vol.006 外張断熱工法のポイントと注意点
 
 
 
 
 
■1■ 外張断熱工法の現状
 
 
 高断熱・高気密住宅は外張断熱工法でなければならい風潮は過ぎ去った感じがし、一時のブームであった。この機会に外張断熱工法を基本から考えてみよう。外張断熱工法の住宅のほとんどがフランチャイズや部材供給方式であり、施工者はそこでの方式しか知らない。自社が加入しているフランチャイズ方式が最高であると信じ込んでいる。そう思い込まないと営業ができないのか、説明や勧誘が強引である。物事には一長一短があり、自分サイドの事柄が最高であるとは中々言えないのが道理であるが、そうでない事がまかり通っている変な市場である。
 
 充填断熱工法の説明では、紙面の関係からその工法が置かれている状況と基本を省略し、最新の簡略化された工法や高性能な工法を紹介した。外張断熱工法の説明では、逆に基本を説明するのは、非標準なフランチャイズや部材供給方式しか知らなく基本を押さえていない施工者が多いからだ。施行が簡単と思い外張断熱工法に飛びついているが、考え方や施行が雑であると性能は保持できない。基本を知っていると、押さえられるべき所は押さえられるが、そうでないと肝心な応用力が問われる所が抜けてしまう。
 
 
 
 
 
■2■ 外張断熱工法の良さ〜50mm断熱材の外張の施工と性能の簡易性
 
 
◆◇ 外張断熱工法のと付属品の組合せ
 
 フランチャイズや部材供給方式は、断熱・気密工法にプラスして、二重通気、夏・冬可変装置、屋根裏強制換気、床下除湿装置、空気清浄機、太陽熱・地熱利用などの付属部材や設備で目玉商品を構成している。
 
図1  断熱・気密工法そのものはいたって素朴である。
 
 外張断熱工法は一頃考えられていたように万能ではない。外張断熱工法の良さを引き出す家屋のタイプは、形のデコボコが少ない、下屋、出窓・霧除け・バルコニーなど突出部位がないなどの単純な形。厚さ50mm程度の薄い断熱材で外張するタイプである。
 
 
◆◇ 最も簡略な50mm外張[→図1]
 
 最も簡略で最も普及率が高い外張断熱工法は、厚さ50mmの石油系発砲板状断熱材の単層外張りである。耐力壁併用下地合板、防湿・気密層、透湿・防水層がなく、いきなり軸組の外面に板状断熱材を張り、断熱材の継目は気密テープで済ましている。高コストの石油系発砲板状断熱材を使いながらも、必死に総コストを押さえている。
 
 
 
 
 
■3■ 外張断熱工法の基本を知る
 
 
 外張断熱工法は、板状断熱材と下地の組合せの張り方による気密の取り方について、外壁・屋根・基礎の各部位のすべてが外張か充填との組合せについての数多い種類がある。
 
 
◆◇ 気密の取り方と板状断熱材の張り方
 
 外張断熱工法の気密の取り方は、板状断熱材の単層張り、板状断熱材の2重張りで気密保持、防湿・気密シートの下地あり、耐力壁合板下地あり、耐力壁合板と防湿・気密シートの下地ありのおおよそ5タイプに分類される。板状断熱材にテープを張る簡単なものから合板と気密シートを併用したしっかりしたものまで様々である。
 
(1)板状断熱材のn単層張り[→図2]
図2  板状断熱材の継目に気密テープを張り気密をとる。外張断熱工法で最も低コストである。在来軸組筋交い工法は、日々の強風や地震で大揺れし軸組が変形するが板状断熱材の継目の気密テープが追随できなく、気密性能の低下と断熱欠損に注意が必要である。また、軸組の木材の乾燥による収縮・ひび割れ・ねじれなどの変形にも板状断熱材の継目の気密テープが追随できなく、気密性能の低下と断熱欠損に注意が必要である。断熱欠損は結露の被害をもたらす。最も普及率が高い工法だが、今後、気密材の下地がある工法に移行したい。
 
(2)板状断熱材の2重張りで気密保持[→図3]
図3/4/5  外張断熱工法の初期に登場し、テープなどの気密材を使用することなく板状断熱材の重ね張りで気密をとろうとする工法だが、現在の施行は見受けられない。
 
(3)防湿・気密シートの下地あり[→図4]
 板状断熱材の継目に気密テープを張り気密をとる。(1)よりは、軸組の変形による気密性能劣化は少ないが、断熱欠損は同様である。
 
(4)耐力壁合板の下地あり[→図5]
 合板などの継目には気密テープを張り気密をとる。合板や他のボードの耐力壁により、日々の強風や地震で大揺れし軸組が変形することは少ないが、軸組の木材の乾燥による収縮・ひび割れ・ねじれなどの変形に注意が必要である。
 
