vol.007 外張断熱工法のポイントと注意点2
 
 
 
 
 
 外張断熱工法の良さは、形が単純で断熱材の厚さが50mm程度であれば、施工が比較的楽なことだ。欠点は、高コスト、ポスト次世代省エネルギー基準の性能を得る困難さ、強風や地震による建物の変形による性能劣化、木材の乾燥収縮変形による性能劣化、断熱材の垂れ下がり、桁まわりの複雑さ、火災時の確認、LCCO2の確認があげられる。
 
 前回は、内側に簡易な付加断熱をすることでポスト次世代省エネルギー基準の性能を得る方法、強風や地震による建物の変形による性能劣化、木材の乾燥収縮変形による性能劣化の対処を説明した。今回は、紙面に限りがあるので、断熱材の垂れ下がり、桁まわりの簡略化、火災時の確認、LCCO2の確認など気になる所を重点的に説明する。
 
 
 
 
 
■1■ 断熱材の垂れ下がり防止(外壁の支持力)
 
 
 外張断熱工法の断熱材にかかる加重は、一時的な静止的で単純な荷重ではない。日々の住宅の繰り返しの揺れ、木材の乾燥収縮、発泡プラスチック板状断熱材の痩せ・劣化によるビスの緩み、引抜きがある。
 
 在来軸組工法は、地震ばかりではなく平時の強風で揺れる。ボード状断熱材だけでは、この揺れについていけず、断熱欠損が生じたり、気密性能が落ちたりしている住宅が見受けられる。しかし、多くの工法は、揺れを少なくする重要な耐力壁の合板が省略されている。また、気密シートを省略し、ボード状断熱材の継ぎ目に気密テープを張っただけの外張断熱があるが、テープがはがれたりの経年変化により性能劣化が生じやすい。
 
 
◆◇ 木材の乾燥とビスの曲げ強度
 
図1/2/3/4  「外断熱だから軸組の木材は乾燥材でなくてもよい」と聞くことがあるが、眉唾ものだ。木材は乾燥すると想像以上に収縮する。含水率25%から平衡含水率の12%前後に乾燥になると105mm角の柱が幅方向に3-4mmも縮むので、17%以下の乾燥木材を使用する。
 
 断熱材を押さえる通気胴縁や受け材の柱や間柱の施工直後の状態の[図1]から、乾燥収縮による欠陥は、ビスの曲げ強度が十分な場合[図2]と、不十分な場合[図3]の2パターンがある。
 
 [図2]は木材の乾燥収縮から、ビスの曲げ強度が十分なのでビスの変形はないが通気胴縁と断熱材の間・断熱材と柱や間柱の間に空隙が生じ、気密性能の低下や外装材のゆるみを招く。ゆるみは強風や地震に揺られさらにゆるみが大きくなる。
 
 [図3]はビスの曲げ強度が不十分なので、通気胴縁と断熱材の間・断熱材と柱や間柱の間の空隙分がビスの変形で、外壁材が垂れ下がり、外装材のひび割れ、サッシまわりなどのシーリングの欠損を誘発する。
 
 
◆◇ 木材(通気層胴縁)の乾燥と外装材の釘の固定力
 
 [図4]の状態の通気胴縁の外装材の釘の固定力は、厚さが15〜18mmの場合は未乾燥材であれば外壁を押さえることができない。通気胴縁は厚ければ引き抜き強度が増し、スクリュー釘は引き抜き強度が強いことを表している。
 
 
◆◇ 断熱材の厚さを薄く
 
 外張断熱の発泡プラスチック板を木製の通気胴縁とビスで押さえるのは、断熱材の厚さは50mmが限度である。これ以上の断熱性能を望むのであれば、同じ厚さでも、押し出し発泡ポリスチレンB類3種より1.4倍断熱性能が良いネオマフォームなどの使用で、厚さを35mmなどに薄くすることが考えられる。
 
 
◆◇ 横胴縁に乗せる
 
図5  外張断熱工法の断熱材の垂れ下がりを防ぐには[図5]のように、発泡プラスチック板断熱材を切り離して、その間に横胴縁を埋め込み、横胴縁に乗せるなどの必要が出てくる。横胴縁は階間ごとに3カ所設ける。1階では土台水切り部分、胴差部分とその中間、2階では胴差部分と桁部分とその中間である。横胴縁に熱橋が生じ、外張断熱の良さを損なうが、断熱材の垂れ下がりを防ぐには有効である。
 
