3.従来型の欠点と断熱・気密住宅の長所

快適な室内環境と健康 
 1−1 暖かさ・涼しさと健康 
 室内の温熱環境が快適に感じられるためには、気温・湿度・輻射・気流の四つの要素
をバランス良
く満足させなければなりません。図[2ー6]
 
 (A)暖かさは健康 
 図[1ー1]は気温と脳卒中の関連を表しているもので、寒い北海道のグラフ線(i)
の全体的な死亡率が長野、秋田、東京、暖かい鹿児島より低く、長野、秋田の半分以下
です。さらに特筆されるのは、北海道のグラフ線が14度前後で折れています。14度
以下になると死亡率が下がっているのです。外気温が14度前後になると、寒さを我慢
するのではなく、暖房するので体に負担がかからないのです。さらに北海道の耐寒住宅
の死亡率の線(ii)は長野、秋田の1/4にも下がっています。

 a)上下の温度差が少ない
 従来の建て方のように暖房室の、下の床面近くで10度、上の天井近くで40度近く
というように、上下の温度差が30度前後もあるような最悪な室内環境ではありません。
性能がよい住宅は、高さが9メートルもある吹き抜けた居間の上下の温度差でさえ1度
以下でとても快適です。図[1ー7]数台のパネルヒーターで熱源を拡散させる高級な
暖房システムなどではほとんど温度差がありませんが、FFストーブ1台でも、居間が
21度、2階の子供部屋が18度と温度差が少ないのです。

 b)平面的な温度差が少ない
 高級な暖房システムなどではほとんど温度差がありませんが、トイレなどの臭いが生
ずる空間などはヒートショックや結露がしない程度に多少下げた方がよいでしょう。図
[1ー8]また同じ20度でも子供は暑く、高齢者は寒く感じます。居間の空間の中で
も、高齢者のコーナーは2度ほど高めなのが好まれます。温度差が全くないのが理想で
はなく、それぞれの場所の適温があります。

 c)冷輻射は少なく、隙間風はなく快適
 冷たい壁面、床面がなく冷輻射が感じられず、窓ガラスはペアガラスさらには低放射
ペアガラス(Low−E)になると、冷輻射が殆ど気になりません。しかし、FFスト
ーブ1個などの自然対流の暖房の場合は不快で微妙な気流を、階段下などで気にならな
いような工夫が必要です。室内で空気の流れが人肌に感じられない程度は0.15から
0.20m/秒以下です。

 d)1日の温度差が少なく快適
 性能の良い住宅は、夜寝るとき暖房を止めても、朝起きたときの温度は1度から2度
くらいしか下がらず18度と、起きがけの寒さを知りません。朝一番で家事をすの主婦
にとても喜ばれています。睡眠中も暖かいですから寝具は夏掛けで十分です。冬掛けを
収納する大きなスペースもいらなくなります。図[1ー14]

 e)暖かく動き回れて健康
 全室が20度前後と暖かく温度差が少ない室内気候は、動きやすい薄着で全館を自由
に動き回れ、家の中に閉じこもりがちな高齢者や幼児には良い運動になります。全室暖
房の住宅はオープンな間取りが得意ですから、ワンルーム化でき廊下を広く、または少
なくし、ドア数も最小限にすることによって、微妙な段差を嫌う車椅子にとっても向い
ているバリアフリーな住宅です。

 1−2 湿度と健康
 計画換気ができるように高気密になっているので、外の絶対湿度の低い新鮮な外気を
入れ、室内の湿度が高く汚れた空気を外に捨てることにより適度に乾燥気味になってい
ます。空気の乾燥は結露防止とカビやダニの繁殖を押さえます。

 a)結露しない
 計画的に換気されることによる適度な湿度と、全室暖房で各部屋の温度差が少ないこ
とにより結露しません。

 b)カビやダニの発生が少ない
 冬は室内が湿度45パーセントの乾燥状態であり、結露もないのでカビやダニの発生
が少なくなっていま。湿度の高い梅雨はエアコン1台で全室を除湿でき、カビやダニの
発生を押さえることができます。

c)適度な湿度で快適
 乾燥しすぎると図[1ー15]のようにインフルエンザ・ウィルスの生存率が高くな
ります。温度が21度から24度の場合、湿度50パーセント以上では4時間後の生存
率は6パーセント前後なのですが、湿度20、35パーセントの乾燥時では生存率が2
3時間後でも14、22パーセントの高い生存率になっています。

