8.スイス、ドイツの実状

 1.スイスのエコ断熱材
 自然系断熱材のなかで多く使われ実績のあるのはセルロースファイバーである。
次に実績があるのは軽量軟質木質繊維板であり、自然循環システム内で再生できる
豊富な木材を素材にし、これからの主流になる自然系断熱材とされている。他には
使用量が少ないながら炭化発泡コルク、発泡ガラス、フラックス繊維(亜麻繊維)、
ハンフ繊維(大麻繊維)、ココヤシ繊維、ウール、コットンなどが使用され、これ
からさらに普及が望まれる自然系断熱材である。また、スイスでは発泡パーライト
の使用例がしばしば見受けられ、自然系断熱材のなかで普及率が大きい。

 € 彼らが使う断熱工法と断熱グレード
 ・木造外壁(充填断熱+付加断熱工法)
 構造体内に充填しさらに外側に付加断熱することが多く、断熱材の厚さは200
ミリ前後から280ミリ前後である。充填部分の断熱材はセルロースファイバーな
どの吹き込みの物、フラックス繊維などのマット状の物、軽量軟質木質繊維板など
の板状の物、発泡パーライトなどの粒状のものである。付加断熱は板状のものが多
い。日本の外張断熱工法は壁体内を断熱的に利用しなく、もったいない。次世代省
エネ基準の地域Ąを二まわりほど強化した高断熱である。次世代省エネ基準の次の
基準では二酸化炭素削減の世界的取り組みの真剣度からいって、地域˘以南も壁体
内を充填断熱しさらに付加断熱が必要になろう。

 ・レンガブロック外壁(断熱ブロック+外張断熱工法)
 壁がレンガブロック構造の場合は、外壁は構造材と断熱材の役割を兼ねたバック
シュタインブロック(穴あき素焼きレンガブロック)、構造壁でない内壁はカルク
シュタイン(石灰を焼成することなく高温高圧で固めたブロック)になっている。
外壁は外断熱工法で、バックシュタインの外側にさらに軽量軟質木質繊維板や炭化
発泡コルクなどを貼ったり、発泡パーライト入り石灰塗りになっている。鉄筋コン
クリートは鉄筋が磁場を乱し人体に良くないと考え、住宅には使用を極力避けてい
る。

 ・屋根(充填断熱+付加断熱工法)
 タルキ間に充填し、さらに外側もしくは内側に付加断熱することが多い。断熱材
の厚さは200ミリ前後から290ミリ前後である。これは次世代省エネ基準の地
域Ąと同じ程度である。充填部分の断熱材はセルロースファイバーなどの吹き込み
の物、フラックス繊維などのマット状の物、軽量軟質木質繊維板などの板状の物な
どである。付加断熱は板状のものが多い。

 ・天井
 半地下空間を利用するのと同様に屋根裏空間を利用することが多いので天井断熱
は少ないようだ。

 ・基礎
 地下室や半地下室が多く基礎外断熱材基礎で、基本的には発泡ガラスが良いのだ
ろうが、コストからか発泡ポリスチロールが使用された現場を見てきた。

   断熱材と工法のエコロジー・バウビオロギー評価  
 ・スイスの断熱材、断熱工法別の評価        
 スイスではエコロジー・バウビオロギーの評価方法に、基本的な測定値から一定
の図式に当てはめ計算するエコ計算方式がもちいられている。エコロジー評価はエ
コファクターから方程式で求められるエコポイントや、大気汚染度(A)、空気滞
留時間が考慮された大気汚染度(B)によって評価される。断熱材も他の建築材材
料と同様に、使用される重量から、製造エネルギー、運搬エネルギーや一酸化炭素、
二酸化炭素、二酸化硫黄、酸化窒素、炭化水素、塩酸などの汚染物質の量が計算さ
れ、総合的にエコ計算方式によって数値でエコロジー評価される。「明確な二酸化
炭素削減のレポートが提出されれば、500万円から2000万円まで奨励金が政
府より個人に支給される。典型的なレンガ造の家と写真のバウビオロギー住宅では
4分の1まで二酸化炭素を減らすことができた。」とチューリッヒ在住のバウビオ
ロギー建築家の佐々木徳貢氏から聞いた。

 ¡ 日本でもこのレベルの取り組みが可能であるか
 「バウビオロギー 新しいエコロジー建築の流れ」(佐々木徳貢著、学芸出版社)
で先進地スイスのエコロジー・バウビオロギー事情とその評価方法が詳しく説明さ
れ、日本でのこれからの指針になる。こうしたレベルの取り組みは世界や日本の環
境事情、地域環境、住居環境から是非とも必要なものであり、住宅・建築の設計者
を初めとした住宅・建築生産領域の人々の努力が問われる。
 エコロジー・バウビオロギーの評価方法や魅力ある情報が沢山詰め込まれている
「バウビオ・データ・バンク」(GIBB=スイス・バウビオロギー情報協会)の
ソフトを、佐々木氏が主になり、日本版をつくろうと努力している。実現のためど
なたか知恵や資金協力できる方はいないだろうか。

