 良質な地域計画された敷地に建っている。  コストからか、断熱の考え方が少ないのか、自然素材使用の住宅を見ると炭化発泡 コルクの厚さが25mmや50mmのものが多い。金額にして、25mmでは8.7 5立方m使用の約60万円、50mmでは1.5立方m使用の約120万円になる。 50mmの厚さならウレタンの2割アップ程度のコストに下がり使いやすいが、断熱 性能としては16kgのグラスウールの50mm程度であり、高断熱・高気密とは言 いがたい。エコロジー建築家相良昭典のいうところの高断熱・中気密の高断熱まで至 っていない。  これでは関東地域でも熱損失が大きく、材料はエコロジー・バウビオロギーであっ ても、住宅全体としてエコロジー・バウビオロギー住宅になっていない。この程度の 断熱性能では、北海道、東北の室内の温熱環境としては15度以上の大きな温度差が あり、体の血圧などを考えると健康住宅でない。自然素材断熱材は吸放湿性が大きい から、そこでの結露は無いかもしれないが、室温が下がる箇所の窓のガラス面や壁面 では表面結露が発生し、黴やダニが発生する。こうしたことを考えると、関東以南で あっても、厚さが100mmは少なくても欲しい。自然素材断熱材を約35立方m使 用し、材のみのコストは250万円である。工賃は約40万円であり、材工共で30 0円弱になろう。  地球環境や人体に負荷の少ない自然系断熱材を使用したいところだが、上述したよ うにかなり価格が高価なことから、化学物質過敏症やアレルギーにフリーな65%程 度の家族は、情報に過敏になりすぎ、全体的なコストを無視すると、体の健康のため 健康住宅に住むのに無理な借入をし、体の健康どころではなくなる。約10%の化学 物質過敏症と喘息やアトピーをもった家族は個別に専門家との対話により健康住宅の 品質を予算と共に考えざる得ない。  ドイツのように、日本の自国で亜麻や大麻を栽培し、その植物繊維からフラックス ハウスやハンフのような人間に負荷が少ない自然系断熱材ができればよいが、その方 向に向いたとしたもまだまだ随分と時間がかかろう。フラックスハウスやハンフを参 考にして、晩秋に燃やされて公害になる稲藁を利用できないものか。現在の日本の生 産システムで比較的スムーズに行けそうなのは、軽量軟質繊維板である。現状で最も 軽い軟質繊維板は畳の心材に使用されているもので比重が0.24ていどである。ド イツのように比重を0.15まで下げると10kgのグラスウール程度の断熱性能が もてる。糊は天然スターチ糊で、ノンホルマリンの断熱材ある。金額にしてグラスウ ールの約4.5倍、硬質ウレタンフォームの約1.5倍で金額にしたら160万円の 材料費がかかる。これならいけそうである。  今後の問題としても、自然系の植物繊のフラックスハウスやハンフの供給量は確保 できるのであろうか。なにしろ、40坪ほどの高断熱・高気密の家の断熱材の使用量 はグラスウール換算ででおおよそ50立方m、家1件分のフラックス繊維断熱材をつ くるのに、28ヘクタールの広大な畑が必要であるとドイツで聞いた。28ヘクター ルは約280,000平米、530メートル四方、約280反、約8500坪であり、 50坪の敷地に換算すると、170件分の敷地である。こうした広大な農地で有機・ 低農薬で農作物栽培ができるとは、すごい国である。日本の現状ではできないだろう な。エコロジー、健康素材といっても、日本の場合はここに問題がある。日本の新築 着工数の約10%の12万戸にフラックス繊維断熱材を使用すると、3.3万平方キ ロメーターの面積の亜麻畑が必要であり、東京都の面積の16.5倍、北海道のほぼ 半分(42%)くらいの面積に相当する。こうした広さの栽培面積は日本ではあり得 ない。逆に、地球や地域の環境共生を考えると、日本の住宅着工数が異常に多いのか も知れない。
