白神山地の麓、平野と台地が連続する広大な農村地帯に位置します。老朽化した2つの保育園を統合した新たな町立の子ども園です。この地域は沿岸部のため鉄筋コンクリート造や鉄骨造の建築物においては塩害等による躯体の損傷が激しく、町ではかねてより木造建築物の優位性を認識しており、本施設も当初より設計条件として木造としておりました。湿気や耐火の対策を講ずることにより、躯体の耐久性は桁違いに延びることは町内の既存建築物により証明されています。
山、川、海と自然豊かな環境の中で、園舎もまた周囲の景観と調和した木々の温もりが優しく包み込むような雰囲気とし、園児が四季折々の自然と共にのびのびと成長できるような地場産材を多用した「木造園舎」としました。共につくる喜びを分かち合うため、設計段階におけるワークショップ、上棟時の餅まき、現場で使用した木材を利用しての記念品作成など、町、保育園、園児が一体となって竣工することができました。
【自然の宝を感じる空間】
八峰町の象徴としての山と海。二つの要素を大屋根と両翼の水平に延びる軒ラインで表し、調和のとれた、それでいてシンボリックなデザインです。敷地周囲の見晴らしと日照条件の良さを最大限いかせるように大きな開口を設け、小屋裏空間を有効利用した明るく広々とした空間に、木構造材(梁やトラス)を表わしにすることで、空間のダイナミズムと木の温もりを両立させています。
メンブレイン型耐火構造の木造防火壁を設け、1000㎡以内毎に区画することで、一般部は木材表わしとしています。耐火被覆や燃え代を不要とすることにより、繊細な木架構を実現しました。自然なままの木材に触れられるように、木材は無着色のまま表わし、構造材の秋田スギや、床材に用いたブナ・ナラを身近に肌で感じることができます。
【わくわく感や冒険心を掻き立てる魅力ある園舎】
吹抜けや勾配天井を多用し、建物のボリュームを最大限に使った空間構成とし、開放的な内部空間の中に、立体的に交差する木構造材が木々の雰囲気をつくりだし、高窓から差し込む光は木漏れ陽の中にいるような魅力的な空間となっています。
廊下と一体となった遊戯室や多目的スペース、小屋裏空間の有効利用、ステージ壁を利用したボルダリング壁など、変化に富んだ空間を作り、冬期、長く続く曇天の陰鬱とした日々にあっても明るく過ごせるよう、保育室はすべて南面採光を確保。さらに頂側光(ハイサイドライト)を設けた明るく開放的な空間となっています。南面大開口と北側頂側窓とは、春や秋の中間期、窓開放により快適な通風ができます。屋根と外壁は、周辺の自然景観になじみながらも、シンボル性と愛着性のある色(赤)とし、明るさとコントラストを出すため、三角屋根を強調する破風や軒先、サッシの色を白としました。テラスの列柱は、ランダムに色分けすることによりリズム感を与えています。
設計/設計チーム木協同組合