vol.13断熱材の海外事情3

1  スイスの断熱材事情2

スイスのゼロエネルギーハウス

[写真01]は透光断熱材を使用した、研究者であり設計者である[写真02]EMSデュターの自邸のゼロエネルギーハウスである。 室内の[写真03]でわかるようにコンクリート住宅で、外壁はほぼ前面ガラスで覆われている。 [図01]・[写真04]のように窓以外のコンクリート壁の外側とガラスの間に透明なプラスチックのハニカム(蜂の巣)状の断熱材[写真05]が貼られている。 冬は太陽高度が低いので日射がプラスチックのハニカムの中を通りコンクリート壁に蓄熱され暖房にする。 夏は太陽高度が高いのでハニカムに遮光され熱は通らない。 窓の上には日射遮蔽のオーニングが取り付けられている。[写真06]

写真01
[写真01]
写真02
[写真02]
写真03
[写真03]
図01
[図01]
写真04
[写真04]
写真05
[写真05]
写真06
[写真06]

スイスの木造低層集合住宅

[写真07]はバーゼル郊外の工場跡地に建設された低所得者用の年金局の公営住宅である。 2000年のスイス建築大賞、スイス木造協会のグランプリなど多数の受賞があり、エコロジー・性能的・建築生産的・デザイン的・住み心地など優れた建築である。 評価が高いのは、新しく開発したマッシブな木造エレメント工法である。 屋根天井部分の木製パネルの厚さ150mm、2階・3階の床の木製パネルの厚さが180mmで構成されている。 天井の断熱材の厚さは120mmと天井木材の厚さ150mmである。

写真07
[写真07]

1戸1戸のリピテーションの棟と、その1棟1棟のリピテーションの木立に囲まれた配置計画は単純だけではないスイスモダンデザインは心地良い。 緩い傾斜地を景観的に活かした配置計画は、住戸も住棟も単純ながら、8棟は微妙な変化とこんもりした木立に囲まれ退屈感はない。 自然保護地域の近くにあり、子供たちが安全に遊べるように[写真08]の前庭と[写真09]の後庭を広く取っている。

写真08
[写真08]
写真09
[写真09]

72戸の延べ床面積は9,450m2。 5Dkルーム(18戸、平均120.8m2)、4Dk(33戸、平均103.8m2)、3Dkルーム(21戸、平均88.7m2)、総工事費が16.5億円(約57万円/坪)である。 [写真10]の住み手の住戸は、1階がオープンな[写真11]の居間と[写真12]のキッチンが中心、2階・3階は寝室・子供室・バルコニーのメゾネット型である。 異世帯の上下階の防音の問題はメゾネット型で解決できている。

写真10
[写真10]
写真11
[写真11]
写真12
[写真12]

2  オーストラリアの断熱材事情

オーストリアからの輸入住宅

上記のバーゼル郊外のマッシブな木造エレメント工法低層集合住宅と同様な[写真13・14]は、 長野県原村の「自然の住い(株)」がオーストリアから輸入している、エアヴィン・トーマ開発の接合集成大板のピュアウドパネルで組立てられる住宅である。 厚さ170mmの分厚い大板[写真15・16]は集成材のように接着剤を使用せず、木製ダボで接合している。 日本では断熱材に厚さ100mmのソフトボード(軽量軟質木質繊維)を使い、 木板の170mmと合わせてU-値(K-値)が0.25W/m2Kと超高性能で16Kグラスウールの厚さに換算すると約180mmに相当する。

写真13
[写真13]
写真14
[写真14]
写真15
[写真15]
写真16
[写真16]

外壁耐力壁パネルは厚さが170mmから364mmまであり、オーストリア本国では364mmパネルを使用した5階建て前後の重層集合住宅が造られている。 364mmパネルは厚さ22mmのソフトボードを使用すれば、U-値(K-値)が0.24W/m2Kと超高性能で16Kグラスウールの厚さに換算すると約188mmに相当する。 断熱材を使用せず364mmパネルだけでも、U-値(K-値)が約0.27W/m2Kと超高性能で16Kグラスウールの厚さに換算すると約165mmに相当し、次世代省エネルギー基準を超えている。l 地域(おおよそ北海道)以外では断熱材はいらない。 これだけの木材の量を使用するので蓄熱効果も大きく、室内の温熱環境が安定する。

オーストリアの木造重層集合住宅

ドイツ、スイス、オーストリアのドイツ語文化圏では、エコロジー・バウビオロギーや木造重層集合住宅に先見性がある。 その中で、オーストリアは現代木造が遅れていたのだが、20年ほど前から木造建築の見直しが始まり、急速に発展してきた。 その時期は日本と同時期だが、現状は、現代木造建築の考え方と技術力にすこぶる差がある。 木造建築の見直しはエコロジー・バウビオロギー、森林問題、低価格が大きい。 ドイツ語文化圏では、東欧やトルコやギリシャからの移民低所得労働者の急速な増加により、低価格建築生産による低価格家賃が必要とされている。 それに答えられるのが木造重層集合住宅とされ、様な研究開発と建築生産されている。

