vol.005 充填断熱(従来型)の最先端と注意点,コスト2





 前回は、グラスウール充填断熱工法の最先端を、外壁、天井・屋根の部位別に説明した。今回は、先回の続きとして代表的な各部位の組合せの工法の詳細を説明する。概念図だけではなく、実例で考え方や詳細図や写真を紹介する。
 
 各部位の組合せでは、施工の簡略性で屋根垂木充填断熱・外壁ボード気密充填断熱・基礎断熱の組合せが薦められる。コストと簡易性が最優先の場合では桁下天井耳長袋入り断熱・外壁耳長袋入り断熱・基礎断熱の組合せが薦められる。
 
 他に、屋根が複雑な場合は桁上断熱・外壁ボード気密充填断熱・基礎断熱の組合せ、無落雪と多目的に適した水平屋根垂木充填断熱工法の実例を紹介する。
 
 こうした実例は、充填断熱工法や外張断熱工法を含めた断熱・気密工法の種類が先にあるのではなく、それぞれの家々に適した断熱・気密工法を選択することが大切でこれから問われている事である。
 
 
 
 
 
■1■ 施工の簡略性を重視
             〜屋根垂木充填断熱工法・外壁ボード気密充填断熱・基礎断熱の組合わせ実例
 
 
◆◇ 外壁が真壁の場合[→図1]
 
図1  「木のまちの家」の実例で説明する。秋田市の郊外の端正な分譲地のなかでも、特に、木をテーマにした景観と家づくりを考えた区画の一角にある。外観はもちろん、内部空間も木材や自然素材で内装される。木板の内装材が見えるばかりでなく、地産地消の構造材の柱や梁が見える真壁造りである。柱が見える真壁造りであることから高断熱・高気密住宅で真壁を造りやすい外壁ボード気密工法を採用している。天井・屋根も小屋組が見える屋根充填断熱工法である。外壁に木板を張った延焼の恐れのある部分の下地はダイライト、その他の下地は合板のボード気密工法である。
 
◎土台まわりの取合いの詳細[図1-a]
 基礎と土台の取合いに基礎・土台専用パッキンを挟み込んで気密を維持する。外壁と土台の取合い気密は土台の外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。内側は、従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの土台に土台や大引が差し込まれる取合いに先張りシートの必要はない。壁から垂れ下がる防湿シートは土台に根太掛けや胴縁で抑え込む程度でよい。防湿・気密テープ処理の必要はない。
 
◎胴差まわりの取合いの詳細[→図1-b/図1-b']
 気密は胴差の外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。内側は、真壁なので防湿シートは柱や胴差しや頭つなぎや梁に絡まなく、従前の標準な先張りシート工法のように胴差に頭つなぎや梁が差し込まれる取合いに先張りシートの必要はない。
 
◎桁まわりの取合いの詳細[→図1-c]
写真1  外壁と屋根の取合いの気密は軒桁が中間に介在する。外壁と軒桁の気密は外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。屋根と軒桁の気密は軒桁の上端と垂木・垂木の転び止めの下端に先張りシートを挟み込み、外壁側は気密パッキンや気密テープで維持し、垂木下端では先張りシートの重ね代を充分にとり胴縁などの下地材と仕上げ材で挟み込むか防湿テープを張り気密を維持する。ここでの先張りシートは外壁が大壁の場合は必要ないが真壁の場合は必要だ。この部位の先張りシート[→写真1]に特色がある。先張りシートの材質はタイベックのような透湿防水シートである。また、外まわりの軒桁に頭つなぎや梁が差し込まれる取合いには、従前の標準な先張りシート工法のように先張りシートの必要はない。
 
 
◆◇ 外壁が大壁の場合[→図2]
 
図2  「秋田スギの家」の実例で説明する。「秋田スギの家」は、建設されることが条件の秋田県のコンペの「魅力ある秋田スギ活用住宅建設提案」(コスト重視型)の最優秀賞受賞案である。7月27日で完成し、31日から8月31日まだ一般公開する。
 
