vol.004 充填断熱(従来型)の最先端と注意点,コスト
 
 
 
 
 
■1■ 最先端
 
 
 「充填断熱(従来型)の最先端と注意点、コスト」なのだが、今回はミネラル繊維、特にグラスウールの充填断熱工法について、次回にその他の工法を充説明する。
 
 充填断熱の実績は長く、改良されながら、高性能化と共に施工がかなり簡略され今日に至っている。断熱箇所の部位は天井、外壁、床部分に分けられるが、外壁部分の施工の簡略化が進まなかった。天井は断熱材がより厚く屋根充填断熱・桁上断熱・桁下天井断熱と施工が簡略化され、床断熱は断熱材がより厚くそして基礎断熱と幅が広がると共に施工が簡略化されている。
 
 外壁の簡略化が遅れてきたのは、壁の限定された厚さ・多くの開口部分と木部や設備などの貫通部分、筋交い、コンセントなどが集中し複雑なことによる。複雑さは防湿・気密シートの施工と補修の面倒さになり、ここが簡略化されることが望まれて来た。最近、工夫されたボード気密工法や耳長袋入り断熱材工法はこの点が改良されている。
 
 
 
 
 
■2■ 外壁の最先端
 
 
◆◇ 耳長袋入り断熱工法
 
図1  前回はボード(合板)気密工法を詳しく紹介したが、今回は耳長袋入り断熱工法を紹介する。それぞれのメーカーが独自に開発し、 lll 地域以西で次世代省エネルギー基準の評定を取得しているが、統一名称がないことから「耳長袋入り断熱材工法」は筆者のとりあえずの造語である。
 
 各社がQ-BEST工法、MAT21、硝子繊維協会ではGW-DAN[→図1]と呼称している。次世代基準レベルの住宅が、従来の断熱施工に少し手を加えるだけで一般的な木造住宅(新省エネ基準の断熱工法)と比べて、7,000〜14,000円/坪の差額で建てられる触れ込みである。これまでにない低コストで、住宅性能表示制度の温熱環境「等級4」、次世代基準レベルをクリアした断熱・気密工事ができる簡易充填断熱工法である。
 
 特殊な材料や道具も必要とせず簡単施工であり、専用断熱材を使用することで、気密施工もぐんと容易になった。
 
 これらの工法の特色は外壁に耳長袋入りグラスウール断熱材を充填することだ。高密度グラスウール断熱材の全ての面をフィルムで包み込み、高性能防湿気密フィルムをあらかじめセットした壁用グラスウール断熱材である。従来の袋入り断熱材は室外側が孔あきポリエチレンフイルムで透湿性をもたせ、室内側のポリエチレンフイルムは防湿性のみをもたせている。耳長袋入り断熱材の室内側のポリエチレンフイルムは、防湿機能だけではなく気密機能をもたせている。
 
 4辺の耳幅を大きく取り、この耳を互いに重ね合わせることで、連続した防湿気密層を簡単・確実に施工できる。壁については、防湿気密フィルムの別張施工が必要ない。
 
 耳長袋入り断熱材は、ポリカットQ、SunQ 、フルパック21などの名称で市販されている。
 
 
◆◇ 付加断熱工法
 
 各種の付加断熱工法は別回で紹介する。
 
 
 
 
 
■3■ 天井,屋根の最先端
 
 
◆◇ 桁上断熱工法 〜桁上断熱工法で省力化かつ高性能
 
 桁上断熱は、[図2]のように天井の上の断熱・気密部分が天井と分離されている。断熱厚を容易に増やせる、屋根の形状に左右されない、といった天井断熱の長所をそのままに、欠点であった先張りシートと気流止めの施工や、配線・配管などによる防湿・気密シートの補修などの手間を減らした合理化された工法である。熱橋も小屋束程度と、極めて少ないものとなっている。
図2

 天井が断熱・気密部分と分離されることにより電気配線、設備配管、ダウンライトなどの貫通分の補修の必要がなくなったのだ。
 
 施工上のメリットは大きく、天井と外壁および天井と間仕切壁の取合い部分において、桁、小屋梁、頭つなぎなどで空隙を塞ぐといったように、在来丁法で弱点となっていた部分に改良が加えられている。そのため、こうした取合い都分に気密化の先張りシートや気流止めを施工する必要がなく、施工精度による性能のムラがなくなった。
 
 断熱部分の桁上が天井部分と別々になっていることから、和室の張り柾天井なども、断熱・気密工事のことを考慮せずに通常どおり施工できる。天井断熱と比べて、断熱材受け合板や根太でコストアップするが、工程が合理化され、施工が慣れていなくても断熱・気密性能のばらつきが少ない。
 