 4.次世代基準をどう考えるか (自然系断熱材への移行を前提に)  省エネルギー、二酸化炭素削減のための高断熱・高気密を考えると、今回の次世代 基準の断熱の性能は順当と思われる。しかし、Ł地区以南の気密の隙間相当面積の5 平方cm/平方mは性能が低く思われ、風圧の影響を考えて2平方cm/平方m以上 の性能は欲しい。日射遮蔽はŁ、Ľ地区以南ではすこぶる弱い。高断熱・高気密化す ればするほど夏期の日射遮蔽による省エネルギーが必要である。日射遮蔽は室内側で の処理では効果が少なく、庇だけではなく、外付けブラインドなどの確実な日射遮蔽 部品が必需品である。  断熱材では次世代基準は従来のĄ、˘地区にとってはそれほど驚く仕様ではないの だが、従来のĽ地区以南が断熱材のCクラス(熱伝導率0.04〜0.035W/m ・K、高性能グラスウールなど)で屋根が185ミリ、壁が90とは大きな変化であ る。壁の中や天井に目一杯断熱材を充填するのは50ミリ断熱材をすかすかにいれる ことと意味合いがことなる。壁の100ミリ充填は結露対策を考えなければならない。 断熱欠損、防湿、透湿、気密を総合的に考えなければ、内部結露がおこる。結露した 壁の中では木材が腐朽し建築の寿命を著しく損ない、カビやダニの発生は人の健康を 損なう。
 5.公庫融資と自然系断熱材  次世代基準によって断熱仕様が強化され、住宅金融公庫などと連動し融資金額が2 50万円に増えたのは、大幅コストアップになる自然系断熱材には有り難い。しかも、 高断熱・高気密施工に慣れていない工務店にとっては、100ミリ充填による結露の 恐れが、吸放湿が豊かな自然系断熱材ではリスクが少なく有利である。断熱材は熱伝 導率によってクラス分けされるが、自然系断熱材はセルローズファイバー、軽量軟質 木質繊維板の一部、フラックス繊維、セルロースウール、ウールなどのCクラスとコ コヤシ繊維、ハンフ繊維などのBクラス(0.045〜0.041W/m・K)であ り、充填断熱工法の場合はコスト以外に問題はない。  しかし、板状で施工が楽な外張断熱工法にむく炭化コルクは熱伝導率が0.045 W/m・KのBクラスで、厚さがŁ、Ľ地区以南で壁が80ミリ、屋根・天井が18 0ミリで施工が困難であ不利になる。Ą地区では厚さが壁が135ミリ、屋根・天井 が260ミリ必要でありさらに施工が困難である。今までは、Eクラスのウレタンボ ード50ミリの厚さの外張断熱工法の施工が楽であったが、次世代基準では、Ł、Ľ 地区以南でも天井・屋根が115ミリと厚くなりコストアップと施工が困難になる。
 [2]自然系断熱材の種類とその評価  1.木質系繊維断熱材  1-1 吹き込みセルロースファイバー  原料パルプ、新聞故紙、接着剤、ホウ酸、  形状:綿状(吹き込み、吹き付け)  循環型(リサイクル)エコロジー断熱材。古新聞を粉砕し、綿状にする。リサイク ル製品なのでエコロジカルである。また、グラスウール以上に吸音性も高い断熱材で ある。施工は吹き込みの専門業者による。施工時には防塵マスクが必要である。  難燃剤と防虫(虫の忌避性)にホウ酸が使われている。日本のセルロースファイバ ーにホウ酸はどのくらい含まれているかわからないが、ドイツのエコテストによると 15%から20%のホウ酸が含まれている。ドイツには印刷されていないリサイクル 紙からのセルローズを原料にしているものがあるが、新聞紙に印刷されているインク の揮発性有機化合物が気になるところだ。揮発性有機化合物は化学物質過敏症、環境 ホルモンの弊害、アレルギーなどを引き起こす。  しかし、ドイツのエコテスト社出版の「エコロジーハウス」の厳しい「エコテスト」 では「推奨品」にあげられている。インクの揮発性有機化合物が含まれているマイナ スポイントがあっても、住宅の完成時には壁体内に密封されることなど、それらを超 えての低負荷や多量な生産性などが総合評価されているのだろう。「推奨品」にあげ られている28品目の内、セルロースファイバーは9品目がはいり、軽量軟質木質繊 維ボードの10品目についでの2番目である。  水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿が良いので、防湿シートがなくても冬期の結 露に安全な方向であり、なおかつ夏期の逆転現象結露にも有利である。