 ¤ エコ・ビオメッセ(チューリッヒ)にみる断熱材の最新動向
 ’99年の4月にスイスのチューリッヒのエコ・ビオメッセを見学した。昨年の
フライブルクのメッセの5分の1程度の規模なのだが、自然系断熱材、日干しレン
ガ、塗り壁、木架構などが要領よくまとめられていた。雨水利用、太陽光発電、太
陽光給湯、浄化槽などは省かれていた。自然系断熱材はフライブルクと同様である。
フィンランドでもつくられている、マット状のセルロースファイバーが期待がもて
そうであった。他に大きなすペースがさかれていたのは、スイス・バウビオロギー
情報協会(GIBB)とスイス・バウビオロギー研究所(SIB)の展示空間であ
った。GIBBは会長のボスコ・ビュラー氏から直々「バウビオ・データ・バンク」
の解説を受けた。後日、彼の事務所と低層集合住宅を見学した。SIBではエコ・
ビオ住宅の数多くの説明パネルが展示され、ここでも丁寧に、雑誌「バウビオロギ
ー」の編集長ダニエル氏の説明を受けた。後日、自宅を訪問できた。

 2.先進地ドイツの傾向  (エコメッセ、エコショップにみる今後の断熱材
                                  の傾向)
 エコロジー、バウビオロギーの先進地ドイツの傾向をエコメッセ、エコステーシ
ョン、エコショップをみながら、断熱材を中心に述べる。市民組織の環境保護団体
ブントが企画するエコメッセは環境都市フライブルク市とウルム市とで毎年交互に
開かれる。エコメッセは、日本のグッドリビングショウなどのように住宅関係のみ
の、その道のプロのために開かれるのではなく、衣食住のエコロジーに関連した大
規模な手作りメッセである。ベビーカーを連ねて子供連れの家族などがごったがえ
し、盛況であった。健康食品、自然素材日用品、自然素材の衣服、自然素材の健康
建材などの衣食住の全般なエコロジーのメッセは市民にとっても、取っつきやすい。

 € エコメッセ(フライブルク)
 ’98年のフライブルクのエコメッセの住関連では、木骨架構工法のモデル展示
の多さと各種の自然素材の断熱材の展示の多さが時代の傾向を感じた。ドイツの大
多数の、戸建てやテラスハウスの住宅は、1・2階の壁がレンガやレンガブロック
などの組石造で小屋組が木造の住宅である。それが、近年の傾向として、壁の構造
までが木骨となってきた。レンガやレンガブロックは土を焼く時に燃焼エネルギー
が多大に消費され、エコロジーではないと考えられている。木は植林されることで
再生可能で自国で調達できる資源であり、二酸化炭素の蓄積などにより、地球環境
や人体に負荷が少ない。構造体が木で、木と木の間の壁や床の内に自然素材の断熱
材や日干しレンガを充填していく。日干しレンガは構造体にはならないが、木骨が
構造体である。木造住宅の熱容量の少なさや遮音の弱点を日干しレンガが補ってい
る。日干しレンガの仕上げは土塗り壁である。日干しレンガ、土塗り壁、塗り壁下
地の葦を編んだものなども目についた。
 自然素材の断熱材は、軽量軟質木質繊維、フラックス(亜麻繊維)、ハンフ(大
麻繊維)、ココヤシ繊維、炭化発泡コルク、ウール、コットン、セルローズファイ
バーなどが所狭しと展示されていた。現在の自然素材の断熱材の主流はセルローズ
ファイバーで、これからの主流は軽量軟質木質繊維のようである。
 エコメッセは限られた時間の開催だが、各地のエコステーションは市民の日常の
エコロジー、バウビオロギーのボランティア活動や教育の場の中心であり情報の中
心である。

   エコショップ(シュターフェン郊外) 見学した民間のエコショップはド
イツの南部でフライブルクとスイスのバーゼルの中間のシュターフェン郊外の、エ
コロジーに関係ある企業が貼り付いていたエコ産業振興地区にあった。この地区の
一角にエコショップは日本のDIYのようにあるが、店舗、展示場、オフィス、倉
庫、住居など職住接近で環境ともよい。隣地の空地にはフンデルト・ワァッサーが
設計の、地中にもぐったような緑化屋根のエコロジーなホテルが建設されるという。
エコショップの入り口には出荷待ちの軽量軟質木質繊維ボードとセルローズファイ
バの断熱材が多量に積まれていた。エコメッセで見た断熱材の他に、目新しいとこ
ろではラクダの毛やシルクからできた断熱材があった。

 そんな先進地ドイツでも断熱材のシェアは’79年で無機質系断熱材が57%石
油製品発泡系断熱材が39%、’96年には無機質系断熱材が61%、石油製品発
泡系断熱材が36%の状態であり、自然素材の断熱材はまったくこれからの市場で
ある。石油製品発泡系断熱材のなかでは、ビーズ発泡ポリスチレンが29.8%、
硬質ウレタンフォームが4.5%、押し出し発泡ポリスチレンが3.2%とになっ
ている。日本ではビーズ発泡ポリスチレンはシェアが少ないが、ドイツではシェア
が大きい。ビーズ発泡ポリスチレンはフロンや代替フロンを使用せず蒸気を使用し
発泡形成するので、他の石油製品発泡系断熱材より環境に負荷が少ないことによる
のだろう。