 人間は鼻と口から吸い込んだ埃や細菌などを、気管の粘膜から排出された粘液と一緒
に気管の繊毛の運動でタンなどとして外に吐き出します。しかし、室内が乾燥しすぎる
と、粘膜や繊毛の活動が弱まり、細菌などから人体を守るフィルターの役目を果たせな
くなります図[1ー1ー16]。これにより人体の抵抗力が著しく低下してしまい、そ
の結果風邪やインフルエンザにかかりやすくなっています。 

 風邪を引いて病院にいくと、家の中を加湿しなさいと言うお医者さんがいますが、湿
度を上げると今度は結露やカビやダニの問題がでてきます。また家が腐ったりもします。
そういうことを言うと、家と体のどっちが大切なのだと言う乱暴なお医者さんもいます。
もっとも、カビやダニは体にも悪いのですが。そう言った意味では、口にマスクをする
のは理にかなっていることが解ります。口から吐き出した水蒸気がマスクで保湿され、
高い湿度になり細菌のフィルターの役目を果たしています。マスクのガーゼの細かい繊
維そのものも埃のフィルターの役目を果たしています。

 風邪を引かないためには湿度を上げなければなりませんが、あげすぎると結露したり、
カビやダニが繁殖し喘息やアトピーに成りやすく逆に健康に悪いです。以上の結果から
判断すると湿度は50パーセントをめどに、55パーセントを超えないようにしたいも
のです。