防湿シートが なくても、結露の心配が少なければ、施工の注意点は気密施工の精度だけであり、施 工が合理化でき随分と楽になる。木造の公共建築の高断熱化・高気密化をはかるとき は、施工精度が気になるところだが、防湿シートが雑になっても結露の危険度が少な いセルロースファイバーが安心である。逆に気になるのは、壁の中に充填後に自らの 重量に沈下しないかということがある。その部分が断熱欠損となり結露してしまう。 沈下対策として接着剤入りの吹き込み工法があるが、この接着剤の成分は何であろう か。接着剤がないものは、施工中に埃が浮遊し喉がムズムズし、接着剤が入っている ものはあちこちに飛散し、後始末が難儀である。  価格は材工共なので、他の断熱材と比較することが難しいが、高性能グラスウール の材料費と施工費を強引に計算してみると、高性能グラスウールの材工共の2倍弱で ある。今までは、グラスウールと較べて高いというイメージがあるが、低負荷の断熱 材が望まれているなかで、自然系素材の断熱材では極めてローコストである。日本で の実績も長いし、もっと評価され使用されて良い断熱材である。  また一次製造エネルギーは1立方メートル当たり約14KW・Hで、石油合成化学 物質断熱材のウレタンボードの約1,585KW・H、ポリスチレンボードの約69 5KW・Hとは較べものにならないほどはるかに少ない。他の自然素材断熱材のフラ ックス繊維の50KW・Hと較べても3割弱と小さい。  断熱性能は、熱伝導率が公庫の資料では0.039W/m・k、ドイツのエコテス トでは0.040W/m・k。高性能グラスウール16Kと較べると若干少ない。高 性能グラスウール16Kは0.038W/m・k、硬質ウレタンフォームが0.23 〜0.26W/m・kある。  ホウ酸  セルロースファイバーやフラックス繊維などの自然素材の断熱材に防火効果や防虫 効果の添加物として使用されているホウ酸について、他の資料から引用する。  アル・クルーガー著のエコホーム用品辞典(産調出版、1998年1月20日出版 )には「ホウ酸:ホウ酸ナトリウム、通称ホウ酸は自然発生する有機塩で、精製され た白色の粉として薬局で手に入れることができる。その特徴として、磨いたり、漂白 したり、消臭する働きを持っている。あるアメリカの病院でテストしたところ、優れ た殺菌剤としての条件を満たしたということである。ホウ酸は家庭用品のなかで一番 応用範囲の広い商品といえる。たとえば、化学物質がベースの漂白剤、研磨剤、殺菌 剤、染み抜きなどの代わり安心して使用することができる。また、ごみ箱の悪臭を取 り除くこともできる。家庭用洗剤として、濡らした布に振りかけたり、水に溶いたり して使える。すすぎも簡単だ。ホウ酸の入ったプレーンな石鹸は、手洗いを必要とす る生地の洗濯に適している。  ホウ酸の他の主な使い道をしては、殺虫剤や防かび剤の代わりになる。地下室など カビの生える恐れのある湿った場所に、ホウ酸を撒いてみてください。また、砂糖と まぜると蟻駆除剤として効果がある。ホウ酸は毒性のある木材防腐剤の代替品にもな る。木材にほう酸を滲み込ませると、カビや木喰い虫をよせつけなくなる。ホウ酸入 りの木材処理剤は商品化されており、これが入手できないときは、パウダー状のホウ 酸を買ってきて、木材や家具のパーツに処理してみてください。  傷のない皮膚にほう酸が触れても問題はないが、皮膚が敏感な方には手袋着用を奨 めます。飲み込んだ場合は、毒性があるので、子供やペットの手の届かない場所に保 管してください。」、「ホウ酸化合物:ホウ酸と同じグループに属するこれらの化合 物は、防かび剤や殺虫剤として一般に用いられている。水溶性の丸薬の形で製造され たホウ酸は、ドリルで開けた穴に差し込んでおくと、湿気による腐敗を防ぐ。この方 法は、窓枠や屋外の木工品に適用できる。ロンドン事故センターによると、ホウ酸は 現在入手できる安全基準を満たす数少ない木材処理剤のひとつであると言うことだ。 