vol.009 エコ・自然系断熱材2
 
 
 
 
 
■1■ エコ・自然系断熱材の施工方法
 
 
 板状の軽量軟質木質繊維や炭化発泡コルク[写真1]は外張りに適しているが、エコ・自然系断熱材の多くはマット状や綿状であり、セルロースファイバー、セルロースウール、羊毛(→[写真2])、フラックス(亜麻)繊維、ハンフ(大麻)繊維、ココヤシ繊維などは[写真3]のように充填断熱工法に適している。植物繊維や動物繊維ではないが、ペットボトルからのリサイクルとしてエコ断熱材とされるポリエステル繊維(→[写真4])も同様に充填断熱工法に適している。
 
 エコ・自然系断熱材の充填断熱施工方法は[図1]のようにグラスウールに準じている。今回は、エコ・自然系断熱材のなかで筆者に馴染みがあるセルロースファイバーを中心に説明する。
写真1 写真2 写真3 写真4
図1
 
 
 
 
 
■2■ エコ・自然系断熱材の吸放湿、結露、防湿シートの省略
 
 
 植物繊維や動物繊維の断熱材は吸放湿が豊なことから防湿シートを省略している場合がみられる。多くの研究機関や研究者は、理論や実験や経験からセルロースファイバーの防湿シートは条件の厳しい地域 lll 以北では必要だが、地域 lV以西であれば省略できるとしている。地域 lVで施工実績が多い筆者の知人のセルロースファイバー施工会社のマツナガは防湿シートの施工をほとんどしていない実績をふまえ、現在、公庫などの場合を考えて、認定を申請中であるという。マツナガは地域 lVだけでなく地域 ll の軽井沢や地域 lll の秋田県男鹿市でも防湿層なしの実績がある。
 
写真6  しかし、筆者の設計する家は地域 ll ・ lll なので、セルロースファイバー、秋田杉樹皮断熱材(軽量軟質木質繊維)、[写真3]のフィンランドの生産のマット状断熱材のスプルース繊維に防湿シートや調湿シートを設けている。筆者が基本設計した最低気温が零下15℃まで下がる、地域 ll だが蓼科の海抜1,200mにある地域 l 並の家は、セルロースファイバーの防湿層がない。筆者の防湿ポリエチレンシートを設ける仕様を建主の責任で無視し設けていない。2冬目だがトラブルは出ていないが、検証の必要がある。
 
 筆者は秋田杉樹皮断熱材とそのパネルシステムの開発の時、[写真6]のように秋田杉樹皮断熱材とスプルース繊維断熱材(ビタル)の防湿シートのない場合とある場合の結露試験をした。条件は室外が零下10℃、室内が20℃の連続であったが、結露はなかった。
 
 
 
 
 
■3■ 自然系断熱材と調湿シート
 
 
写真7  筆者は吸放湿や保湿がゆたかな自然系断熱材を使用する場合は、その性能をできる限り活かすように調湿・気密シートを使用する。ドイツ語文化圏では透湿抵抗値が高いのから低いのまで5種類ほどの防湿・気密シートがあり、室内側と外部側の材料の透湿抵抗値との相対性で適材適所の透湿抵抗値の防湿・気密シートが選ぶことができる。芯材がポリプロピレン不織布なのか確認できていないが、それを[写真7]のように青い紙でサンドイッチしている。ビニル、ビニルしていなく、一目には紙製の気密シートに思え日本人好みである。
 
 何が何でも水蒸気の流れをシャットアウトする防湿ではない。壁中が結露しない程度の透湿抵が低いシートを使用すれば、気密性能を保持しながら水蒸気が出入りでき、吸放湿や保湿がゆたかな自然系断熱材と水蒸気(湿度)関係で連携ができる。
 
 日本ではポリプロピレン不織布の調湿気密シート「ザバーンBF」(デュポン、マグ)があり、これを自然系断熱材と併用して使用している。本来は冬の防湿で結露防止、夏の透湿で夏型逆転結露防止の兼用気密シートである。
 