 
◆◇ ビスの曲げ強度
 
 支持力のない発泡プラスチック板を45mm×18mm程度の木製通気胴縁とビスで押さえ、更に胴縁に外装を持たせるため、力学的に空洞な発泡プラスチック板の50mmの部分で長いビスに曲げが発生する。防火サイディングなどの乾式は釘頭の部分や継ぎ目のシーリングの損傷がおこる。モルタル塗りなどの湿式はひび割れなどがおこる。それで、外装に、ズレや脱落の危険が出てくる。
 
 モルタル塗りならば、ビス1本(ビスの間隔を450mm)当たりの負担荷重は約11kgで、線形42mmのビスならば、先端の垂れ下がりは約4mmになり外装が垂れズレ下が大きい。ビスのピッチを300mmにすればズレ垂れ下がりは約2.5mmに減少する。発泡プラスチック板が30mmでビスのピッチを450mmならば先端部の垂れ下がりは約1.13mmで問題が少ない。(参考:建築知識2001年12月号122P住吉賢洋)微妙な垂れ下がり寸法であり、ビスの曲げ強度を確認し適格な選定、ピッチなどを熟考する必要がある。外装の重量も軽い物を使用するように努める必要がある。
 
 ビスの先端の垂れ下がりの他にも問題があり、線形42mmの太さのビスを受ける間柱の見付け幅である。標準は27mmで、幅広物で30mmであるが、45mmは欲しい。太いビスなので間柱の見付け幅27mmでは細く、ビスを打ち損じたり間柱が割れたりする。こうした状況は現場で多く見られる。
 
 
◆◇ 外張専用ビスの選定
 
図6  外張断熱工法の専用のビス類は多数販売されているが、特に勧めたいのが東日本パワーファスニングの[図6]の「断熱パネルビス」である。同製品は特に曲げ強度と木割れによる強度低下防止に優れている。
 
 通常のビスに要求されるのは、引き抜きと剪断力であり、外張断熱材の場合に生ずる曲げは想定されていない。一般流通品のビスは曲げが働く断熱材と木材の境目部分に、ビスの最も弱い部分のネジ山部分が入り込むが、「断熱パネルビス」は線形部分のみであり、しかも4.2mm線形(一般流通品は3.8mm)と太く、さらに焼き入れ処理の工夫で曲げに強く、一般流通品の約1.8倍ある。その他にも、短いネジ山とネジ外径6.0mm(一般流通品は5mm程度)で一般流通品の1.67倍引き抜き強度が強い。また、ツバ(フランジ)のフレキ刃が無理なく綺麗に仕上がり、先端にあるドリル刃で下穴が不要である。線形部分は表面をワックスコーティングしてあり、施工性に優れている。
 
 
 
 
 
■2■ 桁まわりの収まりの簡略化
 
 [写真1]のように、外張断熱工法の桁まわりの、軒桁の垂木の間の断熱材は、垂木ごとに切られてしまっている。断熱材の大きさは、垂木間の幅約41cm高さ約10.5cm(垂木の高さに同じ)に細切れにされている。7間の軒の長さであれば、約28枚に分断されている。軒桁は二方向にあるから約56枚である。気密を保持するのに、約58本の垂木の周囲と約56枚の細切れの断熱材の周囲にシーリングやテーピングをしている。
図1

 耐用年数が10年程度のシーリングは、納まりを考え、できる限り使用しないように努めるが、ここでは、大切な気密を頼りなく耐久性が乏しいシーリングに頼り切っている。比較的大きな地震で揺れると、一発でシーリングが切れてしまう。
 
 この部分は手間ひまがかかり面倒くさく、外張断熱工法の良さの簡略な施工とはいえない。また大きな熱橋になっている。
 
 ほとんどの外張断熱は[図7]のように垂木が外壁の外張の断熱材を貫通しているので上記のように断熱材が細切れになって面倒くさくなるが、[図8]のように垂木は断熱材を貫通しないで室内側で止める。屋根の外張の断熱材の上の45×35mmの通気胴縁を庇の長さに合わせて、45×45mmや45×75mmなどに断面寸法を大きくし垂木にする。2重垂木になる。上部の垂木は断熱材を貫通することなく納まりが単純になる。
図7図8
 