もちろん、蝙蝠(コウモリ)にもやさしい物質といえる。この丸薬状のホウ酸は、子 供が食べたがるので(その形から)、保管場所に充分注意が必要だ。」とある。  要点をあげると、「ロンドン事故センターによると、ホウ酸は現在入手できる安全 基準を満たす数少ない木材処理剤のひとつであると言うことだ。ホウ酸は毒性のある 木材防腐剤の代替品にもなる。ホウ酸入りの木材処理剤は商品化されいる。」になる。 ところが「飲み込んだ場合は、毒性があるので、子供やペットの手の届かない場所に 保管してください。」ともある。こうした飲み込んだ時の毒性の度合いが気になる。 「ゴキブリほいほい」などのゴキブリ駆除剤にもホウ酸は入っている。人類が滅んで も、ネズミとゴキブリは生き残るといわれているゴキブリでも駆除されることは気に なる。ホウ酸は防火効果や防虫効果として断熱材に含まれるが、壁の中に閉じこめら れると、子供の口に入ることはないからこの点は大丈夫だろう。廃棄時やリサイクル 時ではどの程度なのだろうか。直接に口に入れなくても、空気中に浮遊したものが口 に入ることもある。ここまで心配するのであれば使用しない方が良い。「蝙蝠(コウ モリ)にもやさしい物質といえる。」とあるのは唐突な気がするが、ロンドンではめ っきりコウモリが減り、殺虫剤の弊害を問う自然保護運動からきているのだろう。日 本でも、黄昏時にコウモリが滑空している姿やツバメが見れなくなってから随分と久 しい。  低負荷塗料として実績があるリボスにホウ酸ナトリウムが構成材料の木材防腐(防 虫・防黴)剤アンドラ255がある。リボス社の製品に滅多なことはないだろうし、 厳しいエコテストでもホウ酸が含まれているセルロースファイバーやフラックス繊維 などが「推奨品」としてあげられていることから、現状レベルでは安全性が高い方の 断熱材にあげられる。
 1-2 軽量軟質木質繊維ボード  原料:木質繊維、  形状:ボード  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。ドイツやスイスではこれから のエコな断熱材の主流として期待されている。日本でもこれからのエコな断熱材の主 流として期待されている。膨大な量の植林と伐採のサイクルが考えられた木材、木材 産業からの廃材やリサイクルされた木質繊維から大量に生産されるからだ。自国の木 材であれば最良である。他の自然系のエコな断熱材は生産量が限られるのが欠点であ る。廃棄処分もリサイクルでき、腐朽によって土に帰るなどにより地球に負荷が少な い。もちろん人体にも負荷が少ない。施工時には簡便な防塵対策が必要とされる。  98年のフライブルクでのエコメッセでも展示されている数が多く、実際のモデル で外断熱や内断熱の種々な施工方法が展示されていた。フライブルクから南へ1時間 ほどのスタウフェンのエコショップでは出荷待ちの軽量軟質木質繊維ボード断熱材が 山のごとく積まれていた。  軽量軟質木質繊維ボードは日本ではまだ、流通と常時生産がなされていないが、軟 質繊維ボードをもっと軽くして断熱材の効果をもたせたものである。軟質繊維ボード は床下地のビルボード、外壁下地のアセダス、畳床などのA級インシュレーションフ ァイバーボードである。A級インシュレーションファイバーボードのなかでも、最も 比重の軽い畳床の軟質繊維ボードで比重は0.25前後なのだが、断熱材になるドイ ツの軽量軟質木質繊維ボードの比重は0.16前後である。  断熱性能は、吹き込みセルロースファイバーと同等である。高性能グラスウール1 6Kと較べると若干少ない。公庫の資料では吹き込みセルロースファイバーの熱伝導 率が0.039W/m・k、高性能グラスウール16Kは0.038W/m・k、硬 質ウレタンフォームが0.23〜0.26W/m・kある。現状の軟質木質繊維ボー ドのタタミボードであっても、熱伝導率が0.045W/m・kとグラスウール16 Kと同様な断熱性能があり、以外な性能の良さに認識を改めなければならない。