vol.002 ボード(合板)気密工法のポイントと注意点1
 
 
 
 
 
■1■ ボード(合板)気密工法の概略
 
 
 充填断熱工法の断熱・気密の部位は、外壁、床(基礎)、天井(屋根)とそれぞれの取合いがあるが、その中で外壁の断熱・気密施工が最も煩雑である。防湿・気密層を貫通する、桁と梁や頭つなぎの先張りシート、コンセントボックス、設備配管などの防湿・気密層の補修などが煩雑であり、この箇所の施工精度によって全体の気密性能や結露が左右される。ボード(合板)気密工法は施工を簡略化しこうした問題点を解決した。
ボード気密工法の施工例
▲ ボード気密工法の施工例
 
 
 
 
◆◇ 従来の充填断熱工法
 
 従来の外壁の充填断熱工法は、室内側に防湿・気密層、軸間に断熱材を充填、断熱材の外側に透湿層+通気層、その外側に外装材の構成になっている。防湿層と気密層は一体になっている。ここで、室内からの防湿を図り結露を防ぐと共に、気密の性能を維持する。慣れた施工者にとっては外張断熱工法と同程度の施工人工数であり、グラスウールなどの断熱材は最も低価格なことから手短な工法である。しかし、断熱施工の初心者にとっては桁と梁や頭つなぎの先張りシートやコンセントボックス、などの防湿・気密層の補修などが面倒に思われている。
 
 
 
 
◆◇ ボード(合板)気密工法とは
 
 高断熱・高気密住宅(充填断熱工法)が登場してから25年ほどの経験を重ね、現在の充填断熱工法は当初から比べ随分と簡易的になった。その最も典型的ものがボード(合板)気密工法である。
 
・特色
 
一番の特色は気密層と防湿層を分離することである。
 
図1 外壁の外側にボード(合板)を張り気密・透湿層とし、防湿層は従来通りの気密・防湿層の位置に施工する。断熱材は従来どおり外壁の軸間に充填する[→図1,写真1,写真2]。25年ほどの経験と理論から、通気層の働きが高く、防湿層がラフに施工されても充填されるグラスウールなどの断熱材が結露しないとこが知れてきた。

 
 結露しなければ、従来の外壁の充填断熱工法の施工が面倒くさく思われる、梁・土台・桁と防湿・気密層を貫通する頭つなぎの先張りシートやコンセントボックスなどの防湿・気密層の補修などは、無くしたり、大幅に省略できる。高気密性能が取れないまでにラフになれる。しかし、気密の性能は必要なことから、単純な形の場合の外張断熱工法のように軸組の外側の合板部分で気密をとる。この部分は頭つなぎやコンセントボックスなどがなく、気密が取りやすい。

写真1
写真2
▲ ボード気密工法の施工例。左は合板気密のパネル工法。右は軸間にグラスウールを充填したところ
 
・ボード(合板)の種類は
 
気密層のボードは室内側の防湿層より透湿性が充分に高いものであれば良い。
 
 一般的なものは、最近、在来構法でも多用されている耐力壁に使用される構造用合板や構造用OSBである。注意しなければならないのは、構造用OSBのほとんどは透湿抵抗が高く、透湿抵抗の低いものを使用しなければならない。
 
 合板やOSBの接着剤が嫌われる場合は、ハードボード(構造用)やスレートやダイライトが勧められる。これまでのスレートは少量のアスベストが含まれていたが、この4月からは全く含まれていないものが販売されている。下見板の防火下地材としての使われ方以外に、そのまま外装材とすれば、外装材と気密・透湿層が兼ねられ、通気層の必要もなく最も低価格な外壁になる。
 他に特筆されるのは、透湿抵抗が低く防火下地兼構造用ボードのダイライトである。壁中にグラスウールを入れると、木の下見板の防火構造になる。最近の建築基準法の大幅な変革により22条地域はもちろんのこと準防火・防火地域の延焼の恐れのある部分にも板張り外装が可能になった。
 
充填される断熱材
 
低価格のグラスウールが最適である。裸のグラスウールを充填し防湿シートをラフに張る方法と、耳長袋入りグラスウール(防湿シート付き)を充填する方法がある。
 
 耳長袋入りグラスウールを使用すると、防湿シートがいらない上に、施工が簡略化でき、コストダウンができる。慣れた工務店ではボード気密なしに耳長袋入りグラスウールだけで隙間相当面積が0.8cm2/m2前後の高性能がでている。
 