 
 
 
 
 ■3■ 防火性と断熱材
 
 
◆◇ 地震と火災
 
 大地震への対応が言われている。大地震時は揺れや地面の変形による建物の倒壊や損壊ばかりでなく、近年の神戸の地震のように、大地震や強大地震に火災はつきもので都市火災が恐ろしい。集団火災に強い都市づくり、防火建築が望まれている。
 
 これまでの日本の住宅の平均寿命は25年前後といわれ、その間に火災にあうことは稀であった。それが最近では、住宅の寿命が延び、50年・100年住宅に向かっている。50年・百年以上の耐久性を目指すこれからの長寿命の家は、50年に1回は大きな地震、100年なら2回大きな地震にあい、その内の1回は極めて大きく破滅的な地震である。歴史上、統計上がそうだし、品確法にもうたわれている。大きな地震には火災がつきものであることから、火災にあう確率が大きい。より、住宅の防火性能の向上に努める必要がある。
 
 
◆◇ EUの厳しい防火基準の現状
 
 ヨーロッパEUの新しい建築材料防火等級はA1, A2〜Fまで7つに分けられている(→[表1])。
[表1] EUの建築材料防火等級
燃えにくい
燃えやすい
A1 グラスウール、ロックウールなど
不燃性試験および発熱性試験をパス
A2 石膏ボードなど
シングルバーナー燃焼試験および不燃性試験またはシングルバーナー燃焼試験および発熱性試験をパス
B 塩化ビニルなど
スモール火炎試験(接炎30秒で火炎伝播15cm未満)とシングルバーナー燃焼試験(発熱速度120W/秒未満)をパス
C フェノールフォームなど
スモール火炎試験(接炎30秒で火炎伝播15cm未満)とシングルバーナー燃焼試験(発熱速度250W/秒未満)をパス
D 合板など
スモール火炎試験(接炎30秒で火炎伝播15cm未満)とシングルバーナー燃焼試験(発熱速度750W/秒未満)をパス
E 発泡ポリスチレンフォームなど
スモール火炎試験(接炎15秒で火炎伝播15cm未満
F ポリウレタンフォームなど
未評価またはスモール火炎試験に不合格

 燃焼の他に、火災時に人の命に関わるフラッシュオーバー、煙量、燃焼液状粒子の領域でレベル分けされている。
 
フラッシュオーバーを起こさない材料はA1、A2、B、
フラッシュオーバーを起こす材料はC〜Fと分類される。
 
 煙量、燃焼液状粒子はA2、B、C、Dのレベルについて評価される。発煙性とそのレベルはS1(小)、S2(中)、S3(多)に分けられる。燃焼液状粒子性とそのレベルはD0(小)、D1(中)、D2(多)に分けられる。
 
 
◆◇ 防火性
 
 住宅の防火性能は構法的ものと素材の防火性による。外張断熱材に防火性に優れた鉱物性断熱材を使用すれば問題はないが、外張断熱工法に使用される断熱材のほとんどは石油系断熱材で、難燃剤などを混入し難燃性の向上に努めているものの、グラスウールやロックウールなどの鉱物性断熱材より防火性が弱い。
 
 石油系の断熱材は素材だけでは防火構造の認定(一般認定)は取れていないものの、外壁材や内装材などの組合せで、個別に実験などをして評価を受け防火構造の認定(個別認定)を取っている。
 
 防火構造の個別認定が取れた石油系断熱材の外張断熱工法でも満足することなく、 [図5]のように外壁外側に合板を張る、ファイアーストップを設けるなどの工夫をして防火性能をワンランクあげたい。在来工法では気流止め(ファイアーストッパー)、枠組工法ではファイアーストッパーが防火性能上、構造的に有効に考えられている。火流が壁の中を上部に走るのを、気流止めやファイアーストッパーが防ぎ、延焼時間を遅らせる。
 
 
 
 
 