また、 セルロースファイバーと同様に水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿が良いので、防 湿シートがなくても冬期の結露に安全な方向であり、なおかつ夏期の逆転現象結露に も有利である。防湿シートがなくても、結露の心配が少なければ、施工の注意点は気 密施工の精度だけであり、施工が合理化でき随分と楽になる。  ドイツと同様な軽量軟質木質繊維ボードは、日本の軟質繊維ボードの現状の生産ラ インでも生産できる。これからの主流として期待されているエコな断熱材を、そんな に負担なく生産でき心強い。早速、西方設計と新秋木と秋田県立農業短大付属木材高 度加工研究所とで軽量軟質木質繊維ボードをつくってみた。接着剤はコーンスターチ (トウモロコシの澱粉糊)なのでホルムアルデヒドは含まれていない。後は実際に住 宅に使用するだけである。自然系断熱材を大量に生産できる良さはあるが、軟質繊維 ボードの生産ラインは百億以上のの大きなプラントであり、地域単位の小さな企業で は設備投資ができないのが残念である。自然系断熱材の良さは、小資本の地域企業が 生産でき、エコ産業として育つことも大きなメリットであることから、少ない設備投 資のプラントの開発も同時に必要である。  また一次製造エネルギーは1立方メートル当たり約560KW・Hで、石油合成化 学物質断熱材のウレタンボードの約1,585KW・Hと較べて35%。ポリスチレ ンボードの約695KW・Hと較べて80%と少ないが、他の自然素材断熱材のフラ ックス繊維の50KW・Hと較べては11倍と大きく、マイナスポイントになる。し かし、エコロジー・バウビオロギーの総合評価ではトップクラスである。総合評価に 価格と多量な生産性のポイントを加味したらトップである。エコテスト社出版の「エ コロジーハウス」の「エコテスト」では「推奨品」にあげられている。「推奨品」に あげられている28品目の内、軽量軟質木質繊維は10品目がはいっていて、セルロ ースファイバー9品目を超え1位である。これを見ても、現状のドイツで低負荷断熱 材として評価されていること、今後の普及が望まれていることが知れる。  価格は断熱性能で同じ程度の仕様であれば、グラスウールと較べると3倍から3. 5倍するが、ウレタンボードの50ミリの厚さにおおよそ対応する軽量軟質木質繊維 ボードの80ミリの厚さで、予想価格はほぼ同じ価格である。80ミリの厚さで2, 200円/平米、100ミリの厚さで2,900円/平米になろう。量産されると、 もっとコストダウンする。ドイツでは100ミリの厚さで2,600円前後である。 今後はウレタンボードやポリスチレンボードの強敵になるであろう。まだまだ高価な 自然系断熱材と較べると、日本で出回っている輸入されている自然系断熱材のほぼ1 /3前後のローコストな自然系断熱材である。そんなことから、これからのエコな断 熱材の主流として期待されているのだ。関東以南の山間地を除いて、床、壁、天井・ 屋根は、軽量軟質木質繊維ボードの80ミリから100ミリの厚さで十分である。  1-3 炭化発泡コルク  原料:コルク、  形状:ボード、粒  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。日本でも使用され初めてきた。 コルクの90%がポルトガル産。コルク樫の皮から粉砕し、炭化発泡させて作った断 熱材。水分には強く、腐りにくく、遮音性能、防振効果もある。   コルクの樹皮の樹齢は25年ぐらいになると採集される。初めて剥いだ樹皮はバ ージンコルクといって良質なものではない。それから9年ごとに樹齢100年くらい まで樹皮を剥いでいき、その後のコルク樫の木は燃料などになる。バージンコルクは コルクタイルなどの建材に、良質のコルクからはワインの栓がつくられる。バージン コルクやワインや瓶の栓を抜いた後のものや屑コルクを粉砕し、粒の大きさを分別す る。それをプレス機で圧力をかけながら350度から360度の蒸気を20分かけ、 高温の蒸気で炭化させる。