コスト重視型でありながら、地域材やその加工材や工法を工夫し、省エネルギーで豊かな空間にしている。[→写真2/写真3]
 
 
外壁が大壁の場合は、断熱材や防湿材や気密材が、3尺や6尺ごとの柱・胴差し・軒桁で切れることなく全体的に一面連続で施行でき、真壁造りより納まりが随分と楽である。施行の楽さは工賃のコストダウンにつながり、コスト重視型に対応している。コスト重視型といいながらも、吹き抜けた居間空間は屋根垂木充填断熱で小屋組が見え、外壁は大壁であるが付け柱で対応し豊かな空間に仕上げ、見せ所となっている。[→写真4]
写真2
写真3 写真4

 施工・販売は不動産・建売り会社であり、施工の職人も高断熱・高気密住宅の施工は初めてなのだが、施工が簡易な外壁の無アスベストのスレートボード気密工法と屋根垂木充填断熱工法で断熱・気密性能を維持している。
 
 外壁は、秋田スギの縦羽目張目板打ちの準防火構造で、22条地域の延焼の恐れのある部分でも使用できる。木板の下地が無アスベストのスレートボード、軸間にグラスウールを充填し、内装は石膏ボード下地である。[→写真5]
写真5

◎土台まわりの取合いの詳細[→図2-a]
 基礎と土台の取合いに基礎・土台専用パッキンを挟み込んで気密を維持する。外壁と土台の取合い気密は土台の外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。内側は、従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの土台に土台や大引が差し込まれる取合いに先張りシートの必要はない。壁から垂れ下がる防湿シートは土台に根太掛けや胴縁で抑え込む程度でよい。防湿・気密テープ処理の必要はない。以上、文章上の表現は真壁と同じくなってしまうが、柱や横架材などの軸組ごとに防湿シートが途切れることがないので施工性は簡易で雲泥の差である。
 
◎胴差まわりの取合いの詳細[→図2-b]
図1_2/写真6/写真7  気密は胴差の外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。内側は、従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの胴差に頭つなぎや梁が差し込まれる取合いに先張りシートの必要はない。防湿シートは下地の木材と石膏ボードなどの仕上げ材で抑え込む程度でよい。防湿・気密テープ処理の必要はない。
 
◎桁まわりの取合いの詳細[→図2-c]
 外壁と軒桁の気密は外側に張られるボードと気密パッキンや気密テープで外側で維持する。軒桁とそこに差し込まれる頭つなぎや小屋梁などの取合い部分に先張シートは必要なく、垂木下端の防湿シートを外壁内側の防湿シートと重ね代充分に連続させる。重ね代を充分にとった継ぎ目箇所は胴縁などの下地材と仕上げ材で挟み込むか防湿テープを張り気密を維持する。ここでの先張りシートは外壁が大壁の場合は必要ない。
 
 
◆◇ 屋根垂木充填断熱が、防湿・気密シート[→図1-2/写真6]と耳長袋入りグラスウール[→写真7]の場合
 
 
屋根垂木充填断熱は、従来は[写真6]のように断熱材と防湿・気密シートを別々に施工してきたが、後述する桁下耳長袋入り断熱材[→写真7]の使用で断熱・気密施工が更に簡易・ローコスト化できる。
 
 
 
 
 
■2■ コストと簡易性最優先
             〜桁下天井耳長袋入り断熱・外壁耳長袋入り断熱材・基礎断熱の組合わせ実例[→図3/写真8]
 
 
図3  40万円/坪前後を切ったローコスト住宅に採用しているが、基本的な高断熱・高気密工法である。35万円/坪の実例もある。自由な空間構成や仕上げ材の選択がし難いが、割り切ったローコスト住宅は魅力である。
 
 隙間相当面積は手慣れた工務店では1cm2/m2を切り、0.6cm2/m2の気密性能ができている。熱損失係数は主に天井の断熱材の厚さに左右される。
 
 
◆◇ 土台まわりの取合いの詳細[図3-a]
 
