vol.003 ボード(合板)気密工法のポイントと注意点2
 
 
 
 
 
■1■ ボード(合板)気密工法のおさらい
 
 
図1 最近は地震や強風に備えるため、壁などに構造用面材が用いられるようになった。この面材を気密層にすることで、初心者には面倒と思われがちな先張りシートや気流止めの必要がなく、気密テープの補修も少なく、従来通りの手順で簡易でローコストに施工できるようになった。気密は高性能であり、慣れない施工者でも隙間相当面積が1cm2/m2前後になれる。
 
 従来の充填断熱工法は防湿層と気密層が一体であったが、ボード(合板)気密工法では分離し、気密層は従前の位置の室内側に、気密層はボードとしている。
図2 
 概略は『vol.002』に説明しているので見て頂きたい。今回は標準仕様と特色ある使用、施工手順を説明する。注意する箇所は、屋根充填断熱工法[→図1]と天井断熱工法[→図2]の丸印の箇所であり、ボード(合板)気密工法を外壁部分、床と外壁部分の取合い部分、天井と外壁の取合い部分、下屋と外壁の取合い部分の各部位の基本的納まりを説明する。
 
 
 
 
 
■2■ 標準仕様の解説
 
 
◆◇ 外壁部分
 
◎標準仕様(裸のグラスウール使用)
 筆者のボード(合板)気密工法の標準仕様は、防火サイディング+通気層+防水透湿シート・合板(気密層)+裸のグラスウール+防湿シート+石膏ボードである。充填断熱のみは ll 地域以西の標準であり、付加断熱は l 地域の標準である。筆者の設計の地域範囲は秋田県内の ll ・ lll 地域を中心に lV 地域や l 地域である。
 
 ボード(合板)気密工法の特色であるボード部分での連続した気密層をつくるには、ボードだけではなく、ボードと軸組の間に気密パッキンや気密テープの補助材を貼って打ち付ける、ボードを打ち付けた後に気密テープの補助材を貼るが、『vol.2』の[写真3写真4図2]を見て欲しい。専用の気密パッキンは発泡ポリエチレン製の「合板気密工法用パッキン」が(株)タイガー産業(電話011-851-3711)から販売されている。
 
 室内側の防湿層は従来の工法のように厚手の0.2mmの防湿ポリエチレンシートを貼るが、先張りシートは必要なく、シートのつなぎ目や重ね部分や窓周りの取合い部分などの気密テープでの補修もほとんど必要なく施工がかなり簡略である。
 
 
・真壁
 従来の充填断熱工法では防湿・気密シートを連続するために外壁が真壁にできなかった。柱部分で防湿・気密シートが切れるからである。次世代省エネルギー基準でも金融公庫の仕様でも連続にしなければならないが、[図3][図4][写真1]のように不連続な防湿・気密シートで新木造住宅技術研究協議会では型式認定取得工法の認定を得ている。柱間や横架材間の周囲は厳密に僅かな隙間ができるが、通気層の有効な働きから許容範囲であると考えられる。
図3

 
 高断熱・高気密住宅でも[写真2]のように柱や梁などが表われ、デザイン的にも有効な真壁造が増えてきている。従来の充填断熱工法では外壁側はコストをかけて付柱などで真壁風に見せていたが、文字通りの真壁ができるようになった意義は大きい。
写真1
▲ 不連続な防湿・気密シートの施工例
写真2
▲ 最近増えてきた高断熱高気密住宅の真壁造

 
 
・大壁の場合
 『vol.002』の[図1]のように、室内側の防湿層は従来の工法のように防湿シートを貼るが、先張りシートは必要なく、気密テープでの補修もほとんど必要なく施工がかなり簡略である。気密テープはしないものの防湿シートは重ね張りし連続するので、真壁造よりは防湿性能が良い。
 
 
◎最も簡易な仕様(耳長袋入りグラスウール使用)
 ボード(合板)気密工法のなかでも、最も簡易でローコストな仕様は、「防火サイディング+通気層+防水透湿シート・合板(気密層)+耳長袋入りグラスウール+石膏ボード」である。
 
 軸間に従来の袋入りグラスウールを充填することで性能は足りるが、ここでは防湿・気密シートと一体になった耳長袋入りグラスウールを充填する。耳が長いので重なり合うことで防湿層の連続性がよりでてくる。
 
