vol.010 超高性能住宅(付加断熱工法)
 
 
 
 
 
■1■ CO2削減(京都議定書発効)による更なる断熱強化
 
 
 次世代省エネルギー基準の熱損失係数を満たす家は温熱環境にバラツキがあるのとエネルギー消費量が多く、多少物足りない。次世代省エネルギー基準よりおおよそ30%ほど性能が高くなる、各部位の仕様と厚さが定められて住宅金融公庫基準では現状では大方の住まい手はまあまあ満足している。次の段階は、もう少々断熱性能が上がって、低温暖房の心地良さとエネルギー消費量の更なる減少が欲しい。個人的満足度に加えて、それ以上に深刻なのは、京都議定書が発行されいよいよCO2削減が待ったなしである。政府、産業界は大慌てだが、建築関連の放出量が約36%もしめることから、建築関連の我々は身近にできることからCO2削減をやっていきたい。
 
 
 
 
 
■2■ ポスト次世代省エネ基準へと付加断熱工法
 
 
 環境問題、EUからみた次世代省エネルギー基準、断熱レベルと断熱工法、外張断熱の断熱補完でポスト次世代省エネルギー基準に対応することは、『vol.006』で詳細に説明しているのでそちらを読んで頂きたい。
 
 ポスト次世代省エネルギー基準に対応するには、外壁や屋根は充填断熱や外張断熱だけを別々に施工するのではなく、どちらも同時に施工する付加断熱が必要になってくる。
 
 
 
 
 
■3■ 付加断熱とは何か
 
 
◆◇ 先進例
 
[図1] 新規ウィンドウ
 西方設計
[図2] 新規ウィンドウ
 付加断熱工法は寒冷地の更なる良好な温熱環境と省エネルギーを求める先進の一部で行われていたもので、[図1]のように105mmの柱間に高性能断熱材を充填し、その外側に更に高性能断熱材を外張り付加する高性能な工法である。
 
 
◆◇ 「外壁の中間階床の横架材部分」の熱橋の断熱補強
 
 それが、一般的に普及してきたのは、次世代省エネルギー基準の北海道などの地域?の充填断熱工法の、「外壁の中間階床の横架材部分」の熱橋の断熱補強のための断熱材の付加である。理論的には横架材部分だけの付加ですむが、実際は住宅金融公庫の共通仕様書の[図2]の参考図にあるように、充填断熱面の外側全面に外張り断熱を付加するのが一般的である。
 
 
◆◇ 求められる高性能化
 
 外壁の断熱工法は大きく分類すると、壁体内の空間に断熱を充填する充填断熱工法、壁の外側に断熱材を張る外張断熱工法、充填断熱と外張断熱の両方を施工する付加断熱工法の3種類に分類される。筆者は、充填断熱工法を主体とし、工務店によって外張断熱材工法を採用することもある。付加断熱工法は、今までは数は少なかったが、最近では断熱性能がさらに望まれ多くなってきている。
 
 高断熱・高気密工法が登場してから、理論と実践の積み重ねの30年近く過ぎたなかで、数多くの断熱工法が登場と幾つかの論争がおこり、社会現象の荒波を何度か乗り越えている。現在はまだまだ外張り工法の声が大きいが、これからは温暖地でも、EU並みのCO2削減対応のポスト次世代省エネルギー基準の更に厳しい基準、環境や人への低負荷素材断熱材の必要性などにより、断熱工法の新たな段階に入る。
 
 
◆◇ 充填断熱材の弱点の解決と補強
 
 充填断熱は構造材の木材部分の熱橋による熱損失があるが、外壁全体にしめる割合は、在来工法で柱や間柱で約17%、枠組壁工法では約23%ある。付加断熱することによって熱橋の問題は解消される。密度36kのボード状グラスウール厚さ50mmを付加すると、その分の熱性能と約17%の熱橋が解決されるので、2倍弱の性能があがる。
 
 100mm断熱の室内壁の表面温度は室温より約1.0℃低いが、50mmの付加断熱の表面温度は約0.5℃しか低くならず、体感温熱環境が良好である。
 
 
 
 
 
■4■ 付加断熱の位置と種類
 
 
 付加断熱は、「充填+外張り」[→図3/4]が一般的だが、他に室内側に付加する「充填+内張り」、外部側と室内側の両方に付加した「外張り+充填+内張り」の3タイプがある。
充填+外張り
[図3] [図4]
室外側+充填+室内側
[図5] [図6]

 
◆◇ 「充填+内張り」タイプ
 
 「充填+内張り」は、防湿シートを充填断熱と同じ場所に施工するので、室内側付加部分が電気の配線スペースにとなり、防湿シートを破損することが少ないのが長所である。夏型結露の恐れも少なくなる。欠点は内部スペースが狭くなることだ。
 