 使用される断熱材は、グラスウールやロックウールなどのマット状、グラスウールやセルロースファイバーなどの吹込み断熱材はもちろんのこと、ボード状断熱材も適している。断熱部分と天井部分が分離されているので、支持材なしでボード状断熱材の重ね張りができ、次世代省エネルギー基準も簡単にクリアできる。ウレタンボードやスチレンボードはもちろん、これから普及し始めている自然系断熱材の粒状杉樹皮断熱材や軽量木質軟質繊維ボードを使う場合には最適である。
 
 温暖地・寒冷地のどちらにも適用できるが、屋根が複雑になりがちの温暖地で、従来の工法では断熱・気密施工に手問がかかりかねないことから、設計者と施工者が断熱・気密施工に慣れていない温暖地にも向いているといえる。寒冷地なら、屋根外張断熱や屋根充填断熱と違い、断熱材の厚さを300mm以上に容易に低コストで厚くでき熱損失を小さくできる。又、雪国の無落雪屋根[→写真1]に適しているなど、これからもっと注目されてよい工法である。
写真1
▲ 雪国の無落雪屋根と雁木の施工例

 他の断熱・気密以外の長所では、建て方の段階で合板を施工するため、足場ができ作業効率が良くなる。小屋組横架材に合板を張ることにより水平剛性を高くすることがあげられる。合板を打ち付けるために小屋梁を910?間隔でかける必要があり、材積数が増加してしまうという間題点もある。
 
 断熱・気密施工が慣れた工務店では、[図3]のように電気配線、設備配管、ダウンライトなどの貫通分の補修の必要があるものの、使用する合板を天井の仕上げ材と兼用すれば天井下地を省略することができる。桁上(天井)断熱工法とでも言おうか。
図3

 
◆◇ 桁下天井耳長袋入り断熱工法
 
 まだ耳慣れない工法だと思うが、桁上断熱工法を[図4/図5]のように更に簡略化・低コスト化させた工法である。桁上断熱工法の項で、使用する合板を天井の仕上げ材と兼用すれば天井下地を省略することができる[図3]と、説明したが、仕上げ材は合板だけではなく、後やり施工で無垢板などが自由に選択できる
図4/図5

 外壁の耳長袋入り断熱工法の長所と、桁上断熱工法の天井と外壁および天井と間仕切壁の取合い部分において、新たな部材の気流止めを設けることなく、桁、小屋梁、頭つなぎなどで空隙を塞ぐ工法の長所を取り入れた工法である。
 
 断熱材の厚さが300mm以上必要とされる場合は、切り妻屋根などでは外壁と天井の取り合う部分で、必要断熱厚に応じて軒桁を上げ屋根高さの位置を決める。
 
 無落雪屋根の桁上断熱工法の場合は、屋根が完成してからの断熱・気密施工は天井裏が狭く施工しにくく、断熱・気密施工してから屋根を施工するのは天候に左右される欠点がある。しかし、桁下天井耳長袋入り断熱工法では屋根が完成してから、屋内側から断熱・気密施工ができ、雨が多い日本に適した工法である。
 
 小屋組の小屋梁、桁、頭つなぎなどの横架材や天井下地材の下端に耳長袋入りグラスウールの耳をステップルで止める。外壁の耳長袋入り断熱工法と同様にこの耳を互いに重ね合わせることで、連続した防湿気密層を簡単・確実に施工でき、防湿気密フィルムの別張施工が必要ない。求める断熱性能に応じて、断熱材は必要な厚さを耳長袋入り断熱の上に増していけばよい。耳と耳の重ねを押さえる役目も果たす天井仕上材は、合板、樹皮ボード、木板、石膏ボードボードなど押さえができるものなら何でもよい。
 
 
◆◇ 屋根充填断熱工法
 
 屋根勾配なりのタルキ間に断熱材を充填する方法で、タルキは在来工法でもツーバイフォー部材の206(40×143mm)、208(40×190mm)、210(40×241mm)を使用する。ツーバイフォー部材は人工乾燥され品質も安定している。また、長尺なので日本の12尺物13尺物よりも端材が少なく経済的である。
 
写真2  屋根充填断熱は[図6]のように、屋根天井と外壁の取り合い部分と、屋根天井と間仕切り壁の取り合い部分が桁、小屋梁、頭つなぎなどで空隙が塞がるように在来工法が改良されている。そのため、こうした取り合い部分に気流止めが必要なく、施工の簡略化と性能の安定化が計られている。先張りシートは天井断熱よりは省略されるが、タルキ[→写真2]と母屋との取り合い部分、タルキと桁との取り合い部分に必要である。
図6

 次世代省エネ基準では、高性能グラスウール16kgなどで地域 l は225mm、 ll 〜 Vは185mmと天井断熱材よりワンランク厚めになっている。ツーバイフォー部材の寸法に合わせたような断熱材の厚さである。外壁に近い環境となるため、外壁に準じた、室内側から防湿・気密シート層、断熱材、防風・透湿層、通気層などの構成になる。
 