日本でも、戦後の劣化がひどく改修できない低層集合住宅の多量な建替え時期にきているが、 居住者は高齢の低所得層が多く、低家賃(低価格建築生産)供給の必要に迫られている。 ドイツ語文化圏、特にオーストリアが参考になると考えている。

筆者はオーストリにはまだ行けていないが、来年上記の内容の研修旅行を計画している。 これまでの内容は、秋田県立大学付属木材高度加工研究所の川鍋亜衣子さん[写真17]や、チューリッヒ在住の佐々木徳貢さんから情報を得ている。

写真17
[写真17]

3  北欧の断熱材事情

北欧の住宅事情

北欧の大都市近郊のニュータウンには10階建て以上の集合住宅が見られるが、基本的には旧市街は歴史ある石造・レンガ造、 都市街区の隣接地は混構造の中層や木造の4・5階建ての集合住宅、近隣は低層の木造テラスハウス、郊外は木造やレンガ造の戸建てが多くなっている。

混構造の中層住宅は構造や界壁がPC造、防火区画の階段室がRC造、外壁や内壁が木造の混構造である。 自然条件の厳しさを、木造断熱パネルで内部のコンクリートを保護する考え方で、外壁がコンクリートな日本と逆である。 コンクリートの外壁は外断熱になっている。

木造の4・5階建ての集合住宅は階段室・界壁・地下・1階駐車場などは外断熱RC造で、その上階は断熱パネルの木造が多い。 外壁の木造断熱パネルと、外部に面した階段室や界壁などのコンクリート部分の外断熱は、共にロックウールやグラスウールが多い。

戸建てやテラスハウスは、歴史的に1階壁はレンガ造りが多かったのが、省エネルギーやエコロジーから木造が多くなっている。 計画換気は、南部は排気型計画換気システム、それ以北は熱交換型計画換気システムになっている。寒さが厳しい地域は熱交換器にヒーターが入っている。

北欧の断熱材の厚さと付加断熱

最近の木造住宅では断熱材の厚さが16kグラスウール相当で、壁が約240mm、天井・屋約が約300mmの厚さが多い。 これだけの厚さを確保するには付加断熱工になっている。パネル工場では[写真18]や[写真19]のような、 厚さ190mmの断熱材が充填され、下地と通気層の上に外装の木板が貼られ、木製サッシが嵌め込まれた外壁パネルが造られている。 工場で造られたパネルは[写真20]のように現場に搬入され組み立てられる。 この断熱材の厚さで満足できない場合は、パネルの室内側に[写真21]のように50mmの付加断熱をする。 他に、工場で板貼りまで仕上げをしないパネルを造り、現場で[写真22]のように外側に厚さ50mm付加断熱する。 断熱パネルの外側と室内側の両面にサンドイッチした厚さ約300mmの壁の付加断熱もみられる。 [写真23]は低層木造集合住宅で、付加断熱の外側に、レンガタイルではなく、構造体にアンカーされたレンガ積みをした外壁である。

写真18
[写真18]
写真19
[写真19]
写真20
[写真20]
写真21
[写真21]
写真22
[写真22]
写真23
[写真23]

北欧の中層の混構造の断熱材

[写真24]は6階建ての重層集合住宅であり、構造主体は[写真25]のようにPC(プレキャストコンクリート)板とPC柱である。 防火と防音を兼ねスラブと2階以上の住戸間の壁、1階の駐車場の壁はPCである。 外壁と住戸内の間仕切り壁は[写真26]と[写真27]のように鉱物性繊維断熱材が充填され、木製サッシまで嵌め込まれた木製パネルである。 階段室などの防火壁のコンクリート壁は[写真28]のように鉱物性繊維断熱材の外断熱である。 日本では外壁がコンクリートの考え方とは逆で、内部にあるプレキャストコンクリートを自然環境の厳しさからカーテンウォールの木製断熱・気密パネルが守っている。

写真24
[写真24]
写真25
[写真25]
写真26
[写真26]
写真27
[写真27]
写真28
[写真28]

北欧のエコロジー・バウビオロギーの試み

北欧は断熱・気密の性能が特に優れているものの、エコロジー・バウビオロギーではスイスやドイツから多少遅れているが、数々の試みがなされている。 [写真29]はヘルシンキ工科大学の教授の徹底したバウビオロギーの実験ハウスの自邸である。 構造は北欧では珍しい木造軸組工法であるが、簡単な仕口と継手には唖然としてしまった。 断熱材は[写真30]のように藁を自邸の敷地の泥で緩く厚さ300mmのブロックに成型したものを積み重ねている。 藁の断熱の壁の周囲に日本の縁側の様に空間をまわし断熱効果を高めていると言う。 日本の伝統建築に影響されている教授であった。

写真29
[写真29]
写真30
[写真30]