vol.001 断熱・気密に関する考え方の整理と私見
 
 
 
 
 
■1■ 断熱・気密を整理する。
 
 
◆◇ 内・外断熱論争について
 
 これまでの何度かの内・外断熱論争と最近の論争を経て、「外断熱でなければならない」は過ぎ去ったようだ。実績はなくとも広告や名刺には外断熱工法とうたわれ、何処も彼処も外断熱なことから、訴える効果が少なくなったこともあろう。断熱関係の情報源は限られていたが、外断熱礼讃の家づくりの本以外の本の出版や、専門雑誌にも外断熱以外の断熱工法が度々登場し、間口が広くなり、選択肢が増えた。一通りの外断熱の設計や施工を経験し、自明のことではあるが長所・短所が見えてきた結果に思える。
 
 部位別に適した工法の複合化や自然系断熱材の普及により、外断熱だけで一つの家をまとめるのは無理強いであろう。家々の個々の主張やコストに合わせて、断熱材を選択し、内と外の断熱工法を交えながら、叉は付加断熱工法を選びたい。
 
 工法の違いではなく、結露がない、Q値・C値の性能がいい、防火性、エコ、費用対効果などがバランスとれ、より良い方が優れていることになる。
 
 
 
 
◆◇ 「中気密でいい」について
 
 高断熱・高気密指向の方にとっては「中気密でいい」は禁句であったが、最近、住宅アドバイザーの南雄三氏が「中気密でいい」を唱え始めている。住宅生産者は『「高断熱・高気密派」と「その他組」からなっていて、圧倒的多数の「その他組」のレベルアップが必用とされている』という。物事は初めからそうなのだ。隙間相当面積が0の超高性能を目指した旗頭であったのだが、左から右への振れが大きい。
 
 彼の隙間相当面積5cm2の「中気密でいい」には数々の限定条件がついている。結露に関しては、外壁の各部位の透湿抵抗の差でクリアする。また、「中途半端ぐらい難しいものはなく、自分で自分を見失うことになるようだ。」ともいっている。先鋭な住宅アドバイザーの立場が砂の人形のようにドンドン砂丘に飲み込まれていくだろうが、それで目的が果たせよう。
 
 私共の方向性は逆である。防湿層と気密層を分離し、透湿抵抗の差をみながら結露しないように、断熱・気密の施工精度どこまでラフに手早くやれるかの方向である。「中気密でいい」と言わずとも、始めての施工者でも2cm2より少ない隙間相当面積が出ている。外断熱からの施工者も増えてきている。
 
 
 
 
◆◇ 基準法シックハウス対策(換気義務化)について
 
 シックハウスが問題にされるまで長い時間がかかったが、問題になってからの低ホルムアルデヒド化・低VOC化建材の登場や自然素材その他の対応が素早かった。それと共に換気システムの普及も素早かった。しかし、換気の義務化イコール効果な換気システムを使用しなければならないと思い込んでいる所が多い。商品メリットとして採用しているの所が多いのも事実であるが。
換気量を保持するのに何も高価な換気システムを使用しなくても、コストが限られている場合はコストアップせずに、従来のパイプファンなどを上手に使いこなせばいい。
 
 基準法シックハウス対策は換気の認識が高まり評価できる。しかし、シックハウスが問題にされるまでシックハウスの元となる新建材の臭いを「新しい家の臭い」と自慢してい人々には満足されるが、化学物質過敏症者が救われる範疇ではないことを肝に命じておかなければならない。シックハウス対策は換気量を増やせばいいが、問題は、過大換気による過乾燥である。大多数の人たちは我慢しているのではなかろうか。
 
 また造り手としては、確認申請や完了検査の図面や書類が多くなり煩雑になったが、自己責任化し図面や書類を簡易化できればと願っている。
 
 
 
 
◆◇ 省エネ・環境問題について
 
 省エネは、暖房時に断熱・気密性能と日射熱利用を増し、冷房時は断熱・気密性能と日射遮蔽性能が高い方が優れている。そして最近の省エネは、断熱材の製造・運搬エネルギーの省エネが問われている。
 
 環境問題の一つの地球温暖化は二酸化炭素が大きな役割を果たしているが、建築関連の放出量が約36%もしめ、関連業界の削減努力が必用である。二酸化炭素削減は断熱・気密性能が増すと共に暖冷房時の二酸化炭素排出が少なくなる。製造・運搬時の二酸化炭素削減も計る。発泡系断熱材はオゾン層を破壊するフロン削減はほぼ解決しているが、フロンに替わる代替フロンは温暖化が二酸化炭素の数百倍から千倍単位であり問題となっている。一部のメーカーでは代替フロンからクリーンガスや水発泡を行っているが、クリーンガスでも温暖化が二酸化炭素の23倍ある。
 
 
 
 
◆◇断熱材の選び方・考え方について(テーマ:エコ度・防火性能・施工性)
 
 断熱材を選ぶのに、施工の難易度と精度、耐久性・性能と価格のバランスの他に人体と地球環境に負荷が少ないことを考慮しなければならない。負荷が少ないことは建築だけではなく、衣食住全体で急がれている問題で、建築や住宅の領域では基準法のシックハウス対策などで試行錯誤であるが、断熱材(特殊な部位を除く)までは問われていない。
 