専用の気密パッキン
 
ボードのジョインの部分と柱・土台・胴差・桁などの間に挟む最適の専用の気密パッキンが(株)タイガー産業から発売されている。材質は発砲ポリエチレン性なのでダイオキシンなどの心配はない。
 
気密性能は
 貫通部分の補修は必要だが、ボード(合板)を釘で打ち付けるのみで2cm2/m2の高気密性能が維持できている。気密パッキンや気密テープなどを施工することによって、1cm2/m2前後、0.5cm2/m2前後までの高性能が簡略に出来上がる。ボードと木部に挟み込む気密パッキンは性能劣化が少なく思われる。ボードの継ぎ目の上から張る気密テープは施工が簡易であるが、強風、地震、木材の乾燥収縮による建物の変形に追随が困難に思われ積極的に勧めることはできない。
 
価格は
 
最も簡易で低価格なものは、ボード(合板)気密工法と軸間に耳長袋入りグラスウール充填断熱工法の組み合わせである。従来の袋入り断熱材より袋の耳が長く、柱・間柱・桁・土台部分を下地とし石膏ボードで押さえることで連続した防湿層になる。
 
 
 
 
◆◇ ボード(合板)気密工法が考えられるまでの経過

 ボード(合板)気密工法が考えられた下地は同時多発的である。発生の下地は、枠組構法の室内側の合板の気密・防湿層、外張断熱工法の耐力壁合板の気密層、耳付き合板の気密・断熱パネル工法、タイベックでの気密層などがあげられる。これらを下地として、簡略なボード(合板)気密充填断熱工法をオープンな新住協が体系化し、積極的に採用している。
 
 
 
 
■2■ ボード(合板)気密工法の長所と欠点
 
 
◆◇ 長所・短所
 
長所
・ 先張シートが不要である。
・ 防湿・気密テープが大幅に省略できる。
・ コンセント、スイッチボックスなどの防湿・気密層補修が不要になる
・ 耳長袋入りグラスウールとの併用から簡易な施行で最も低価格である。
・ 耐震性がある。
・ 下見板張りに適する。(22条地域、準防火、防火地域の延焼の恐れのある部分。)
・ 充填断熱で真壁ができる。
 
 充填断熱工法では真壁が困難で、付け柱や窓の枠周りの納まりを工夫して真壁風にしていた。
 
欠点
・外張断熱工法と同様に下屋や庇が多いなどの形が複雑なものには適さない。
 
 
 
 
■3■ ボード(合板)気密工法に対する疑問
 
 
◆◇ ボード(合板)気密工法は結露しないのか
 
 結露が起こらない考え方は、室内側から外側に向かって、透湿抵抗の高いものから順次低い建材を配置した。室内の水蒸気を壁中の断熱材により侵入させないように、壁中に入った水蒸気は外側の通気層にスムーズに排出され水蒸気圧を下げる工夫がなされた。
 
 これまでの考え方からは、断熱材の外側に水蒸気を透しにくそうな合板があると、壁中の断熱材から通気層に水蒸気が透しにくく結露の恐れが大きく思われる。枠組工法の床断熱の1階の床合板は防湿・気密層に使用しているほどであるから、危険に思うだろう。
 
 しかし、外壁の合板は壁中の水蒸気を通気層に透湿し結露を防いでいる。こうした、これまでの実績ある実例は身近な枠組工法の外壁である。ここでは合板は水蒸気を透し透湿層になっている。
 
合板は透湿層なのか防湿層なのか
 
枠組工法の外壁の合板は透湿層になり、床の合板は防湿層になっていることは不思議に思われるだろうが、同一の一つの素材(合板)が両方の役目を果たしている。それぞれの部位において他の建材との相対的な透湿抵抗の差によって、外壁の合板では、室内側が合板の透湿抵抗10.3m2・h・mmHg/gよりはるかに高い防湿シート6131m2・h・mmHg/gの場合は透湿層の役目を果たし[→表]、床の合板では、床下の断熱材の外側がタイベック0.087m2・h・mmHg/gなどの透湿抵抗が合板よりはるかに低い場合は防湿層の役目を果たす。透湿抵抗が高いOSBは30.6〜111.1m2・h・mmHg/gである。