 [図2]のように、冬の相対湿度が低いときに透湿抵抗(湿度25%以下では透湿抵抗151×10-3m2・s・Pa/g)が大きく、夏の相対湿度が高いときに透湿抵抗(湿度95%以上では透湿抵抗0.150×10-3m2・s・Pa/g)が小さいという性質を利用したのが、調湿シートである。上記2ケースの数字は、透湿抵抗大の数字が防湿シートの、透湿抵抗小の抵抗値が透湿シートのJIS規定値をそれぞれ満たし、冬は防湿シート、夏は透湿シートの役目を果たす。詳細は別回で説明する。
図2
 
 
 
 
 
■4■ エコ・自然系断熱材の防火性と木板張り
 
 
 エコ・自然系断熱材で防火構造の認定を取っているのは少ないので確認の必要がある。取っていても外装が防火サイディングやモルタル塗りが多く、木板を使用する場合は工夫が必要である。[図3]のように、防火構造の上に木板を張る事は良いので、認定が取れているエコ・自然系断熱材の施工方法の外装材の防火サイディングなどの上に張る。
 
 屋根・天井は屋根充填断熱、壁は充填断熱、基礎外張断熱である。
図10
 
 
 
 
 
■5■ セルロースファイバー
 
 
 原料はパルプ、新聞古紙、接着剤、ホウ酸などが使用されている。形状は綿状であり、専門業者が吹き込みや吹き付け施工する。
 
 古新聞を粉砕し綿状にする循環型(リサイクル)エコロジー断熱材である。吸音性も高い断熱材である。難燃剤と防虫(虫の忌避性)にホウ酸が使われている。日本のセルロースファイバーにホウ酸はどのくらい含まれているかわからないが、ドイツのエコテストによると15%から20%のホウ酸が含まれている。エコテスト社出版の「エコロジーハウス」の厳しい「エコテスト」では「推奨品」にあげられている。「推奨品」にあげられている28品目の内、セルロースファイバーは9品目がはいり、軽量軟質木質繊維ボードの10品目についでの2番目である。
 
 水蒸気の保湿性が豊かなうえに吸放湿が良いので、地域 lV(以西であれ防湿シートがなくても冬期の結露に安全な方向といわれ、なおかつ夏期の逆転現象結露にも有利である。防湿シートがなくても、結露の心配が少なければ、施工の注意点は気密施工の精度だけであり、施工が合理化でき随分と楽になる。木造の公共建築の高断熱化・高気密化をはかるときは、施工精度が気になるところだが、防湿シートが雑になっても結露の危険度が少ないセルロースファイバーが安心である。逆に気になるのは、壁の中に充填後に自らの重量に沈下しないかということがある。その沈下の部分が断熱欠損となり結露してしまうが、各社がそれぞれに工夫されている。
 
 価格は材工共なので、他の断熱材と比較することが難しいが、高性能グラスウールの材料費と施工費を強引に計算してみると、壁の吹き込み充填は高性能グラスウールの材工共の2倍弱である。天井の吹き込みは厚さが200mm以上になるとグラスウールより安くなる。発泡系断熱材と較べると、壁は厚さ100mm、天井は厚さ200〜300mmの高性能値では安い。今までは、グラスウールと較べて高いというイメージがあるが、低負荷の断熱材が望まれているなかで、自然系素材の断熱材では極めてローコストである。日本での実績も長いし、もっと評価され使用されて良い断熱材である。
 
 また一次製造エネルギーは1立方メートル当たり約14KW・Hで、石油合成化学物質断熱材のウレタンボードの約1,585KW・H、ポリスチレンボードの約695KW・Hとは較べものにならないほどはるかに少ない。他の自然素材断熱材のフラックス繊維の50KW・Hと較べても3割弱と小さい。
 
 断熱性能は、熱伝導率が公庫の資料では0.039W/m・K、高性能グラスウール16Kと較べると若干少ない。高性能グラスウール16Kは0.038W/m・K、硬質ウレタンフォームが0.23〜0.26W/m・Kある。
 
 
◆◇ 施工方法
 
写真8  エコロジーが意識されていない時期から、セルロースファイバーの天井のブローイングは手ごろな価格と材工共の簡便性から普及はある程度あった。国内での歴史と実績があると共に、近年、他のエコ・自然系断熱材の普及がすすんではいるが価格が高く普及がまだまだであことから、エコ・自然系断熱材のなかでは価格が比較的安く、他のものに較べダントツに普及している。
 