コルクは熱せられると、樹脂をだし自己接着されながら3 割ほど膨張する。  ヨーロッパの国々の場合は近場であるが、日本で使う場合、物流、商流が著しく長 くなる。  廃棄時は土に帰る。ボード状のものは、ウレタンボードやスチレンボードと同様に 外断熱の施工に向いている。粒状のものは、壁体内に十分に充填するのは困難である。 振動などで沈下し、断熱欠損が生じる。天井に敷き詰めるのは施工しやすい。  断熱性能は熱伝導率が0.045W/m・kで、グラスウール16Kと同等である。 また、セルロースファイバーと同様に水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿が良いの で、防湿シートがなくても冬期の結露に安全な方向であり、なおかつ夏期の逆転現象 結露にも有利である。防湿シートがなくても、結露の心配が少なければ、施工の注意 点は気密施工の精度だけであり、施工が合理化でき随分と楽になる。  関東以南の山間地を除いても、床、壁、天井・屋根は、熱伝導率が0.045W/ m・kなので、100ミリの厚さでは、二酸化炭素削減、省エネルギー、良質な室内 気候の維持には多少心許ない。自然系住宅を唱える住宅で、東北で50ミリの厚さ、 関東以南で25ミリの厚さが多数見受けられるが、エコロジー・バウビオロギー建築 というには弱いのではなかろうか。  単価は100ミリ厚で約7,500円/平米前後。100ミリの高性能グラスウー ル16Kの約10倍、50ミリのウレタンボードの約3.5倍とかなり高価である。 単価の割にかさが大きい断熱材を輸入すると、空気を運ぶようなものだから、物流や 商流でどうしても高くなる。  添加物はなく、炭化コルクのなかに虫の忌避成分があり防虫効果を自ら含んでいる。 ドイツのエコテスト社出版の「エコロジーハウス」の「エコテスト」では「推奨品」 にあげられている。
 1-4 セルロースウール  原料:セルロース繊維(パイン材木質繊維)、  形状:マット  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。フィンランドから日本に輸入 されている。断熱性能は熱伝導率が0.038W/m・kで、高性能グラスウール2 4K(0.036)よりは若干弱いが、グラスウール32K(0.037)とほぼ同 等である。また、セルロースファイバーと同様に水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放 湿が良いので、防湿シートがなくても冬期の結露に安全な方向であり、なおかつ夏期 の逆転現象結露にも有利である。防湿シートがなくても、結露の心配が少なければ、 施工の注意点は気密施工の精度だけであり、施工が合理化でき随分と楽になる。  パイン材の原木は根本に近い主要な部分はログハウスや家具の材料となる。切り落 とされた部分や枝等の残った部分から抽出した繊維を均一なシート状に形成する。そ のシートを数十層に積層し、両端部をバインダーと呼ばれる同一質のシートでとじ切 断したもの。廃棄時は土に帰り、製造過程でも汚染の少ない燃料を使用している。  価格は100ミリ厚で約4500円/平米、100ミリの高性能グラスウール16 Kの約7倍、50ミリのウレタンボードの約2.5倍強と高価である。関東以南の山 間地を除いて、床、壁、天井・屋根は、100ミリの厚さで十分である。単価の割に かさが大きい断熱材を輸入すると、空気を運ぶようなものだから、物流や商流でどう しても高くなる。
 1-5 ココヤシ繊維  原料:ココヤシ繊維、  形状:マット、ボード  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。ドイツでも原料輸入しなけれ ばならない。日本に輸入されている。断熱性能は熱伝導率が0.045W/m・k、 水蒸気の吸放湿は良い。添加剤は防炎剤が7%含まれている。「エコテスト」では「 推奨品」にあげられている。価格はドイツで100ミリ厚で約2,100円/平米、 フラックスハウスより約1割安い。