■4■ LCCO2の削減
 
 
 高断熱・高気密住宅や次世代省エネルギー基準の役割は、省エネで、冬に暖かく夏に涼しい温熱環境で体に負荷が少ないこと、地球環境に負荷が少ないことである。地球環境のなかで温暖化に大きな影響を与えるCO2の削減が問われているが、断熱材ではどうだろうか。
 
 
◆◇ 断熱材のエコ評価
 
 外張断熱に一般的に使用されているのは発泡プララスチック系板状断熱材が多い。これらは石油製品であり、第一次生産エネルギーが大きい、リサイクルが少ない、環境ホルモン・化学物質過敏症(難燃剤他)、発泡剤などから、エコ評価は低い。
 
 ウレタンやスチロールの発泡には、オゾン層を破壊する特定フロンが長らく使用されていたが、順次、代替フロンに置き換わっている。代替フロンは、地球の温暖化係数が高い。一部のメーカーは、オゾン層破壊がなく温暖化係数が極めて低い、水発泡や炭化水素発泡になっている。
 
 
◆◇ CO2の排出量
 
 東京で床面積150m2の次世代省エネルギー基準のモデルプランの家一軒分の使用断熱材の製造時のCO2の排出量は[表2]に表されている。グラスウールで524kg-CO2、ウレタン(HFC134a発泡)で14.127kg-CO2でグラスウールの約27倍、水発泡のウレタンで2.041kg-CO2でグラスウールの約4倍、スチロール(HFC245fa発泡)で34.092kg-CO2でグラスウールの約65倍、炭化水素発泡スチロールで1.478kg-CO2でグラスウールの約3倍のCO2排出量である。
[表2] 断熱材製造時の排出量のモデル住宅でのシミュレーション(lV地域東京、150m2一部2階建てプラン)
断熱材(mm) 住宅の断熱材体積(m3) 断熱材のCO2
屋根 外壁 基礎 屋根 外壁 基礎 合計 密度 CO2原単位 単位体積CO2 CO2排出量 床面積当たり
充填 付加 充填 付加 kg/m3 kg-CO2/kg kg-CO2/m3 kg-CO2 kg-CO2/m2
HGW16K
(基礎はGWB32K)
次世代基準 120 50 50 9.6 5.4 1.1 16.1 16 1.9 30.4 524 3.5
50%削減 165 100 80 13.1 10.9 1.8 25.8 16 1.9 30.4 839 5.6
ウレタン
(HFC134a発泡)
次世代基準 60 30 50 5.6 3.8 1.1 10.5 30 45.0 1350 14127 94.8
50%削減 90 45 80 8.3 5.7 1.8 15.8 30 45.0 1350 21342 143.2
ウレタン
(水発泡)
次世代基準 60 30 50 5.6 3.8 1.1 10.5 30 6.5 195 2041 13.7
50%削減 90 45 80 8.3 5.7 1.8 15.8 30 6.5 195 3083 20.7
押出法ポリスチレンフォーム
(HFC245fa発泡)
次世代基準 60 40 50 5.6 5.1 1.1 11.8 30 96.9 2907 34094 228.7
50%削減 90 60 80 8.3 7.6 1.8 17.7 30 96.9 2907 51466 345.3
押出法ポリスチレンフォーム
(炭化水素発泡)
次世代基準 60 40 50 5.6 5.1 1.1 11.7 30 4.2 126 1478 9.9
50%削減 90 60 80 8.3 7.6 1.8 17.8 30 4.2 126 2231 15.0

 年間の暖房のCO2排出量はFF式灯油ボイラーで2.092kg-CO2、家一軒分のグラスウールの製造によるCO2排出量の約4倍。ヒートポンプエアコン(COP=1)または蓄熱電気暖房は4.055kg-CO2でグラスウールの約8倍。年間の給湯によるCO2排出量は2.094kg-CO2であり、グラスウールの約4倍。 
 
 製造時にCO2の排出量が極めて多いスチロール(HFC245fa発泡)はFF式灯油ボイラーによる暖房の約16年分である。こうした数値を眺めて知れることは、CO2排出量が大きい断熱材を厚くして省エネしてもCO2排出量削減には役立たない。
 
 
 
 
 
※図1〜図4は室蘭工大鎌田研究室、NPO新木造住宅技術研究協議会を出所としている。
 
 
 
 

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