(5)耐力壁合板と防湿・気密シートの下地あり[→図6]
 防湿・気密シートの重ね代を大きくするか気密テープで気密をとる。合板や他のボードの耐力壁により、日々の強風や地震で大揺れし軸組が変形することは少なく、軸組の木材の乾燥による収縮・ひび割れ・ねじれなどの変形に気密シートで対応できるが、断熱欠損には注意が必要である。
図6

 外張断熱工法の利点を生かし、高コストにはなるが性能劣化の少ない、(5)の耐力壁合板と防湿・気密シートの下地ありを採用したい。
 
 
◆◇ 外張各部位の組合せ
 
(1)外壁・屋根・基礎の各部位のすべてが外張[→図7]
 外張断熱工法の標準であるが、板状断熱材の厚さに限界があり現状の断熱性能止まりでポスト次世代省エネルギー基準に対応が難しい。
図7

(2)外壁・基礎が外張で天井・屋根が充填[→図8/9]
 断熱施工が面倒な外壁と基礎部分を簡略な板状断熱材の外張をそのままにし、屋根の外張断熱を天井充填断熱や屋根垂木充填断熱にする。天井充填断熱では断熱材をブッローイングなどで厚さ300〜400mmに簡単にでき、外張断熱の高性能化の難点を解消できる。屋根垂木充填断熱も断熱材の厚さを垂木間で厚さ200mm、付加して厚さ300mmまで対応できる。
図8 図9

(3)外壁だけが外張[→図10]
 さらに高性能化するには、基礎断熱を断熱材の厚さを200mm床充填断熱に置き換え、断熱性能をアップする。
図10

 天井充填断熱や屋根垂木充填断熱は断熱材を厚く施工しやすいが、床充填断熱の施工は段差や貫通部分が多く施工が煩わしい部位であり、高性能化するには(1)の外壁・基礎が外張で天井・屋根の充填断熱が適している。
 
 
 
 
 
■4■ 断熱レベルと外張断熱工法
 
 
◆◇ 環境問題
 
 次世代省エネルギー基準が普及してきたが、更なる普及を求めて国(国土交通省)ではより一層、温暖化対策・省エネ関連の画期的な税制改正要望・施策案を出している。背景にあるのは、建築関連の放出量が約36%もしめ、関連業界の削減努力が必用である、環境問題の一つの地球温暖化の二酸化炭素削減と省エネである。
 
 
◆◇ 次世省エネルギー基準の断熱レベル
 
 各地域の気候風土の違いによった断熱・気密性能が求められ、品確法・性能表示制度と次世代省エネルギー基準に沿うが、新省エネルギー基準ではなく、少なくとも次世代省エネルギー基準以上のレベルが欲しい。品確法の「温熱環境に関すること」の性能表示は、は等級(4、3、2、1)で表示され、等級4が次世代省エネルギー基準である。 高断熱・高気密住宅が普及している寒冷地の現状は、次世代省エネルギー基準に準じた程度であろう。もちろん、まだまだ意識の低い住み手と造り手は新省エネルギー基準程度に甘んじている。新省エネルギー基準程度では、結露防止、暖かく温度差が少ない温熱環境までは至らない。
 
 
◆◇ ポスト次世代省エネルギー基準の断熱レベル
 
 次世代省エネルギー基準程度は何も寒冷地ばかりでなく、他の地域でも必要である。今後は、省エネや良好な温熱環境ばかりでなく、二酸化炭素削減などの環境問題の解決が望まれているからだ。その先に西欧などのさらに厳しい基準が待っている。実際に次世代省エネルギー基準のQ値程度の性能では、全室暖房すると、これまでの個別暖房消費エネルギーの2倍から3倍かかってしまう。二酸化炭素の放出量も2倍から3倍になってしまう。
 
  l 地域はフランス・ドイツ・アメリカの基準くらいであるが、 ll 地域ではフランス・ドイツ約1.4倍、 lll 地域ではドイツの約1.8倍フランスの約1.5倍、 lV 地域ではフランスの1.6倍熱損失係数が大きい。[→表1]
表1

 次世代省エネルギー基準といっても、外張断熱がかろうじてクリアできる定められたQ値程度ではなく、少なくても公庫の断熱材の厚さの早見表以上にしたい。この厚さに開口部を樹脂サッシ(Low-Eペアガラス)以上にレベルアップすれば環境や省エネ基準が厳しいフランスやドイツの基準になる。
 
 この先々には、 lll 地域以西はフランスやドイツの基準並みに、 l 地域は北欧並みの断熱レベルのポスト次世代省エネルギー基準レベルが望まれる。
 
 
 
 
 