 従来の袋入りグラスウールは気密性で lll 地域以北ではすすめられなかったが、ボード(合板)気密工法との組合せで l ・ ll 地域を含め、全地域で使用することが可能になった。しかし理論ではそうなのだが、これまでの実際の現場を見てご存じのとおり施工状態がラフで商品イメージが悪い。施工のラフさと結露と木材の腐朽が相まって内断熱工法が否定されてきた。このイメージが払拭されない限り普及が難しく思われる。
 
 それに対して、最近の耳長袋入り断熱材を使用した施工例は『vol.002』の[写真5]のように施工精度とイメージが良く満足できる。耳長袋入り断熱材はボード(合板)気密工法用に開発されたのではなく、グラスウールメーカーが lll 地域以西で次世代省エネルギー基準をクリアできるように型式認定取得したQ-BEST工法である。商品Q名は、ポリカットQ((株)マグ)とSunQ(パラマウント硝子工業(株))である。慣れた工務店はボードを張らなくても耳長袋入り断熱材とタイベックで隙間相当面積が0.6cm2/m2前後の高性能をだしている。これらの慣れた工務店でなくても、ボード(合板)気密工法であれば隙間相当面積が1cm2/m2以上の性能はできる。
 
 
◎裸のGWと耳長袋入りGW使用の使い分け
 筆者は設計専業なので、工務店が高断熱・高気密住宅の施工が慣れているばかりでなく、施主手配の高断熱・高気密施工に慣れていない工務店も多い。以前は、慣れていない場合は単価が高い外張断熱工法を採用していたのだが、最近はボード(合板)気密工法を採用している。
 
 同じ性能であればコストの差である。その分を内装や設備がグレードアップでき、コストダウンもできる。また、外装に木板張りをする時は、防火性を考えなければならないが、ボードにスレートを使用したボード(合板)気密工法がローコストで施工が手早い。防湿・気密シート一体の充填断熱工法になれた施工者でも、耐力壁にボード(合板)を使用している場合は、裸のグラスウール充填のボード(合板)気密工法を採用した方がコストダウンになる。
 
 断熱・気密施工に慣れていない施工者にとっては耳長袋入り断熱材充填のボード(合板)気密工法がはるかに楽である。外張断熱工法よりコストが安く、施工が楽である。気密施工は外張断熱工法と同じであるが、固形の断熱材を精度良く張り付けるよりはマット状の弾力ある耳長袋入り断熱材を充填する方がはるかに楽である。袋入りなのでチカチカ感が少ない。裸のグラスウール施工に慣れている l ・ ll ・ lll 地域の施工者でもよりいっそうのコストダウンをはかるには耳長袋入り断熱材ボード(合板)気密工法が良いだろう。
 
 秋田県内主体の筆者の高断熱・高気密住宅のおおよその坪単価は、(1)標準が約48万円/坪(FFストーブ暖房)、(2)木を内外装に多用が約52万円/坪、又はシステム暖房(温水、電気)、(3)木+システム暖房(温水、電気)他を加えて約55万円/坪である。同じ仕様で、全国的にみると約8万円/坪も安い県があり地域価格差を考えて欲しい。
 
 標準単価を大幅に切って、40万円/坪前後はボード(合板)気密工法(耳長袋入り断熱材)、35万円/坪前後は耳長袋入り断熱材工法を採用している。もちろんコストダウンは断熱・気密工法と共に他の要素も大きい。
 
 
◎ボード(合板)気密工法の応用編
・外装の木板張りと防火構造
 
 筆者の設計の特色は高断熱・高気密を基本にしたエコロジー・バウビオロギー住宅である。地球と人体に負荷が少ない素材や工法を考え、そのなかで、外壁は木板張りが多い。しかし、ほとんどの住宅が22条地域や準防火地域であり、延焼の恐れのある部分を準防火構造以上にしなければならなく、木板張りの場合は工夫が必要である。
 
 
・22条地域と板張り
図5/図6 22条地域の準防火構造の土塗り壁と同等の場合は、木板の内側にスレートを防火下地にすればよい。この低価格のスレートを防火下地と兼ねてボード(合板)気密工法にすれば、防火と断熱・気密が一建材で一挙に解決できローコストで施工が手早い。外壁の構成は[図5]のように「木板+(通気層無し)+スレート+耳長袋入りグラスウール+石膏ボード」である。
 