建材の透湿抵抗一覧
分類 材料名 厚さ 透湿抵抗 備考
mm m2・h・mmHg/g
外装材 モルタル1 20 4.25
モルタル2 10 1.63
スレート 3 2.44
土壁 60 3.40
防湿層等 ポリエチレンシート1 0.15 613
ポリエチレンシート2 0.10 452
ポリエチレンシート3 0.05 229
ビニールシート - 78.4
暴風防水透湿材 0.2 0.087
アスファルトルーフィング1 - 300 22kg品 材料自体
アスファルトルーフィング2 - 137 22kg品 完全施工時
アスファルトルーフィング3 - 6.0 22kg品 雑施工時
アスファルトフェルト1 - 5.0 20kg品 完全施工時
アスファルトフェルト2 - 3.0 20kg品 雑施工時
内外装用ボード 構造用合板 9.0 10.3
OSB1 11.1 30.6
OSB2 12.7 50.8
OSB3 15.9 46.3
OSB4 18.3 111.1
パーティクルボード 15.0 9.43
ダイライト 12.0 3.0
センチュリーボード 12.0 6.3
シージングボード 12.0 2.90
通気シージングボード 12.0 1.3
石膏ボード 9.0 0.78
断熱材 グラスウール 100 1.25
ロックウール 100 1.25
セルローズ 100 1.25
防湿層付グラスウール 50 17.0
発泡樹脂系断熱材 50 30?40


 
夏型結露しないのか
図3/写真6
 充填断熱でも外張断熱でも、夏に断熱材の室内側が一時結露する場合があるが、木材の腐朽や断熱材への影響はないと、実際の経験、非定常型結露計算、実験で実証されている。それでも心配な人には、透湿抵抗値が高い防湿シートの代わりに防湿・調湿シート(可変透湿シート)の「ザバーンBF」(デュポン)[→図3,写真6]の使用を勧める。「ザバーンBF」は相対湿度によって透湿抵抗値が変動する。通常時には透湿抵抗値が防湿シート並みになり防湿シートの役割を果たし、室内側の水蒸気を断熱材の内側で食い止めるが、相対湿度が高くなる夏型の逆転結露時には透湿シート並みの低い透湿抵抗値になり壁内の水蒸気を室内側に掃出し、壁内の高湿化を抑制し結露を防ぐ。一つの素材で、夏期は透湿性が高く、冬季は防湿性高くなる透湿抵抗が可変する優れものである。
 
 また、防湿層には、ポリエチレンシートのような高い透湿抵抗値が求められるが、ザバーンの透湿抵抗値であれば、断熱材の外側に張る構造用合板10.3m2・h・mmHg/gより透湿抵抗値が高くなり、結露の心配がない。ただし、合板の代わりに透湿抵抗が高いOSBを使うのは、理論上危険である。
 

 なお、ザバーンは不織布で補強されているので、破れにくく、しかも耐久性が高い。また、焼却した場合も、有毒ガスが発生しないため安全である。
 
 「ザバーンBF」は相対湿度によって透湿抵抗値が変動するが、

ドイツやスイスには透湿抵抗値が5種類の、ポリエチレンシートが再生紙でサンドイッチされたものがある[→写真7]。5種類の透湿抵抗値のシートを場合場合によって上手に使いこなすのであろう。
写真7
▲ 欧州で見かけた,透湿抵抗値が5種類用意されているシート
 
 
 
 
■4■  施工手順の概略
 
 
1. 耐力壁のボード(合板)の周囲に接する軸組の柱・土台・胴差・桁などに気密パッキンを張る。若しくはボード(合板)側に気密パッキンを張る[→図2,写真3,写真4]。
図2
写真3
▲▼ 気密パッキンの施工例。黒い部分がパッキン。簡単に気密とれるのでお勧め
写真4
2. 耐力壁のボード(合板)を軸組に張り付ける。
気密パッキンを合板と軸組の間に施工しない場合は合板の継ぎ目の上に気密テープを張る。この場合、紫外線に長くあたり劣化しないように手早くタイベックを張る。
3. 耐力壁のボード(合板)の上にタイベックなどの透湿・防水シートを張る。
4. 通気胴縁を施工し通気層をつくり外装材を張る。
5. 軸間に耳長袋入り断熱材を充填する[→写真5]。
写真5
▲ 軸間に耳長袋入り断熱材を充填したところ
 
 
 
 
◆◇ 他の部位との組合わせ
 
 筆者は外壁のボード(合板)気密工法と基礎断熱工法、屋根垂木間充填断熱工法の組合わせが段々増して来ている。他に桁上断熱工法や桁下断熱工法との組合わせを採用している。
 
 
 
 

vol.001
vol.003