 セルロースファイバーは天井のブローイングは問題がないが、壁に充填した場合の沈下が不安の材料であるが、各社がそれぞれ工夫している。吹込み用の断熱材は専門業者が工事を行うが、断熱材の沈下を防ぐために、接着剤を使用する湿式工法が主流である。最近は接着剤を使用しない壁ドライ工法や、セルロースファイバーに高密度で長い繊維を混入し沈下しないようにしたタイプやパネル状にしたのものがあるので、それらの使用も検討したい。
 
 筆者は最近、長い麻の繊維が入り沈下を防ぐ方式のマツナガのスーパーZ工法(→[写真8])を採用している。
 
 
◆◇ 天井断熱
 
 [図4]のように天井の上にセルロースファイバーを吹き込む最も多い施工方法である。外壁と天井の取り合い部分の桁まわりや、間仕切り壁と天井の取り合い部分の頭つなぎまわりとの気流止めや先張り気密・防湿シートの施工が要で、断熱・気密施工に慣れた施工者が多い寒冷地向きである。設計と施工の両者が手慣れ、200mm以上の吹き込みの場合は最も低コストになる。
図4

 外壁も天井もセルロースファイバー、外壁も屋根も発泡系断熱材の外張断熱工法ではなく、外壁が発泡系断熱材の外張断熱工法張りとセルロースファイバーの天井断熱の組合せの施工業者が多い。施工管理のしやすい発泡系断熱材は高いが、安くて施工管理がしやすいセルロースファイバーの天井断熱の組合せで、価格の低減と断熱の性能向上によるものと思われる。
 
 
◆◇ 桁上断熱
 
 [図5]・[写真12]のように桁上断熱は天井の上の断熱・気密部分が天井と分離されている。桁上断熱は『vol.004』で詳しく説明しているので重要な部分を抜粋する。断熱厚を容易に増やせる、屋根の形状に左右されない、といった天井断熱の長所をそのままに、欠点であった先張りシートと気流止めの施工や、配線・配管などによる防湿・気密シートの補修などの手間を減らした合理化された工法である。施工上のメリットは大きく、天井と外壁および天井と間仕切壁の取合い部分において、桁、小屋梁、頭つなぎなどで空隙を塞ぐといったように、在来丁法で弱点となっていた部分に改良が加えられている。そのため、こうした取合い都分に気密化の先張りシートや気流止めを施工する必要がなく、施工精度による性能のムラがなくなった。
 
図5
写真12

 天井断熱と比べて、断熱材受け合板や根太でコストアップするが、工程が合理化され、施工が慣れていなくても断熱・気密性能のばらつきが少ない。
 
 [図6]のように電気配線、設備配管、ダウンライトなどの貫通分の補修の必要があるものの、使用する合板を天井の仕上げ材と兼用すれば天井下地を省略することができる。
 
図6

 
◆◇ 屋根垂木充填断熱工法
 
 [図7]・[図8]・[写真9]のように屋根なりのタルキ間にセルロースファイバーを充填する方法で、タルキは在来工法でもツーバイフォー部材の206(40×143mm)、208(40×190mm)、210(40×241mm)を使用する。ツーバイフォー部材は人工乾燥され品質も安定している。また、長尺なので日本の12尺物13尺物よりも端材が少なく経済的である。
 
図7 写真9

 屋根垂木充填断熱工法は『vol.004』に詳しく説明しているので重要な部分を抜粋する。[図1]のように屋根天井と外壁の取り合い部分と、屋根天井と間仕切り壁の取り合い部分が桁、小屋梁、頭つなぎ[写真13]などで空隙が塞がるように在来工法が改良されている。そのため、こうした取り合い部分に気流止めが必要なく、施工の簡略化と性能の安定化が計られている。先張りシートは天井断熱よりは省略されるが、タルキと母屋との取り合い部分、タルキと桁との取り合い部分に必要である。
写真13

 次世代省エネ基準では、セルロースファイバーは地域 l では225mm、ll〜Vは185mmと天井断熱材よりワンランク厚めになっている。ツーバイフォー部材の寸法に合わせたような断熱材の厚さである。外壁に近い環境となるため、外壁に準じた、室内側から防湿・気密シート(調湿気密シート)、断熱材、防風・透湿層、通気層などの構成になる。
 
 
 
 

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