 スレートは透湿性があり、外装の木板も透湿性があることから通気層が必要ない。室内側の防湿シートも必要ない。スレートは耐水性と耐候性に富んでいるから、防水シートも必要ない。4月から石綿が含まれないスレートが発売されている。
 
 木板には材料費200円/mの格安な保護塗料ウッドロングエコ((有)阿津坂商事)を塗る。素人でも塗りやすく、足周りが良い地上で自分で下見板に塗ると、1件の住宅の板の塗装が3万円ほどで仕上がる。下見板から含めた価格だと、下地や通気層を含めた防火サイディングの中程度の価格帯である。
 
 
・準防火地域と板張り
 近年の基準法改正で意外なのは、準防火・防火地域で外装に木板の使用が可能になったことだ。木板使用で、延焼の恐れのある部分が防火構造になるダイライト(大建工業(株))の型式認定取得工法の[図6]のように「木板+(防水透湿シート)ダイライト+グラスウール+石膏ボード」である。ダイライトの部分でボード(合板)気密工法ができる。
 ダイライトは材が高価であるが、耐力壁と防火下地の2つの役目を1枚(1回の施工)果たすので材工で割高感はない。
 
 
 
 
◆◇ 床と外壁部分の取合い部分
 
 1階床・基礎の断熱・気密は床断熱工法と基礎断熱工法がある。基本は、[写真3]のようにボード(合板)と土台の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張り気密をとり単純である。
写真3
▲ 気密パッキンを使った基礎との取り合い部
 
 
◎床断熱との取合い
図7  床断熱工法は根太の多種な寸法、根太がなく床板が厚い工法、根太・大引・土台による多種な床組があるのが、ボード(合板)気密工法の壁との取合い部分は代表例として[図7]をあげる。床下空間から、断熱材が充填された外壁のなかを気流が流れないように、従来の充填断熱工法と同様に土台上に気流止めが必要である。ボード(合板)と土台の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張る。
 
 
◎基礎断熱との取合い
 基礎断熱との取合いは[写真3]のように平易である。断熱材が外に張られても、内に張られても、両側に張られても、断熱材の厚さが様々でも、ボード(合板)と土台の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張る。
 
 
 
 
◆◇ 天井と外壁の取合い部分
 
 天井・屋根の断熱・気密は天井断熱工法、桁上断熱工法、桁下断熱工法、屋根充填断熱工法、屋根外張断熱工法がある。基本は、ボード(合板)と桁の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張り気密をとり、単純である。
 
 
◎天井断熱との取合い
 外側のボード(合板)と桁の取合いは簡単だが、外壁の室内側の桁と天井までの空間を、[図8]のように内装下地材で塞ぐか、[図9]のように防湿シートとで塞ぐかの納まりがある。
図8/図9/図10

 
 真壁の場合は、内装材や防湿シートを桁まで延ばしても、天井と柱が取合う部分で間に隙間が生じる。そのために、[図10]のように気流止めを柱間に取付ける。
 
 
◎屋根充填断熱との取合い
 屋根充填断熱工法は垂木の間に断熱材を充填する工法である。[図11]と[図12]のように大壁であっても真壁であっても、共通項の、ボード(合板)と桁の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張り気密をとり他も問題なく非常に簡単である。
図11/図12

 
 
 
 
◆◇ 下屋と外壁の取合い部分
 
 下屋部分の施工は外壁のボード(合板)を張った後になる。壁と桁、壁と胴差の気密は、共通項の、ボード(合板)と桁や胴差の間に挟み込んだ気密パッキンか、継ぎ目に気密テープを張り気密をとる。
 
 
◎天井断熱との取合い
 下屋が天井断熱の場合は、[図13]のように天井下地施工前に胴差に防湿シートを垂れ下げ、後に天井の防湿・気密シートと重ねる。
図13

 
 
◎屋根充填断熱との取合い
 [図14]のように特別に問題はない。
図14

 
 筆者が勧める他の部位との組合わせは、ボード(合板)気密工法は簡易性にあるので、耳長袋入りグラスウール+基礎断熱+屋根充填断熱である。
 
 他の多くのパターンは、各部位の組合わせと次世代省エネルギー基準の地域別性能の組合わせを掛け合わせたパターンがのっている「新在来木造構法マニュアル」(発行:新木造住宅技術研究協議会、監修:室蘭工業大学建設システム工学科鎌田研究室)を参照されたい。
 
 図1〜2、図7〜14まで「新在来木造構法マニュアル」による。
 
 
 
 

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