●断熱構造の長所  2−1 従来型住宅の断熱構造の欠点             従来の建て方は夏向きにつくられ、通風がよく涼しく、木材も腐らないように出来て います。そのかわり冬には、断熱材を入れるにしても上手に入れられずに隙間が多く寒 い住宅となっています。これが図[1ー17]の状態です。  此の状態を詳しく見ると図[1ー18]のように断熱材が切れる入れ方の欠陥が解り ます。50ミリの耳付きグラスウールを105ミリの壁の中に入れても上手に入れずら くグラスウールについている防湿シートも連続しずらいので、防湿や気密の役割を果た しきれません。  (A)断熱・気密の欠陥 1.外部の壁の上と下に通気止めをしていないため、壁の中に冷たい空気の流れが生じ、 断熱の性能が著しく低下します。 2.室内の間仕切り壁の上と下が開いているため、床下の冷気が入り込み、壁面が冷た くなります。  室温が高くとも壁面からの冷輻射で冷や冷やする。また、間仕切り壁で床下と天井裏 が通じて、小屋裏へ熱が大きく逃げます。 3.1階小屋裏と2階床下が通じているため、冷たい外気が2階床下に入り込みます。 4.間仕切り壁や外壁の防湿・気密シートの上端が密閉されていません。 5.床の防湿・気密シートと壁の防湿・気密シートとの取り合い部に隙間ができ、巾木 まわりから隙間風が入り込みます。 6.天井の防湿・気密シートと壁の防湿・気密シートとの取り合い部に隙間ができ、廻 り縁から暖かい空気が逃げます。 以上のように、全体として断熱された部分と他の部分との取り合い部が欠陥の主要因と なっています。 (B)耐久性の問題 結露で腐れる  結露は表面結露だけではなく、壁の内部にも発生します図[1ー19]。内部結露は 恐ろしいものです。春になって外が暖かくなると、外壁の中で冬にできた結露が湿度を 高め不朽菌が繁殖し木材が腐りやすくなります。北側の台所、浴室、洗面所などの水廻 りの土台などは特に湿度が高く危険性のあるところです。住宅の構造上重要な土台や柱 脚や床などが腐ると住宅の寿命が著しく縮まります図[1ー20]。                                 2−2 高断熱・高気密住宅の断熱構の長所            高断熱・高気密住宅は北欧で考案れ、十数年前に北海道で北欧を参考にして考えられ た日本向けの北方型の住宅です図[1ー21]。その後、東北、北関東と南下し、九州 に耐暑住宅として広がり、現在は全国的に話題を集めています。北海道や北欧での工法 は寒さの厳しい自然条件下で生まれたものですから、それらから守るため閉じられ、外 部を遮断したような自己完結でシェルター的な要素が強いものになっています。それが 本州に入ってからは、開口部が従来のように窓が大きく開放感があるものになっていま す。高気密住宅は窒息してしまうなどと言われたりもしますが、潜水艦でもないのです から、その様なことは未だありません。  (A)断熱気密の正しい施工 図[1ー22] 1.外部の壁の上と下が閉じているため、壁の中に冷たい空気の流れず、断熱の性能が 維持できます。 2.床下が暖房空間のため、床下の断熱・気密工事(筋交い、柱、給水・排水配管や電 気配線や水抜き不凍栓の立ち上がりなど)が必要ない。間仕切り壁が外と接しなかった り上部が閉じているため、壁面が暖かく、小屋裏に熱が逃げません。床面の気流止めが いりません。 3.1階小屋裏と2階床下が閉じられているため冷たい外気が2階床下に入り込みませ ん。 4.間仕切り壁や外壁の防湿・気密シートの上端が密閉されています。 5.壁の防湿・気密シートと床との取り合い部に隙間がなく、巾木まわりから隙間風が 入り込みません。 6.天井の防湿・気密シートと壁の防湿・気密シートとの取り合い部に隙間がなく、廻 り縁から暖かい空気が逃げません。 7.床下地盤や基礎コンクリートの熱容量を生かすことができます。蓄熱量が大きいた め温度の安定が保てます。  8.床下の温度低下が少ないから、水道の水抜き不凍栓が一本ですみます。 9.床下に放熱器を置くことによって床面温度が上がり快適になる。 10.給水・排水配管や電気配線が床下空間を利用するので維持管理が容易になってい ます。  (B)高耐久性  この工法は水蒸気の流れを上手くコントロールするいわば低温の除湿乾燥機のような もので、壁の内部や土台や床下を乾燥させます図[1ー23]。1年ほどで湿気やすい 北側の水廻りの土台でも木材の含水率が12から13パーセントまで乾燥してしまいま す。ですから、濡れた木材を使うと乾燥し痩せて気密が悪くなるので、初めから人工乾 燥材の使用が肝心です。図[1ー24]  木材は湿気を含まなければ長寿命でバランスのとれた優れた建築材料です。木材が腐 れるのは適度な湿度と温度と酸素があれば不朽菌が繁殖し腐れますが、三要素のどれが 欠けても腐れません。法隆寺や桂離宮などの伝統工法は柱などを露出させた真壁造りで、 木材が乾燥しやすく考えのため長寿命なのです。伝統の木材を長持ちさせる技術を科学 的に置き換えたのがこの工法です。防湿層・透湿層・通気層などが水蒸気理論で科学的 に考えられているのです。                   
