vol.14断熱材の海外事情4

1  ドイツの断熱事情

ドイツの住宅事情

北欧やスイスより大型の都市形体が進み、フランクフルトを初めとした大都市の新市街やニュータウンは高層集合住宅の割合が大きい。 旧市街は歴史ある石造・レンガ造が多い。 都市街区の隣接地は4・5階建ての集合住宅、近隣は低層のテラスハウス、郊外は戸建てが多くなっている。 スイスや北欧と違って、レンガ造類や鉄筋コンクリート造類の割合が大きい。 外壁の室内側表面温度と室温の差が少なくとも2℃以内にするには、有孔レンガ造は壁厚365mm(熱貫流率が0.5〜0.6W/mK)以上必要である。 日本の次世代型の外壁は地域U以西の0.53程度である。 これ以上の性能が必要であれば外断熱になる。 この場合はロックウール・グラスウール・発泡プラスチック系の外断熱である。 ドイツでは発泡プラスチック系の割合が北欧やスイスより多くなっている。

断熱と省エネに優れた北欧とスイスに挟まれたドイツは、断熱と省エネよりはエコロジー・バウビオロギーに熱心に思える。 20年前に、木製サッシや高断熱・高気密住宅の研修旅行の時に見た断熱材の施工現場は、アメリカやカナダと同様に雑な施工であり興味が持てなかった。 その時期のドイツはエコロジー・バウビオロギーが登場してきていた。ドイツの断熱事情に関してここでは、自然系断熱材系を中心にする。

先進地ドイツの傾向 (エコメッセ、エコショップにみる今後の断熱材の傾向)

エコロジー、バウビオロギーの先進地ドイツの傾向をエコメッセ[写真01]は(数年前に民間団体ブンド主催の大規模なエコメッセはなくなった)、 エコステーション[写真02]、エコショップ[写真03]をみながら、断熱材を中心に述べる。 市民組織の環境保護団体ブントが企画するエコメッセは環境都市フライブルク市とウルム市とで毎年交互に開かれる。 エコメッセは、日本のグッドリビングショウなどのように住宅関係のみの、その道のプロのために開かれるのではなく、衣食住のエコロジーに関連した大規模な手作りメッセである。 ベビーカーを連ねて子供連れの家族などがごったがえし、盛況であった。 健康食品、自然素材日用品、自然素材の衣服、自然素材の健康建材などの衣食住の全般なエコロジーのメッセは市民にとっても、取っ付きやすい。

写真01
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写真02
[写真02]
写真03
[写真03]

ドイツの大多数の、戸建てやテラスハウスの住宅は、1・2階の壁がレンガやレンガブロックなどの組石造で小屋組が木造の住宅である。 それが、近年の傾向として、壁の構造までが木骨となってきた。 レンガやレンガブロックは土を焼く時に燃焼エネルギーが多大に消費され、エコロジーではないと考えられている。 木は植林されることで再生可能で自国で調達できる資源であり、二酸化炭素の蓄積などにより、地球環境や人体に負荷が少ない。 構造体が木で、木と木の間の壁や床の内に自然素材の断熱材や日干しレンガを充填していく。 日干しレンガは構造体にはならないが、木骨が構造体である。 木造住宅の熱容量の少なさや遮音の弱点を日干しレンガが補っている。 日干しレンガの仕上げは土塗り壁である。日干しレンガ、土塗り壁、塗り壁下地の葦を編んだものなども目についた。

自然素材の断熱材は、軽量軟質木質繊維[写真04]、フラックス(亜麻繊維)、ハンフ(大麻繊維)[写真05]、 ココヤシ繊維[写真06]、炭化発泡コルク、ウール[写真01]、コットン、セルローズファイバーなどが所狭しに展示されていた。 現在の自然素材の断熱材の主流はセルローズファイバーで、これからの主流は軽量軟質木質繊維のようである。

写真04
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写真05
[写真05]
写真06
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写真01
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エコメッセは限られた時間の開催だが、各地のエコステーションは市民の日常のエコロジー、バウビオロギーのボランティア活動や教育の場の中心であり情報の中心である。 見学した民間のエコショップ[写真03]はドイツの南部でフライブルクとスイスのバーゼルの中間のシュターフェン郊外の、エコロジーに関係ある企業が貼り付いていたエコ産業振興地区にあった。 この地区の一角にエコショップは日本のDIYのようにあるが、店舗、展示場、オフィス、倉庫、住居など職住接近で環境ともよい。 エコショップの入り口には出荷待ちの軽量軟質木質繊維ボード[写真07]とセルローズファイバーの断熱材が多量に積まれていた。 エコメッセで見た断熱材の他に、目新しいところではラクダの毛やシルクからできた断熱材があった。

写真03
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写真07
[写真07]

そんな先進地ドイツでも断熱材のシェアは、無機質系断熱材が61%、石油製品発泡系断熱材が36%の状態であり、自然素材の断熱材はまったくこれからの市場である。 石油製品発泡系断熱材のなかでは、ビーズ発泡ポリスチレンが29.8%、硬質ウレタンフォームが4.5%、押し出し発泡ポリスチレンが3.2%となっている。 日本ではビーズ発泡ポリスチレンはシェアが少ないが、ドイツではシェアが大きい。 ビーズ発泡ポリスチレンはフロンや代替フロンを使用せず蒸気を使用し発泡形成するので、他の石油製品発泡系断熱材より環境に負荷が少ないことによるのだろう。