 1-6 綿状木質繊維  原料:木質繊維、  形状:ボード  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。施工時に防塵マスクが必要と される。添加物は燐酸アンモニウム又は硫酸アンモニウム。断熱性能は熱伝導率が0 .045W/m・k、水蒸気の保湿・吸放湿は良い。「エコテスト」では「推奨品」 にあげられている。ドイツでの価格は200ミリの厚さで材工共2,250円/平米、 材のみで900円/平米と極めて低価格である。  おそらく、製造プラントは小さなもので、木材加工業や林業のエコ地域産業起こし が可能ではなかろうか。ドイツの製造プラントを見てみたいものだ。
 1-7 セルロースファイバーマット  原料:木質繊維、  形状:ボード  循環型(リサイクル)エコロジー断熱材。

 2  植物草茎系繊維断熱材  2-1 フラックス繊維   原料:亜麻繊維、  形状:マット、ボード  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。麻の品種の一つで、亜麻油を とる亜麻草の草茎から繊維をとる。亜麻草は5,000年前から、日常生活の色々な 製品に使われてきた。リネンは布に、種は栄養植物に、また種からとれる亜麻油は自 然塗料や自然化粧品に使われてきた。亜麻の草丈は1.2メートル前後で、可憐な花 をさかせ、1年で収穫できる。亜麻畑のイメージは北海道の富良野の広々とした丘陵 地帯の麦畑のようである。北海道でも亜麻は栽培されている。亜麻草茎を乾燥させた 後、機械加工でほぐし、草茎の短繊維を機械的に長い繊維にしフェルト化される。接 着剤はポテトスターチ(じゃがいも澱粉糊)の自然系接着剤なのでホルムアルデヒド は含まれていない。防虫性(忌避性)や難燃性のためにほう酸塩が含まれている。ほ う酸塩が、害虫や黴菌類から守り、蛾・蟻からは亜麻繊維自体が守る特性を有してい る。高度な吸湿性材料である。  ドイツではフラックス繊維はエコメッセに展示されたりエコショップで販売されて いる。日本では、自然系塗料のリボスを輸入しているイケダコーポレーションがフラ ックス繊維の商品名「フラックスハウス」を輸入しようとしている。イケダコーポレ ーションの説明書には「フラックスハウスは、省エネ建築技術にぴったりです。省エ ネ+エコロジーの三大要素土に帰る、安全環境、必要性能をすべて満たしています。 空気・風・フラックスハウスの組み合わせは、理想的なエコロジー性を提供し、完全 なるバウビオロギー住宅を可能とします。断熱材としてのフラックスハウスそのもの が、石油製品でないので、二酸化炭素削減に大きく貢献しているといえます。また亜 麻の成長中に亜麻が二酸化炭素を酸素還元する植物です。断熱材生産の為の消費エネ ルギーも非常に少なく、原料・素材・生産・効果・還元全てにエコロジーです。」と うたわれている。フラックスハウスの添加物はじゃがいも澱粉糊が10%、ほう酸塩 が10%含まれている。ポリエステルやポリエチレン繊維が入っているものもあり、 1割ほど安い。  1次製造エネルギーは1立方メートル当たり約50KW・Hで、石油合成化学物質 断熱材のウレタンボードの約1,585KW・Hと較べて3%。ポリスチレンボード の約695KW・Hと較べて7%とはるかに少ない。エコテスト社出版の「エコロジ ーハウス」の「エコテスト」では「推奨品」にあげられている。ポリエステルやポリ エチレン繊維が入っているものは「準推奨品」にあげられている。  断熱性能は熱伝導率が0.040W/m・kで、高性能グラスウール16Kと較べ ると若干少ないが、吹き込みセルロースファイバーと同等である。公庫の資料では吹 き込みセルロースファイバーの熱伝導率が0.039W/m・kになっている。また、 セルロースファイバーと同様に水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿が良いので、防 湿シートがなくても冬期の結露に安全な方向であり、なおかつ夏期の逆転現象結露に も有利である。