 また、負荷が少ない自然系断熱材は防火性、価格、生産量など問題に突き当たっている。見落としがちなのは防火性である。これまでの日本の住宅の寿命は30年前後と、アメリカの75年、スウェーデンの90年から比べると著しく短かった。火災にあう前に腐るなどで潰されていた。それに対し高断熱・高気密住宅は壁中が乾燥し木材が腐ることなくスウェーデンの住宅並みの超寿命になり、火災にあう機会が多くなる。日本では50年に1回は大きな地震に、100年に1回の神戸のような極めて大きな地震にあう。地震と火災は付き物であり、大きな都市災害にならないようにここの住宅は防火性をもたなければならない。
 
 
 
 
◆◇ 問題提起・課題
 
 「中気密でいい」の項目でも触れたが、「その他組」の底上げは初めから必要であり、筆者共は進めてきた。先鋭なノボリもないし地味な活動であるが、「その他組」の底上げが社会情勢になってきた。左から回っても、右から回っても一緒な所を目指している。学問側の理論や実験が蓄積され、設計や施工現場側の実績も蓄積され、両者がリンクしてきている。
 
両者の組合せから、いかにエコで低価格で、次世代省エネルギー基準以上の性能で断熱・気密の施工精度をどこまでラフに手早くやれるかが課題である。
 
 
 
 
 
■2■ 提案したい断熱・気密の考え方と私家版「標準仕様」
 
 
◆◇ 断熱・気密レベルをどこにおくか
 
 各地域の気候風土の違いによった断熱・気密性能が求められ、品確法・性能表示制度と次世代省エネルギー基準に沿うが、新省エネルギー基準ではなく、少なくとも次世代省エネルギー基準以上のレベルが欲しい。品確法の「温熱環境に関すること」の性能表示は、は等級(4、3、2、1)で表示され、等級4が次世代省エネルギー基準である。 高断熱・高気密住宅が普及している寒冷地の現状は、次世代省エネルギー基準に準じた程度であろう。もちろん、まだまだ意識の低い住み手と造り手は新省エネルギー基準程度に甘んじている。新省エネルギー基準程度では、結露防止、暖かく温度差が少ない温熱環境までは至らない。
 
 次世代省エネルギー基準程度は何も寒冷地ばかりでなく、他の地域でも必要である。今後は、省エネや良好な温熱環境ばかりでなく、二酸化炭素削減などの環境問題の解決が望まれているからだ。その先に西欧などのさらに厳しい基準が待っている。実際に次世代省エネルギー基準のQ値程度の性能では、全室暖房すると、これまでの個別暖房消費エネルギーの2倍から3倍かかってしまう。二酸化炭素の放出量も2倍から3倍になってしまう。
 
 l 地域はフランス・ドイツ・アメリカの基準くらいであるが、ll 地域ではフランス・ドイツ約1.4倍、lll 地域ではドイツの約1.8倍フランスの約1.5倍、lV 地域ではフランスの1.6倍熱損失係数が大きい。
 
次世代省エネルギー基準といっても、外張断熱がかろうじてクリアできる定められたQ値程度ではなく、少なくても公庫の断熱材の厚さの早見表以上にしたい。この厚さに開口部を樹脂サッシ(LowEペアガラス)以上にレベルアップすればフランスやドイツの基準になる。
 
充填 外張り
高性能16kグラスウール 羊毛リサイクル+セルロースファイバー 硬質ウレタンフォーム




外壁 厚さ100mm 価格
390,000円
羊毛厚さ100mm 38 価格
600,000円
厚さ50mm 価格
1,000,000円
屋根、天井 GW厚さ200mm  桁上断熱:セルロースファイバー厚さ200mm 13 厚さ100mm
基礎 押出法ポリスチレン3種 押出法ポリスチレン3種 9 押出法ポリスチレン3種
防湿気密シート 45,000円 45,000円 45,000円
気密部材 165,000円 165,000円 165,000円
下地合板 100,000円
人工 250,000円 250,000円 250,000円
 
合計 850,000円 1,060,000円 1,560,000円

 
 
 
 
◆◇ コスト・技術力・省エネレベル別おすすめ断熱・気密標準仕様
 
 筆者の標準仕様は、外壁が高性能グラスウール厚さ100mm充填、屋根が高性能グラスウール厚さ200mm垂木間充填屋根断熱、基礎は押出法ポリスチレンフォーム3種厚さ50mm外断熱である。?地域では、屋根が高性能グラスウール厚さ150mm垂木間充填屋根断熱でいい。
 
 エコロジー・バウビオロギーとコストを優先させる場合は、外壁がリサイクル羊毛厚さ100mm充填、天井がセルロースファイバー吹込み厚さ200mm桁上断熱、基礎は押出法ポリスチレンフォーム3種厚さ50mm外断熱である。
 
 工務店の技術力が不安な場合は、外壁が硬質ウレタンフォーム厚さ50mm外張り、屋根が硬質ウレタンフォーム厚さ100mm外張り、基礎は押出法ポリスチレンフォーム3種厚さ50mm外断熱である。防火性を多少上げると硬質ウレタンフォームがフェノールフォームになり、外壁が厚さ35mm、屋根が厚さ70mmになる。筆者は鉄板屋根が多いので、雨音などの音の問題から、外壁が硬質ウレタンフォーム厚さ50mm外張りであっても、屋根は高性能グラスウール厚さ200mm垂木間充填屋根断熱である。
 
 
 
 

vol.002