 基礎と土台の取合いに基礎・土台専用パッキンを挟み込んで気密を維持する。外壁と土台の取合いの防湿・気密は耳長袋入りグラスウールの袋の防湿シートの耳を土台にステップルで仮止めし、根太や胴縁などで挟み込み押さえる。
 
 内側は、従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの土台に土台や大引が差し込まれる取合いに先張りシートの必要はなく、防湿・気密テープ処理の必要もない。
 
 
◆◇ 胴差まわりの取合いの詳細 [図3-b]
 
写真8  防湿・気密は耳長袋入りグラスウールの袋の防湿シートの耳を胴差にステップルで仮止めし、根太や胴縁や石膏ボードなどで挟み込み押さえる。従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの胴差に頭つなぎや梁が差し込まれる取合いに先張りシートや防湿・気密テープ処理の必要はない。
 
 
◆◇ 桁まわりの取合いの詳細[図3-c]
 
 防湿・気密は耳長袋入りグラスウールの袋の防湿シートの耳を軒桁にステップルで仮止めし、野縁や胴縁や石膏ボードなどで挟み込み押さえる。従前の標準な先張りシート工法のように外まわりの胴差に頭つなぎや梁が差し込まれる取合いに先張りシートや防湿・気密テープ処理の必要はない。
 
 
◆◇ 天井の詳細[図3-d]
 
 
天井は、在来工法の普通の天井のように野縁が45×45の@455と吊り木が@910の構成であれば耳長袋入りグラスウールが欠損が多く精度よく収まらないので、2×4工法の天井根太のようなシンプルな構成にする。
 
 
◆◇ 透湿・防水シートを外側気密層とする
 
 室内側の耳長袋入りグラスウールの耳を連続させ防湿・気密をとるが、外側の通気層下地の既存のタイベックなどの透湿・防水シートを、通常より多少精度よく施工し気密層に利用する。継ぎ目や開口部を通気胴縁で押さえたり、気密テープを使用し気密が維持できるようにする。こうした簡易な方法でも、両方の気密層で、隙間相当面積は工務店では1cm2/m2を切っている。
 
 
 
 
 
■3■ 複雑屋根に適した桁上断熱工法の実例[→図4]
 
 
図4  和風住宅は屋根や天井が複雑になるので「入母屋の家」[→写真9/写真10]は桁上断熱工法を採用した。「入母屋の家」は床面積が約100坪の大きな家である。プランがL字型、屋根は入母屋、長い土庇、天井の高低差、和室の銘木天井、設備配管、ブラインドボックスなど断熱・気密部分と複雑に絡むが、桁上断熱工法ではそれらが分離でき天井や屋根の仕様が自由になる。
 
 高断熱・高気密の和風住宅で問題になるのは座敷の広縁の大きく長く連続した掃き出し窓の、住宅レベルでは限度を超した熱損失の大きさである。このような場合は真ん中に玄関を配置し、座敷部分と日常の居住部分を断熱的・暖房設備的に分離している。日常の居住部分は全室全日暖房とし、座敷部分は使用時に暖房する。座敷部分も高断熱・高気密仕様で、広縁の大きく長く連続した掃き出し戸は断熱・気密木製サッシである。
写真9
写真10

 
 
 
 
■4■ 無落雪と多目的に適した水平屋根垂木充填断熱工法[→図5/写真11/写真12]
 
 
 雪国では敷地が狭いと屋根から隣地に落雪するトラブルが多い。設計者が屋根の形に頭を悩めるところだ。水平屋根垂木充填断熱工法は、デザイン的に様にならなく、トラブルも多い、従来の無落雪M型屋根からの脱却解決方法である。コストも、通常のガルバリウム鉄板立平葺きに、通し吊り子と板金テープの分の150円/m2前後アップで済む。
 
 手狭な敷地では、水平屋根の上に簀子を引いたり、緑化屋根の工夫するなどして、屋上庭園や大きな物干し場にできる。
写真11 写真12

 
 
 

vol.004
vol.006