 
◆◇ 「外張り+充填+内張り」タイプ
 
 [図5/6]の「室外側+充填+室内側」は、日本ではまだ実験住宅でなければ見受けられないが、北欧やスイスなどでは現在の断熱材の厚さが240mほどの推奨値であり、「室外側+充填+室内側」タイプが多く見受けられた。
 
 
 
 
 
■5■ 付加断熱のコスト・性能とコストダウン
 
 
 付加断熱のコストアップは付加する部分が充填断熱よりコストアップになるが、発泡プララスチック系外張りより安い価格帯である。外壁では密度36kのボード状グラスウール厚さ50mmを使用すると、材工で外壁部分は約1,350円/m2のコストアップ、40坪前後の住宅で40万円のコストアップになる[→写真1/2/3](地域 lll の秋田市)。充填部分も含めると約125万円程度になる。これは発泡プララスチック系外張り(外壁厚さ50mm・屋根100mm)の約156万円より31万円安いコストである。
 
[写真1] ボード状グラスウールを外側に張った付加断熱
[写真2] 同左
[写真3] 同左

 密度36kのボード状グラスウールは普及率が低いことから高めだが、高性能グラスウール16kを付加部分に使用すると充填断熱より16.5万円/40坪ほどのコストアップでできる。発泡プララスチック系外張りより54.5万円安いコストである[→表1]。
[表1] 充填断熱/付加断熱/外張り断熱のコスト比較
充填 付加断熱 外張り
高性能16Kグラスウール 高性能16Kグラスウール 硬質硬質ウレタンフォーム
断熱仕様 外壁 GW厚さ100mm 価格
390,000円
GW厚さ100+50(付加)mm 価格
450,000円
厚さ50mm 価格
1,000,000円
屋根 GW厚さ200mm GW厚さ200mm 厚さ100mm
基礎 押出法ポリスチレン3種 押出法ポリスチレン3種 押出法ポリスチレン3種
防湿気密シート 45,000円 45,000円 45,000円
気密部材 165,000円 165,000円 165,000円
合板・胴縁 胴縁 25,000円 下地合板 100,000円
人工 250,000円 330,000円 250,000円
合計 850,000円 1,015,000円 1,560,000円

[写真6] 西面の窓2ヵ所にガラリ戸を取り付けた例
 差額の約54.5万円は開口部の断熱補強や日射遮蔽に使用し、更に温熱環境のレベルを上げる。南面の幅2間高さ7.5尺の大きな掃出し戸に内断熱戸を敷居・鴨居一式の約25万円で取り付けられる。[写真4/5]のように、冬の昼には内断熱戸を引込み、日射を入れることでパッシブソーラーになり暖房がいらない。冷え込む夜は内断熱戸を閉め、室内からの熱損失を防ぎ、外からの冷輻射を遮りより暖かい。夏は、高断熱・高気密住宅では日射を入れない事で、遮蔽が難しい西日も内断熱戸を閉めることで遮られ、涼しさを得る方向である。さらに、[写真6]のように西面の窓には2カ所のガラリ戸と敷居・鴨居一式の約28万円で取り付けられる。夏場の強烈な西日を外側で遮蔽でき、ガラリなので閉めていても通風ができ、涼しさを得る方向である。付加断熱のコストアップと内断熱戸とガラリ戸の合計が約154.5万円になり、発泡プララスチック系外張りの価格で付加断熱と開口部補強ができる。
 
[写真4] 幅3間(幅1間の連窓)、高さ7.5尺の掃出し戸
[写真5] 左に内断熱戸を取り付けた例

 本州では手に入る所が限られるが、多少のコストアップで高性能グラスウール24kを使用すれば良い。[写真7/8/9/10]・[図7/8]のように地域 l の北海道の駒ヶ岳の太平洋側に建つ別荘の高性能グラスウール24kの例である。
[写真7] 高性能グラスウール24Kを使って付加断熱を行った例
[写真8] 同左
[写真9] 同左
[写真10] 同上
[図7] 新規ウィンドウ
[図8] 新規ウィンドウ
 
 
 
 
 
■6■ 断熱材の組み合せと性能・コスト比較
 
 
 付加部分の断熱材の種類の選択は、結露しない方向にもっていくのに、充填部分の断熱材との透湿抵抗に注意しなければならない。室内側から外部の通気層に向かって透湿抵抗が同じか相対的により低い素材を使用していく。充填部分は施工のしやすさからマット状のグラスウールやロックウールなどの繊維系断熱材が多い。マット状繊維系断熱材は透湿抵抗が低いため、一般的に防湿層に透湿抵抗が高いポリエチレンシートなどの防湿シートが使用されている。通気層に向かってポリスチレンシートより透湿抵抗が低い断熱材なら良い。付加部分はポリスチレホームやウレタンホームでも良いが、コスト的なことから、グラスウールやロックウールの高密度なボード状の断熱材が多く使用される。
 