●省エネルギー  3−1 従来型住宅の省エネルギーの欠点  従来の建て方で50ミリの断熱材では、全室暖房するのにエネルギーがどれくらいの かかるかは、図[1ー25]に現れています。Bの計算値では熱損失係数が470です が、実際は断熱材の入れ方が雑で欠陥があるので、現実の施工ではAの640の数値に なります。此の数値では東京でも全室暖房するにはエネルギーの大きな浪費です。  高度成長時代にはモダンリビングにセントラルヒーテングが登場しましたが、あまり の灯油代の多さに使用していないことが多々ありました。                    (A)個別暖房   従来型はエネルギーの浪費の問題から全室暖房などは考えられず、居間だけの、ま たは受験生がいたら子供部屋などがたされた個別暖房になっています。  (B)50ミリ断熱の大きな熱損失    図[1ー17]で熱が逃げる箇所の数値は図[1ー25]のAの50ミリ断熱実際、 施工値でわかります。各箇所から満遍なく多くの熱が逃げていますが、特に間仕切り壁 上部・2階床下から熱損失係数が115と、大きな熱が逃げています。  (C)気密も悪い  図[1ー26]は在来軸組工法の面積100平方メートルほどの住宅の隙間の分布を 北海道電力実測したものです。各部位をたすと12平方センチ/平方メートルもの隙間 があります。住宅1件では1200平方センチの大きな隙間があります。これを一つに 集めると35センチ角の正方形の大きな穴になってしまいます。これだけの窓を真冬に 常時開けておくことになります。これでは寒くてたまりません。この隙間は巾木、コン セント、台輪など住宅全体にわたっています。これは冬場の生活で、実感として理解で きるでしょう。意外なのは、窓はアルミサッシですが、全体の10パーセントほどしか ありません。  3−2 高断熱・高気密住宅の省エネルギーの長所            北海道を除いた地域での高断熱・高気密住宅は断熱材が100ミリからはじまります。 図[1ー25]のEの丁寧な施工の100ミリ断熱気密住宅はAの50ミリ断熱実際施 工値住宅の3倍の省エネルギーです。それに対してCの雑な施工の100ミリ断熱実際 施工値住宅はAの1.5倍しか性能が良くありません。粗末な断熱材の入れ方や隙間の 多さなので理論値ほどの性能あがっていません。  (A)各地域での省エネルギー住宅の灯油代  Fの北方型住宅では熱損失係数が150、灯油の消費量では札幌で1000リットル (40000円)、仙台で500リットル(20000円)と極めて少なくなります。 北海道では従来の数カ所の個別暖房の半分の灯油代で全室暖房ができ、東北では従来の 居間一部屋を暖める灯油代で全室暖房できています。  関東ではEの100ミリの高断熱・高気密型で十分であり、熱損失係数は210、灯 油で500リットル(20000円)で一冬の全室暖房ができます。  (B)高断熱化の効果  断熱材は厚くすればするほど効果が上がりますが、材料代や施工手間とのからみから、 経済的な厚さを考えることが必要です。図[1ー27]を見れば、グラスウールの厚さ が50ミリから100ミリにすると約2倍の効果がでてくることが解ります。ところが 50ミリの場合は、断熱材のはいる壁の厚さが柱の分の105ミリとなりますから、空 隙になったり、入れにくく施工が雑になりがちです。こうしたことから空隙が冷気の通 路になったり、あるいは断熱材の中を冷気が通ったりして、実際には理論上の1/3位 しか性能が発揮できないのは図[1ー25]から解ります。ですから、100ミリ断熱 を効果的に入れることによって従来どおりの入れ方の50ミリ断熱より3倍の効果が得 られるのです。効果的な入れ方とは、断熱材を空隙のないように丁寧に詰め、壁の上端 や下端をとじ、気流止めを設けることです。これによってグラスウールは制止空気を保 つことができ、理論どおりの性能が維持できるのです。  外壁部分で断熱材を100ミリ以上にすると、柱の外側に断熱材を支える細工が必要 になるなどの様々なコストアップの要因がでてきます。しかしその割には効果が少なく、 たとえば、150ミリの性能は100ミリと比較して1.4倍くらいしか向上しません。 北海道以外なら、柱の寸法である105ミリの範囲で、細繊維や密度の高いより性能の 良いグラスウールを入れることが得策といえます。  (C)高気密化の効果  各部所で気密をはかり熱損失を少なくするとともに、換気回数でも1.5回/hから 0.5回/hにセーブすることで熱損失係数が150から50に1/3になり、100 ほど省エネルギーになります。気密がよいと、風の強いときでも隙間風は感じられず、 失うエネルギーは極わずかです。