■5■ 50mm外張断熱工法は次世代省エネルギー基準ぎりぎり
 
 
 次世代省エネルギー基準は、計算による方法と断熱材の種類や納まりなどの仕様による方法がある。手っ取り早い方法は[断熱材の種類・厚さ・納まりなどの仕様]の早見表による方法であり、各部位の各種断熱材の厚さや、開口部の性能の一覧表から使用建材を選択する。しかしこの場合、独自の工夫された工法に融通性がないのと、屋根断熱の外張断熱工法及び充填断熱工法では、断熱材の厚さ寸法と支持部材や垂木の断面寸法とのミスマッチが不合理である。
 
 この問題を解決するには、断熱材と共に開口部や換気などを総合的に把握した、バランス良い熱損失係数や年間暖冷房負荷計算を個別にする。他に大手ハウスメーカーやフランチャイズや部材供給方式のように型式認定を受ける方法がある。
 
 次世代省エネルギー基準の各地域の熱損失係数は以下の基準値である。
 
l 地域:1.6W/m2K、ll 地域:1.9W/m2K。lll 地域:2.4W/m2K
lV地域:2.7W/m2K、V地域:3.7W/m2K。
 
 早見表からは、 lll 〜 lV 地域の断熱仕様をみると、外張断熱の押出法ポリスチレンフォーム3種で屋根が115mm、壁が50mm、基礎が50mmの厚さである。この仕様を熱計算すると、熱損失係数が2.13W/m2Kである。ここでは、屋根の外張断熱の厚さが115mmになっているので、厚さが50mmでは基準値を満たさない。
 
 そこで熱計算を個別にするわけだが、屋根、外壁、基礎の各部位の厚さが50mmの押出法ポリスチレンフォームの外張断熱工法の40坪(暖房相当延床面積)前後の住居の、計算による熱損失係数は2.27W/m2Kである。?地域の2.7W/m2Kは超えているものの、?地域の2.4W/m2Kぎりぎりである。計算例は単純な形なので基準値をぎりぎり満たしているが、複雑な形の表面積が多く窓が大きい住居は基準値を超えてしまう。
 
 
 
 
 
■6■ 外張断熱工法とポスト次世代省エネルギー基準 
 
 
  l 地域、 l 地域、 lll 地域の北部では高断熱・高気密化の普及率が高いが、lll 地域の南部の普及率はまだまだである。しかも lll 地域では基準値の2.4W/m2Kでは物足りなく、実際に暖房エネルギー消費量が l 地域・ ll 地域より多くなっている。[表1]のフランスやドイツなどのヨーロッパ並みの基準までいかないまでも、 ll 地域が l 地域の基準値、 lll 地域が ll 地域の基準値、lV 地域が lll 地域の基準値になって欲しい。
 
 これがポスト次世代省エネルギー基準であろう。
 
 次世代省エネルギー基準が普及することは嬉しい事だが、現状で次世代省エネルギー基準を満たしている生産者・供給者にとっては、他との差別化ができなくなってしまう。いち早くポスト次世代省エネルギー基準に対応する必要に迫られる。
 
 厚さ50mm程度の外張断熱では、 lV 地域でもポスト次世代省エネルギー基準には満たない。現状の次世代省エネルギー基準の早見表の lV 地域の断熱仕様の外張断熱の押出法ポリスチレンフォーム3種で屋根が115mm、壁が50mm、基礎が50mmの厚さ(熱損失係数が2.13W/m2K)では、現状の?地域:2.4W/m2Kがぎりぎりである。もう少しばかり強化し、フランス並みにならないまでも、熱損失係数が2.00W/m2Kまで性能をあげたい。
 
 
◆◇ 軸間充填補完、屋根垂木間充填補完でさらに断熱性能の向上
 
図12   l 地域を除いて、外張りの厚さの費用対効果の厚さの限界は、 ll 地域の仕様規定の押出法ポリスチレンフォーム3種で屋根が115mm、壁が50mm、基礎が100mmの厚さ(熱損失係数が2.13W/m2K)であろう。これ以上性能をあげるには、開口部の補強はもちろん、外壁の弱点を補強するには軸間に断熱材を充填するのが早道である。軸間を使用しないのはもったいなく、軸間に補完として簡略な施工の袋入り高性能グラスウール厚さ100mmを充填すると[図11]、[図11-2]、熱損失係数が2.00W/m2Kになり、ポスト次世代省エネルギー基準に対応する。さらに、厚さ50mmの屋根外張断熱の補完として、屋根垂木間に同様に簡略な施工の袋入り高性能グラスウール厚さ100mmを充填すると[図12]、熱損失係数が1.83W/m2Kになる。これに開口部を樹脂サッシ・Low-Eペアガラスにすると1.52 W/m2Kの高性能で、次世代省エネルギー基準の ll 地域はもちろん l 地域のレベルであり、lV 地域としてはポスト次世代省エネルギー基準を超え環境や省エネ基準が厳しいフランスやドイツの基準並みになる。
図11 図11-2

 
 
 

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