 付加断熱は断熱材が厚く熱損失が少ないのが長所であるが、ポリスチレンホーム・ウレタンホーム・ウレタン吹き付けは、コストが150万円から200万円/40坪と高く、コストダウンにつながらない。
 
 
 
 
 
■7■ 付加断熱の設計と施工例
 
 
◆◇ 付加断熱部分
 
◎付加する断熱材の張り方に下記ように数種類ある。
[写真12] 地域 ll 相当の福島県羽鳥湖の海抜約1000mに建つ別荘
 ・下地合板類を張る、張らない。
 ・下地合板を張らず、[図1]のように充填断熱の外側に付加断熱する。
 ・下地の合板類を張りその上に付加断熱する。
 地域 ll 相当の福島県羽鳥湖の海抜約1000mに建つ別荘[→写真11/12/13]は、合板の外側に、タイベックが張られた専用の密度36kのボード状グラスウール厚さ50mmを付加断熱した硝子繊維協会のGWOS-M工法である。[写真1]は銀色部分が密度36kのボード状グラスウールで、耐力壁と木板張りの防火構造の下地を兼ねるダイライトの上に付加断熱している。
[写真11] 合板の外側に、タイベックが張られた
[写真13]

◎支持部材が木製の胴縁か、専用部材か。
[写真14] 外壁の支持部材が木製胴縁の場合
 標準は[図1]・[写真1/7/14]のように@455の木製の胴縁を仕上げ材の必要に応じて、縦や横に設け、その間に付加断熱し、その上に透湿防水シートのタイベックと通気胴縁を施工する。
 [ 写真11]・[図9]は専用の支持部材[図10/図11]を使用する硝子繊維協会のGWOS-M工法である。断面積が小さなジオスM型スペーサーを付加断熱部分に打ち込むだけなので、断熱部分が支持材の木製胴縁によって断熱欠損になるのと違って断熱欠損が極めて少ない。
 
[図9] 硝子繊維協会の「GWOS-M工法」
[図10] 専用の支持部材
[図11] 同左

 
◆◇ 外壁部分の注意する納まり
 
 外壁部の納まりは、付加断熱材部分の支持材の熱橋をいかに少なく、しかも外装材と通気層胴縁の十分な支持力を保持できることが必要だ。ある程度の強度がある発泡プラスチック系断熱材は、厚さが30〜50mm程度の付加では通気層の胴縁で押さえることができる。確実な支持力を得ること、支持力が劣化しないため、外張り工法と同様に適切な留め付けビスを選択しなければならない。
 
 繊維系のグラスウールやロックウールなどの高密度なボード状の断熱材は、通気層の胴縁で押さえるほどの強度はなく、GWOS-M工法では熱橋部分が極めて少なく、通気胴縁の受け材にもなっているジオスM型スペーサーのような専用の支持金具が用意されている。役ものを使用しない場合は、柱・間柱と通気層の胴縁と直行方向に、付加部分に胴縁を設置する。直行方向にするのは熱橋部分を重ねない工夫である。
 
 『vol.007』に外張断熱の外装について詳細に説明しているので参考にしてほしい。そんなことから、外装材の重量は軽ければ軽い程付加断熱に適している。軽量な防火サイディング・鋼板・木板などが適し、重いモルタル・タイルなどは適さない。
 
 
◆◇ 開口部分の納まり
 
 開口部の位置は、[図12]のように付加断熱部分(スペーサー)に取り付くタイプと、[図13]・[写真15]のように充填部分(軸組)に取り付くタイプがある。雨仕舞が優先されると外側の付加断熱部分に取り付き、熱橋が少なくなることを優先すると充填部分に取り付く。
[図12] 新規ウィンドウ
[図13] 新規ウィンドウ
[写真15] 充填部分(軸組)に取り付くタイプ

 風雨が強い日本では漏水の危険をさけるため、付加断熱部分に取り付くのが見受けられる。断熱材が付加された厚さ分のスペーサーが必要で、そこに開口部が取り付く。熱橋が多くなることと、室内の窓枠の奥行き幅が大きくなり、下枠とサッシが取り付く部分にコールドドラフトがたまりサッシの下部が結露しやすくなるのが欠点である。寒冷な北欧では、熱橋が少なくなることを優先すると充填部分に取り付く例がほとんどであり、日本の寒冷地でも充填部分(軸組)に取り付くのが正解であろう。
 
 
 
 

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