防湿シートがなくても、結露の心配が少なければ、施工の注意点は気 密施工の精度だけであり、施工が合理化でき随分と楽になる。関東以南の山間地を除 いて、床、壁、天井・屋根は、100ミリの厚さで十分である。東北や関東以南の山 間地でより以上の性能を望む場合は、内断熱としてフラックス繊維マットを壁体内に 充填し、軽量軟質木質繊維ボードを付加断熱として外断熱する事が考えられる。  価格は現段階では、コンテナ単位での販売であり、港渡しで50,000万円/立 米である。内訳書に入れる単価は100ミリ厚で約7,500円/平米前後になろう。 100ミリの高性能グラスウール16Kの約10倍、50ミリのウレタンボードの約 3.5倍とかなり高価である。ドイツでは100ミリで2,500円程度であり、グ ラスウールの3.5倍なのだが、日本にもってくるとグラスウールの約10倍になっ てしまう。単価の割にかさが大きい断熱材を輸入すると、空気を運ぶようなものだか ら、物流や商流でどうしても高くなる。
 2-2 ハンフ繊維     原料:大麻繊維、  形状:マット、ボード  循環型(成長資源・リサイクル)エコロジー断熱材。ハンフ繊維は、麻の品種の一 つの大麻草の草茎から繊維を取り出しマット状の断熱材にしたもの。大麻は古くから 中国が発明した紙の原料に使用されたり、多種多様な使われ方がなされてきた。また 麻薬(マリファナ)がとれる。ヨーロッパでは品種改良により、麻薬成分の少ない工 業用大麻が生産され、エコロジーな素材として種々に使用されている。フラックス繊 維断熱材と同様に使用されるが、価格はドイツで100ミリ厚で約1,750円/平 米、フラックス繊維より2.5割程度安い。  断熱性能は熱伝導率が0.045W/m・k、水蒸気の吸放湿は良い。「エコテス ト」では「低推奨品」にあげられ、自然系素材の断熱材なのに評価が以外と低いのは、 添加物としてポリエステル繊維15%、防炎材が6%含まれているからか。
 2-3 コットン  原料:綿、  形状:マット、バラ綿状  断熱性能は熱伝導率が0.040W/m・k、水蒸気の保湿・吸放湿は良い。「エ コテスト」では「準推奨品」にあげられている。「原料栽培に問題あり」と記述され ているのは、農薬や化学肥料、搾取型のプランテーション農業によるのだろうか。
 3 ウール  原料:羊毛、  形状:マット、バラ綿状  ドイツでも原料輸入しなければならない。断熱性能は熱伝導率が0.040W/m ・k、水蒸気の吸放湿は良い。添加剤はホウ酸塩又ホウ酸含まれ、ポリエステル繊維 が含まれているものもある。「エコテスト」では「準推奨品」にあげられている。価 格はドイツで100ミリ厚で約1,800円/平米、フラックス繊維より2割程度安 い。しかし、100ミリ断熱の家1件で何頭の羊がいるのであろうか。羊に食べられ る牧草地の広さも随分と必要なのだろう。広大牧草地を確保するための森林破壊、農 薬や化学肥料の使用などによって評価が下がっているのだろうか。
 4 発泡ガラス  原料:ガラス(ケイ酸塩)、炭素、 形状:ボード  ガラスを炭素で発泡させたものである。かつては日本でも生産されていたが、現在 は輸入品のみである。燃えない、耐水性、耐薬品性、白蟻などの耐食害性があるので、 地下室の外断熱や基礎の外断熱に適している。また燃焼生成ガスの毒性は極めて少な い。  断熱性能は、熱伝導率が0.04〜0.06W/m・k、透湿係数は低い。価格は 100ミリ厚で約22,000円/平米前後と硬質ウレタンフォームの12倍、高性 能グラスウール16Kの約31倍であり高い。また一次製造エネルギーは1立方メー トル当たり約300〜1,000KW・Hと大きい。  健康や環境への負荷の点からみると、あまり問題はない。加工時に発泡されたガラ スの粒から、硫化水素ガスが発生するが、多くなく、また、切断する時にでる塵埃に は問題ない。原料はガラスなので、廃棄時はリサイクルできる。