図7  この防風・透湿シートを使用する場合はタルキの上端に張り、その上に通気胴縁を設け野地板を張る。急勾配の屋根では防風・透湿シートの上での施工作業が滑りやすく危険が伴うことと、作業が防風・透湿シートと通気胴縁の分が増えることから、[図7]のように通気層専用部材を使用する。通気層専用部材には、通気くん、スペースエースなどの商品がある。通常の屋根工事が済んでから、室内側から上向きに野地板の下のタルキ間に通気層専用部材をはめ込み、その下に断熱材を充填する。防風・透湿シート使用時の通気胴縁は必要ないが、通気層専用部材で作られる通気層の厚み分がタルキの寸法が大きくなる。
 
 通気層は棟の棟換気に連続するが、棟換気部材には専用の通気くん300、リッヂベンツなどの商品がある。
 
 従前の防風・透湿シート型の改良から通気層専用部材型が生まれてきたのだが、筆者は防水を最重要に考えて防風・透湿シート型に戻っている。防水下地がアスファルトルーフィング、(防水)防風・透湿シートと2重になっている。後述する、水平屋根充填断熱工法では防水が決めてになり、改めて長期間の防水の大切さを知ったからだ。
 
 断熱材は、グラスウール、ロックウール、吹き込みようのグラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、粒状杉樹皮断熱材、現場発泡ウレタンなどほとんどの種類を使用することができる。耳長袋入りグラスウールを充填すれば、気密層を改めて張る必要がなくいっそうの簡略化がすすめられる。ボード状の断熱材も使用できないことはないが。充填施工の精度(断熱材欠損、気密)の維持が困難であり、あまり適さない。普通は、屋根工事が完了してから室内側から上向きの作業で断熱材をタルキ間に充填するが、天気予報をみながら降雨を避けて上から一気に断熱材を充填すると施工が楽である。
 
 屋根充填断熱は屋根裏空間が見えるので、谷や隅が多数ある複雑な屋根の形には、施工性、性能、意匠性状向かない。シンプルにまとめあげ、意匠性と構造をともなった梁などの架構を美しく仕上げる。
 
 タルキの間隔が455mmで、その部分が熱橋となり、断熱屋根面積に対して約14%を占める。解決策としては付加断熱があり、外部に付加する、内部に付加する、両方に付加するタイプがある。内部に付加する方法が、屋根工事の取り掛かりの早さ、配線スペースにもなるどの利点がある。
 
 断熱材を厚くするには、タルキ断面が大きくなるなど、付加断熱材の支持材が必要になり、断熱材以外のコストアップも考えなければならない。
 
 
◆◇ 水平屋根充填断熱工法
 
 桁下耳長袋入り断熱工法と共にまだ耳慣れない工法だと思うが、[図8]と[写真3/4/5]のように屋根充填断熱工法の屋根の水勾配を0の水平にした工法である。断熱・気密の考え方・注意点は、屋根充填断熱工法と同様である。桁上断熱工法のようでもあるが、屋根裏空間がない。それぞれの工法の良さを取り入れようとした工法ではなく、デザインに優れた無落雪屋根を追求した結果生まれた工法である。筆者はこの昨年から3戸の住宅に採用している。
図8
 
写真3  [写真3]
 水平型無落雪屋根の施工例
写真4  [写真4]
 天井はすっきりおさまる
写真5  [写真5]
 「水平屋根充填断熱工法」

 これまでの木造住宅の無落雪屋根はパラペット型、M字型が主流で漏水事故が度々あったり、デザインが良くなく景観形成にも問題があった。それらの点が改良されたのが水勾配程度の3/100前後の極めて少ない勾配型の桁上断熱の無落雪屋根である。しかし寒冷時は無落雪だが、気温が上がれば屋根の雪は滑り落ち危険であり、屋根勾配ほとんど水平だが微妙な勾配は中途半端に感じられる。それに対し勾配が全くない水平屋根充填断熱工法は落雪がなく、伸びやかな庇をもった水平な屋根は明快でデザインがスッキリしている。0/100の屋根は留萌の(株)吉田建設に実績があり、雨仕舞と漏水は0/100も3/100も一緒であると確信している。著者設計の5年経った3/100の住宅も、1年経った0/100の住宅も漏水はない。





■4■ 各部位の組合わせ
 
 
 これまでは、外壁、天井・屋根の部位別に説明してきたが、各部位の組合せでは、施工の簡略性では屋根垂木充填断熱・外壁ボード気密充填断熱・基礎断熱の組み合わせが薦められる。コストが最優先の場合では桁下天井耳長袋入り断熱・外壁耳長袋入り断熱・基礎断熱の組み合わせが薦められる。
 
 
 
 次回では、一つ目は今回に続いて、代表的な各部位の組合せの工法の詳細と施工手順を説明する。二つ目にミネラル繊繊維以外の充填断熱工法を説明する。
 
 
 
 

vol.003
vol.005